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詩人の書いた小説集。以下、気に入ったモノについて簡単に感想列記。
石川啄木 散文詩五題 「散文詩」ではありますが、コメディタッチのものから、幻想風味のもの、素朴な物語などテイストイロイロ。
上田敏 渦巻(抄) 上流階級のサロン的雰囲気で繰り広げられる会話と、当時の知識階級的にも上流であった教養人である主人公の内面の葛藤を描く、自伝的要素もある作品。面白かった。全文読んでみたい。
木下杢太郎 霊岸島の自殺 ある高級官吏の家の女中に心惹かれつつ、己のキリスト教的敬虔さ、潔癖さの中で苦悩する主人公が「自殺」という選択をするまでのお話。己の内面を分析する描写が読み応えあり。
野口雨情 虹の橋 さすが野口雨情。とても童話的なお話。
北原白秋 影 谷中の辺りを舞台に「影のない男」を巡るモダンな怪談話。
立原道造 花散る里/物語/眠っている男/眠り/オメガ小品 とても美しい散文詩。言葉の選び方がロマンティック。
小熊秀雄 風刺短編七種 プロレタリア文学の風味を交えつつ、かといって全く辛気くさいところはなく独特のユーモアで軽妙にまとめ上げた楽しい掌編たち。こういうの大好き。
斎藤茂吉 ヒットレル事件 ヒットラーのミュンヘン一揆を留学中、実際に見聞きしてきた茂吉のドキュメンタリー記録。
高村光太郎 九代目團十郎の首 彫刻家である高村光太郎の視線で描写される團十郎の姿の美しさ。