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やっと、読めました、『(文庫版)からくりサーカス』(6)
ご存知の方もいるでしょうが、私は、既に、『からくりサーカス』(全43巻)を読破しています。なので、ストーリーの展開が解かっているのです
だからこそ、この(6)を読むまでに時間がかかった、と安い言い訳をさせてください
この(6)で、この『からくりサーカス』の主人公、その一人である加藤鳴海は、悪魔と化します
フランシーヌ人形を笑わせる、ただ、その目的の為だけに、子供たちから笑顔と明日を、身勝手に奪っていった自動人形への怒りから、鳴海は人を止め、しろがねですらなくなり、悪魔になってしまうのです
悪魔は、どれほど強かろうと、自分達を脅かす敵を排除してくれようと、普通の人から恐れられてしまう存在です
鳴海は、ただ、子供たちを自動人形から救いたかっただけ、恐怖に怯えないでほしかっただけ、彼ら彼女らに笑って貰いたかっただけ
けれど、彼の望みとは裏腹に、子供たちはズタボロになりながら、自動人形と全力で戦い、倒した鳴海を恐れてしまいます。子供たちにとっては、大人すら敵わない自動人形を、あんな風に倒した鳴海は、自動人形よりも恐ろしい存在に映ってしまったのでしょう
自分の気持ちが、子供らに届かなかった事に憤るでもなく、鳴海は一つの覚悟を決めるんです
どんなに恐れられようと、どれだけ敵が強かろうと、どれほど傷付こうとも、子供らのために、自動人形を破壊し続け、「真夜中のサーカス」を壊滅させ、この世界からゾナハ病を消し去る悪魔になろう、と
そんな鳴海の覚悟は、恐怖と絶望によって、頑なに鎖されていたトムの心を開け放ちました
もう一人の主人公である才賀勝にも言える事ですが、このように、他者を変える熱、いわば、主人公力こそが、藤田イズムの一つだ、と私は考えます
これから、どうなるのか、それを知っていても尚、続きが楽しみで仕方ありません。仲町サーカスは新たな仲間を迎えて、どんな変化を迎えるのか。勝は、どのように成長していくのか。鳴海が飛び込んだ戦いは、どう激化していくのか。悪魔は人間に戻る事が出来るのか
この台詞を引用に選んだのは、鳴海の、自動人形に向けられた怒りよりも、遥かに強い、何も出来なかった無力な自分への怒りを、痛いほどに感じ取る事が出来たからです
やはり、藤田先生は、怒りを描かせたら、天下一品です
改めて、藤田先生の中には怪物がいて、その怪物の手綱が取れている藤田先生は怪物以上だ、と戦慄しました
けど、この頃の怪物は、まだ可愛かったんですよね。今は、もっと、兇悪になってますよ、いや、マヂに
「おまえら、機械ヤロウにも、『しろがね』どもにも、決して、わからねえさ・・・太陽の光で満ちていたはずの大切な時間を・・・突然、むしり取られた子供達の・・・哀れさを!!オレは、ここに来て、なんにもできなかった!なんにもできずに、ただ、見てるだけだった!!だから・・・だから、せめて!子供達の痛みの、その何百分の一かでも、味わってやらねえと・・・オレがなんなのかも・・・わからねえんだよォ!!」(by加藤鳴海)