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★特に面白かった章
第Ⅰ部 ブロックチェーンは社会をどう変えるか 翁百合
第Ⅱ部第4章 仮想通貨のこれまでと未来 加納裕三
第6章 銀行の勘定系システムのブロックチェーン実証実験:成果と課題 吉本憲文
第Ⅲ部 産業インフラとしてのブロックチェーンの可能性 柳川範之
第13章 経済学的にみたスマートコントラクト:不完備契約との関係について 柳川範之
第16章 エストニア電子政府の取り組みについて 林祐司
★住信SBIネット銀行の実験実験は実用的で驚いたし、エストニアの取り組みもそこまで進んでいるのかと驚いた。
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ブロックチェーン、分散型台帳技術者、スマートコントラクトなどについて、翁さん、柳川先生、岩下先生の編著でさまざまに検討するもの。仕事柄、スマートコントラクトと法について関心がありますが、うーん、具体的にどうするのか、なかなかしっくりこないところ。
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ブロックチェーンによって、金融・産業・社会はどう変わるのか。3人の著者によって書かれてある。
知らなかったこと。
・ダイヤモンド産業は、所有履歴がその商品の価値を形成している点が際立った特徴。
★ブロックチェーン技術が進呈すれば
①今までコストをかけて記録していた取引履歴がより安価かつ確実に記録できる可能性があること。
②そして不十分なかたちで記録されてきたものについても、より完全なかたちで取引履歴が残せるようになることが明らかになった。
③さらには、今まではコストがかかるなどの理由で、履歴が記録されてこなかった取引についても記録がとられ、安心感を利用者が得られるようになること。
その結果
④いままで成立しなかった、あるいは予想もしなかったビジネスの成立を促し、新しいビジネスを成り立たせる可能性がある。
⑤また、情報の非対称性の構造が変化することにより、今までのビジネスモデルの構造が変化し、競争力の構造が変化する可能性がある。
巻末にはブロックチェーンの未来像が年表としてまとめられてあることもいい。
絶対に消せない技術の問題点も生じるだろう。
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ブロックチェーンに関する本を今年はたくさん読んだ。いくら読んでもしっくりと来なかったからだ。
本書はとにかく具体的な事例が紹介されていて、イメージを実感するにはよい本だったかもしれない。特に金融系の実証実験の取り組みについては、実際の関係者が執筆者にも多く参考になるだろう。なかなか真面目な本である。
ダイヤモンドの取引をブロックチェーン上で管理するエバーレジャー、貿易金融をブロックチェーンを使った台帳で管理する、エストニアでの電子政府の取り組みの中でのブロックチェーンの活用、などビットコイン以外でも一部の領域ではブロックチェーンの活用が進められている。エバーレジャーは、ダイヤモンド取引というかなり特殊な市場においてブロックチェーンの情報の非対称性を低下さえるという特長をうまくとらえてビジネス化している。他の宝石類や絵画・美術品などの高額商品にも適用できるかもしれない。
現状、特に金融分野でのブロックチェーンは、合意形成アルゴリズムの技術的限界もあり、プライベート型もしくはコンソーシアム型が主流だが、将来的には技術的な課題が解決されることを期待して、パブリック型の可能性を追うべきであるとの議論はおそらく正しい。問題は、スマートコントラクトを実行させるにあたっても十分に実用的でスケーラブルな合意形成アルゴリズムがいつ実装されるかどうかであろう。またプライバシーの課題についても当然懸念される点はある。暗号化により情報の閲覧権限を限定することも可能だが、暗号化されているとはいえメッセージは広く共有されているため、少なくとも暗号解読の機会を従来より多く与えることになり、また一度暗号が解読されるような事態になったときには取り返しがつかないことになるリスクがあるという指摘もいずれ深く考慮しなければならないだろう。特に金融資産を扱ったり信用情報を扱うような場合にはますますそのリスクには慎重に取り組まなくてはならない。
また、日本ではかなり早い段階より金融機関を中心に為替取引、KYC、勘定系システムなどの領域で実証実験が数多く行われている。この本でもJPX、住信SBIネット銀行など具体的に紹介されているので、そのあたりの理解には役に立つ。R3コンソーシアムの活動もこの本が書かれた時点ではアクティブであるようだ。著者らは、金融系のブロックチェーン実証実験に深くかかわってきた方々が多く、この辺りの情報については内容が豊かで参考になる。金融機関で単一の台帳を共有するようなことが可能になるのであれば、市場全体でのコストを大幅に下げることが可能となるであろうということだが、その実現性はどこまであるのだろうか。
また一般論として中央銀行のブロックチェーンへの対応というのも大きなテーマのひとつとなる。中央銀行がデジタル通貨を発行するということについても、「中央銀行サークルでは...議論自体はごく普通に行われるようになった」らしい。政府の公的記録を、改ざんできないブロックチェーンの特性を活かして実装するということも試みとしては正しい方向のように思われる。この点ではこの世界では偉大な先行者であるエストニアの取り組みが直接参考になりそうである。本書ではそのエストニア政府の事例説明も詳しい。
現状のビットコインについては、現状では決済通貨としての機能はほぼ果たしていない現状において、現行通貨を置き換えるようなことは近い将来においてはないだろうといわれている。ビットコインのナイーブな問題についても言及されており、こちらの行方もブロックチェーン界隈には大きな影響を与えそうである。
一般論としてブロックチェーンによる台帳管理およびスマートコントラクトのメリットとしてまとめられた次のリストは常に意識をする必要がありそうである。逆に言うと、次のメリットが得られないような形での設計になっている場合には、あえてブロックチェーンを利用しなくてもよいとも言える。
①取引当事者のほかに帳簿管理者の存在を想定しなくてよいことににより、取引の複雑性を減少することができる。
②取引当事者が帳簿の更新を行うことできることにより、取引処理のスピードを上げることができ、資産の効率的な活用に資する。
③複数の帳簿記録インフラ間の帳簿の突合の必要性が減る。
④取引の帳簿記録の透明性の向上を図ることができる。
⑤分散型のデータ管理によりネットワークの強靭性を改善することができる。
⑥プロセスが削減され、第三者に一元的に帳簿を管理させる必要がなくなることにより、オペレーショナルリスクを低減することができる。
また、スマートコントラクトによる自動実行は便利である反面、法律上の契約行為における整理は必要となるだろう。
一方で現状シリコンバレーでの盛り上がりに欠けるが、それは技術的にはまだ未成熟であり、有望なディスラプティブなビジネスモデルの実現までまだ遠いと判断されていることの証左かもしれない。しばらくは地道に見ていくということが必要なのかもしれない。
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今年(2018年)読んだブロックチェーン関連本一覧
『決定版 ビットコイン&ブロックチェーン』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4492681434
『新事業企画・起業のための 実践ブロックチェーン・ビジネス』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4820726617
『ブロックチェーン イーサリアムへの入り口 第二版』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/B073TRC78W
『信用の新世紀 ブロックチェーン後の未来』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/B078JKKXP3
『ブロックチェーンの活路は人工知能との連携にあり DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/B078T7DK6J
『1時間でわかるイーサリアム入門 ~ビットコインに次ぐ仮想通貨をゼロから学ぶ~』
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4909288104
『いまさら聞けない ビットコインとブロックチェーン』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4799320157
『ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4478069964
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①ブロックチェーンは中央集権的な組織や国に依存しない取引の実現を目指したものである。
②ビットコインで使われているPoWでは、データの整合性と処理効率のバランスから十分ごとにブロックが生成できるように調整されており、即時性が必要とされる取引には向かない。
③ブロックチェーンの仕組みを正確に利用するためには、周辺アプリケーションの機能開発が重要になる。
スマートコントラクトとはプログラムに基づいた自動的に実行される契約のこと。
XRoad
DAO DAC
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ブロックチェーン技術が興隆した背景から各種セクターで実施されている実証実験、シリコンバレーでの実情など主にビジネスの観点から迫る一冊。ビットコインの印象がつよいが、国内でも金融ITインフラの代替としてブロックチェーンを利用する実験が進んでいるなど興味深かった。スケーラビリティや共通プロトコルの不在などの諸課題、真に破壊的なベンチャー企業が出てきていない現実など、未来に向けて様々注視していきたいと感じた。
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ブロックチェーンの活用に関するイメージが湧く。
技術の詳細に関しては他の書籍を参考にした方が良いが、ブロックチェーンの技術をどう社会に実装して、どう便利にしていくか、にフォーカスを当てているため、ワクワクする気持ちになる。
例えばエストニアの事例は興味深い。日本ではマイナンバーカードを活用してID管理をしていて、ここ数年でかなり普及した感があるが、エストニアはそういった活動をもう20年くらい前に始めていた。もともとロシアに支配されていた歴史があり、国家としての存続を考えると国土を軸に考えるのではなくデジタル世界で国家を作るほうが持続的だと判断して、IT技術への投資と活用を行った。医療や治安の改善など、行政の手続きを含んだ改善がかなり進んでいる様子には、羨ましさを感じる。
また、スマートコントラクトについてもわかりやすく言及している。自動で契約が行われること自体は真新しいものでもないが、管理主体のいないブロックチェーン上で契約が自動執行されることで注目を浴びた。
元来の管理主体が存在する場合、取引をするには、その第三者の管理主体が信頼できること、適切に処理を行ってくれること、などが担保されている必要がある。また、第三者を介するので時間や手間がかかる。
当事者同士で契約が自動執行できると、第三者は不要になり、手数料なども払わなくて良くなり、即座に取引が完了できるなど、メリットが大きい。身近なシーンでは想像つかないけど、海外への送金や物の発送などを考えると、多種多様な書面へのサインを行う必要があったりと時間も手間もかかる。そういった観点でブロックチェーン技術におけるスマートコントラクトは革新的と言える。もちろんすべての事柄を考慮してコードに落とし込むことが難しいなど課題もあり、組織の必要性と共に語られている。
他にもダイヤモンドの取引に活用されるなど、事例をたくさん知れる。
ブロックチェーンが実現できる未来をさっと手軽に覗いてみたい方にぴったりの一冊。
別の書籍で基礎や用語を抑えておくと楽しめそう。