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"ファンタジー"とカテゴライズしている方もいますが、腕を千切ったり、足から花が生えたり、(ヒトが)産卵したり、でちょっと怪しすぎで"希望"が少ない感じ。直木賞候補ということで初読みの作家さんでした。「茄子とゴーヤ」が一番良かったです。
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久々に著者の作品を読んでみた。ホラー系もあり、ファンタジー系もあるという不思議な世界感がある短編集。その中に、大人のエロスも感じられ、大人のエロス感ホラーファンタジーだという印象だった。妄想からくるひとつの世界、想像力の新たな境地だろうと。以前に読んだのは、現実味を帯びていて、人との触れ合い、温かみを感じるものだったが、本作はまた違ったものだと感じた。ユニークな発情といった癖のある物語は良く思わないという人もいるだろう、愛を素直に目一杯表現している物語で素敵さに溢れているといった対比が絶妙な感じで良い。
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女性目線の幻想的なエロスが感じられます
男性を化け物になった女性がくっちゃったり
寄生した虫に導かれて発情したり
男性には気持ち悪く感じるかもしれません
浮遊感のある作品もいいですが
「愛のスカート」みたいに
生き生きとして 愛の気持ちが
素直にあふれる物語がとても素敵です
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表題作のほか、「花虫」「愛のスカート」「けだものたち」「薄布」「茄子とゴーヤ」「山の同窓会」。それぞれに独立した異界あるいは非日常の世界の7篇の短編小説。
現実ではありえないような、だけどイメージできる世界設定の中で、主人公の想いは何となく伝わってくる。
もやもやとどこか不思議な余韻を味わった。
18-37
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「愛なんて言葉がなければよかった。そうしたら、きっと許してあげられたのに」
ぽつりと呟く妻の寂しそうな横顔がいつまでも心に残る。
例え心は離れても愛しい人の体の一部を保有したがる女達。
そして愛は時に虫となり、また愛するが故に獣となり愛しい人を食す。
彩瀬さんの愛は深く濃厚で、最初から最後まで圧倒された。
自分の愛を貫く女達全てが愛しくて仕方がない短編集だった。
この作品を読んでいて、昔読んだ新井素子さんの『ひとめあなたに…』を思い出した。
愛する夫が自分を捨て愛人の元へ行こうとする。妻は夫の全てを自分のものにしようと夫を殺害し体を切り刻み、シチューにして食べようと料理をする。ユーミンを口ずさみながら…。
愛する男を食す女は昔からいた。
これぞ究極の「愛」なのかもしれない。
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凄い短編集です。斬新な世界観。普通の現代小説だと思って読み進めると、全く異世界の話だと気づいて愕然とさせられます。でもその異世界は全く理解できないものではなく、共感というものを越えてどこか懐かしく感じるのが不思議です。不思議な世界で当たり前に営む人々が、とても近しい存在に感じる幸福感。自分の知らなかった自分に気づかされる気持ちです。少し不幸で、でもそれを受け入れる自由は決して恥ずかしくも愚かでもない。直木賞というより芥川賞向けな気もしますが、候補に挙がったのは至極納得の素晴らしい作品集でした。
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人も人でない生き物も同じ感情を持っている。
それが信じられれば、素晴らしい愛の世界が広がる。
この短編集は考えさせられるところが多かった。
表題作の「くちなし」はインパクトが強かった。
「愛のスカート」はじれったいながらも共感できる物語でした。
作者の感性に感謝したいです。
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7編の短編集。なんともまあ、独特の不思議な世界。腕が取れたり、虫に体が乗っ取られていたり、化け物になったり。しかし、こういった世界をしっかりと綺麗に書き上げるから大したもの。最初読み始めて、腕が取れて…と予想外の展開に驚いたけれど、物語の世界へと引き込まれていった。愛がテーマかな。圧倒的な愛とか。愛・人間の本質とか。中でも印象に残ったのは「花虫」。読んでいると幽玄的な花が見えているように感じ、愛の苦しみもよく書けていた。「けだものたち」もよくこういった設定で書けるなあと驚き、こちらも想像が目に浮かび、印象的。
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一話目の始まりに衝撃を受ける。別れを切り出された女性が、男性にあなたの腕が欲しい、とねだり、男性は左腕をちぎって女性に渡す。「えっ!?」と思わず声が出てしまった。好きな人の左腕との生活。それ以外にも、女は化け物になって好きな人を食べてしまう話とか、羽虫が人間の中に寄生している話とか、独特な世界の短編集。気持ち悪いようで、美しい、異質な恋愛もの。私は好みでした。
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表題作「くちなし」と、その次の「花虫」まではすごく面白かった。
自由なイマジネーションと官能が同時に体験できる文章、とても好きです。
ただ後半はちょっと失速したので☆は3つ。もっと期待したい。
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初 彩瀬まる
なかなか独特の世界だった。
短編の一話ずつ それぞれが異次元で、主人公は人間の様なのに、その中に生きる人達の生活はなんか違う。
愛しい人に腕をあげる。虫が体に寄生してつがいを探す。産卵をする女性、海獣となるクラスメート、昼と夜を住み分けている男と女・・・・
普通に人としての会話をしてる登場人物が 説明もなくその世界の人として生きている様子に読んでる方はどぎまぎとして、その世界に引きずり込まれる。
いろんな生き方や愛し方を見せられて、切ない。
美しい描写がより その世界を浮かび上がらせているようだ。
ちょっとグロめのファンタジーでした。
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愛した男と別れるときその片腕をもらう。その腕を毎日愛でて暮らす。いやいや、そんなの自分にはありえないわ、ないない。身体の中にいる虫によって運命の花が咲き唯一無二の相手と結ばれる、って脳みそ乗っ取られてしまいますが!などと異形の者の、異常な恋愛を否定しながら読んでいるのだけど、ふと考える。連作の中にあるいわゆる普通の生活、普通の恋愛、それらも逆からみれば「異形」なのかもしれない、と。
幻想的でグロテスクで、だけど美しい物語たち。自分からは遠い世界の物語だと思っていたけど、なぜか心地いい。どうしてだろう。どうしてだろう。
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くちなし…ユマちゃんの未練の無さと妻の執念深さが対照的。
花虫…多幸感が味わえるのなら虫に操られても別にいい。
愛のスカート…評価はこの作品。絶対にこっちを振り向かない人を片想いするほど辛いものはない。その人の幸せな生活を想像する度に身を剥ぎ取られるような痛みが走る。それでも想い続けるのは人が論理的な生き物ではない証。
けだものたち…女心は変わりやすいが、体まで変わってしまう。
薄布…艶めかしく危なっかしい親子。
茄子とゴーヤ…アラフィフのざらっとしたテクスチャーが男女の新たな道を生み出す。
山の同窓会…命をつなぐことは多分どの生物にとっても一番幸福な事だと思う。
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作者さんご本人も言うとおり、読者を選ぶ作品。
一つ一つの短編に、不思議な世界が広がっている。
でも、私は、嫌いじゃない。
(作品に選ばれた、と思っておこうか。)
どの篇にも、愛されることを狂おしく願っているのに、十分には叶えられない悲しみが揺蕩っている気がする。
表題作「くちなし」は、安直な連想かもしれないけど、川端康成の「片腕」を想起させる。
でも、女性が主人公になると、こんなにも違うんだ、と面白くて仕方がない。
結局主人公を捨て、妻子のもとに帰っていく男に、別れの代償として望んだのは、その左腕だった。
主人公は、男の腕を世話し、腕は彼女に充足を与える。
そこに妻が腕を取り戻しに現れ、代わりに今度はその妻の腕を置いていく。
元の持ち主のアイデンティティとは別個のありようを見せる腕たち。
断片になっていく身体のどこに気持ちは存在するのだろう?
いろんなことを考えさせられる。
最後に置かれた「山の同窓会」は、今度はカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』をなぜか思い出す。
女たちは産卵ごとに命を削り、3度の産卵を経験して生きながらえることができない。
男はそこまで消耗しないけれど、性的な交渉でやはり命を縮める。
そうして生み出された新しい命は、親を知ることなく育つ。
主人公は産卵しない女性として、記録者として、同世代たちを見送っていく。
「介護人」となって、共に生きた「提供者」たちを見送るキャシーを思い起こさせる。
奇想天外な小品の中に置かれると、「茄子とゴーヤ」で、夫からの度重なる裏切りにも堪えて良き妻、良き母を演じ続けたツグミが、奇妙な世界の人のように見えてきてしまうから不思議。
こういう小説集が、河出書房でも、国書刊行会でもなく、文藝春秋から出るんだ、とちょっとした感慨を持ってしまう。
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かなりくせのある作家ではあるけども、茄子とゴーヤ、山の同窓会、よかった。愛のスカートも切ない。
非、現実な設定は好きではないが、不思議と読めた。