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紙の本

程良い物語性と淫猥度の高い官能描写

2017/09/27 05:23

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る

嫁の母と嫁の妹をメイン格のヒロインに据えると嫁自身は影の薄い存在になりがちだが、本作はそれを逆手に取ったかのように上手く活用している。23歳の嫁は新婚早々ながら単身赴任というイマドキな形で不在。その間に夫は嫁の実家に身を寄せていて、婚前の嫁が使っていた部屋で寝泊まりしている。これらが後の官能描写で効果を発揮しており、よく練られた初期設定だと感心する。

いわゆる母娘丼な作品だが、中でも母をメインにしたことで可愛げもある熟女の貪欲さがしっかり描かれていたと思う。官能描写の淫猥度も総じて高い。

43歳の母が未亡人なのもイマドキの官能小説らしく、しばらく女所帯だったところに現れた22歳の娘婿(主人公)という男にドキドキとウキウキが同居した、ある種の浮ついた状態から話題が際どくなったことが発端。娘の旦那との過ちを憂い、躊躇う母に対して以前から内心では憧憬を傾けていた主人公の迫りが一線を越える契機となる。ダメよダメダメと言いながら押し切られてしまう淫靡さと、一度火が灯れば貪欲に求めてしまう淫猥さが興奮を誘う。一度限り、一夜限りとしながら「まだ夜は明けていないから」と次は自ら求めてしまうオンナに戻った母は、その後も娘への背徳を抱きつつズルズルと関係を継続してしまい、歓喜を享受していくことになる。寝室に始まり、今は主人公が使う(かつては娘が使っていた)ベッドを経て娘不在の新居へと移り、さらには自宅のキッチンから再び寝室へと場所を変えて繰り広げられる母との官能場面はどれもいやらしさに満ちている。

嫁となった姉より先に恋したのは自分だとする19歳の妹は初心で可憐な存在。慎ましやかな胸と同様に謙虚で献身的だが、姉の不在を機に想いをぶつけ、「初めて」を捧げている。その後は蕾が開花するがごとく積極さと淫らさを徐々に垣間見せるのだが、実はここに思わぬ助っ人(?)が現れている。新居の隣に住む38歳の人妻である。

この第3のヒロインは主人公と母との関係にも気づいていて、そうした密会の場に遭遇してはネタにして優位な立場に立っている(ただし、母との接点はない)。女王様然とした振る舞いを見せ、妹を巻き込み、主人公には被虐の快感を味わわせているのだが、最終的には主人公の逆襲を受けることで官能成分をさらに底上げしている。

最後は母娘丼の構図としながら本来の嫁たる姉に出番はなく(変わり種の姉妹丼となる電話での登場が中盤にあるが)、実質的には母と妹に隣人という3人にヒロインを留め、主人公と妹には隣人を介した秘密があるという結末は昨今の何が何でも全員集合な流れを良い意味で崩していた。こうした収束においてもきちんと練られたように感じさせるものがあり、最近の激甘な作風ながらも構成と物語性がきちんと立脚しているのは極めて好印象である。

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