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『愚者の毒』『入らずの森』の作者ということで自然に高まる期待と七色の題名とは裏腹に、心荒ぶ家族関係の毒気に当てられて全体を覆う灰色の閉塞感に息苦しくなっていく。
千加子さん…怖いよ。瑠衣くんには、大家が言いかけていた「あの土地はね」の続きも影響を及ぼしていたのかな。各家庭燻る火種はあったにせよ、やはり人が住んじゃいけない土地ってあるんだと神妙な心境になった。話に粗さを感じるものの野犬や赤いスカーフの伏線の繋がりは巧妙。
きっとあの後彼だけは生きている…そんな気がして仕方ない。
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「愚者の毒」と同じ作者だったので。
さらに作者のやり口(?)になじんできたので、
腰を抜かすほどの驚きはなかったし、
童話になぞらえた展開は目新しい物でもないが、
静かに楽しめた。
でも、さすがにオオカミはねー。
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相変わらず、宇佐美氏は誰にでもある闇の部分を、
キチンと分かりやすく巧く描かれる。
魔に取り憑かれる弱い箇所を、どんな風に味付けをしても、
リアリティがあり、自分の深淵を覗かれている気持ちになる。
グリム童話を絡ませて、
物語の謎解きとしてホラー仕立てにされているが、
グリム童話はそのもの次第、
人の噂や実際に起こった殺人を土台にしているから、
常に人の世は悪意ある口伝えや魔に取り憑かれてしまうという、
この本も現代のグリム童話でもある。
不穏な闇に取り込まれないように気をつけて。
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この直前に読んだのが『むかしむかしあるところに、死体がありました。』でした。意識して選んだわけではなかったけれど、昔話からグリム童話へ。
呪われたかのようなアパートの名前はレインボーハイツ。濁点が外れた「レインホー」の看板を想像して少し笑ったものの、おぞましさは昔話の倍以上。入居者の間で次々と起こる惨殺事件のトリガーになっているとおぼしき5歳児。
救いようのない話をそれほど怖いと思ったつもりはなかったのに、昨晩その男の子が夢の中に出てきてうなされました。自分の叫び声に驚いて起きる始末。それぐらい不気味(泣)。
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レインボーハイツ、虹色からはほど遠い灰色のひび割れだらけの空室が目立つマンション。
一枚のドアを閉めれば、その中で何がおこなわれているかなんて誰もわからない。
天職だと思っていた千加子は、住人と環境に振り回されるのだが…
鬱屈した気持ちは、誰かにトンっと背中を押されただけで、堕ちていくのかもしれない。
心の育て方って大事。
突発的な悪意ではなく、日々少しずつ、でも確実、着実に根づいた悪が息をしたときに発生する物語。
じわじわ来る恐怖。 人間の心に棲む悪意。
赤ちゃんの存在は、思っていた通り。
164ページの4の表現がよい。
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2022.07.29.読了
230ページ、厚さ1センチに満たない文庫本。中編。
グリム童話と地方都市のレインボーハイツをめぐるおはなし。
さすが宇佐美まこと。
サラッと読めちゃうけど、しっかりホラー。
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ホラーサスペンス面白かった。朽ちていくだけのマンションに住んでいる5軒の家族とそこを担当している民生委員の千加子。だれもがそれぞれ生活に疲れ不幸と不穏をまとっていて、必然のように事件が続きだす。不幸な事件の連鎖の影にあるものが浮かび上がっていく。心の中で密かに倦んだ「狂気」の背中を押すものは、誰かの声なのか、自分の心の声なのか。最後の最後までしっかりまとめらてとても面白かった~。