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オクトーバー 物語ロシア革命 みんなのレビュー
- チャイナ・ミエヴィル (著), 松本剛史 (訳)
- 税込価格:2,970円(27pt)
- 出版社:筑摩書房
- 発売日:2017/10/05
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紙の本
史上初の社会主義革命という奇妙な物語
2019/10/03 18:09
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:燕石 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロシア革命とは、1917年にロシアで起こった二度の革命のことをさす。一度目の2月には500年にわたる専制支配に終止符がうたれ、10月の革命は、史上初の社会主義国家樹立に繋がることになる。『この二月から一〇月までの月日は、絶え間ないぶつかり合いの過程であり、歴史の大きな捩れであった。そこで何が起きたか、その意味は何かといったことは、いまだに物議をかもさずにはいない。二月、そしてとりわけ一〇月のことは、自由の政治をどう見るかというプリズムであり続けている』。
1917年とはひとつの叙事詩であり、冒険と希望と裏切りの、ありそうにない偶然の一致の、戦争と策謀の連続する一年だった。勇敢さと臆病さの、愚行と笑劇の、豪気と悲劇の一年だった。新時代の野心と変化の、ぎらつく光と鋼と影の、線路と列車の一年だった。
中でも重要人物であるレーニンは会う人の誰もが魅了され、彼について書かずにはいられなくなるとミエヴィルが語るように、本書の中では基本的に傑物として描かれていく。その語りがまた魅力的だ。『レーニンが何につけ過ちを犯さないというわけではない。それでも彼は、いつどこで押すか、またどのように、どこまで強く押すかの鋭敏な感覚を備えている』。
2月、大規模なデモが発生し、警官隊がデモ団体に対して発砲したことから一部の兵士らが反乱を開始。市民と兵士が一丸となって反乱軍化し、別部隊による鎮圧が開始されるも次々と反乱軍に加わるばかりで、物凄い速度で広がった反乱の熱の前には無意味な試みであった。最初に反乱を起こした兵士たちの強烈な葛藤と、それでも尚、行動を起こすに至る劇的な瞬間。津波のように国家へと広がっていく喧噪、波乱、蜂起。一夜にして起こる革命の臨場感が、本書の中に見事に描写されている。
一方、その頃レーニンは亡命地におり、臨時政府をブルジョワ政府とみなし、政策不一致であり不支持を表明。亡命先のスイスでの滞在中、レーニンは頑なに、ロシア革命はやがてくるヨーロッパ、ひいては世界への革命の起爆剤になりうると主張し、大陸は革命をはらんでいると語っている。臨時政府が支配するロシアへレーニンが帰還することによって、再度、革命への機運が高まり始める。
本書は確かにロシア革命を扱った本ではあるが、その根底には他国にも通じ、未来にわたって生き続ける普遍的な法則が流れている。ミエヴィルは物語を通じてそのより深い部分を見事掬い上げている。変化は必要か、変化は可能か、革命家が陥りがちな落とし穴はどこか、どんな危険がつきまとうのか、革命により何が得られ、何が失われるのか。『史上初の社会主義革命の奇妙な物語が称えられるべきなのは、ノスタルジアゆえではない。あの一〇月というすべての基準となるものが、かつて状況が一度変わったこと、再びそうなってもおかしくないということを明示しているのだ』。
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