投稿元:
レビューを見る
読み口としてはホラーというより、冒険物語っぽい。壮大な骨組みのわりに詰めが甘いのか広がりの弱さが気になってしまった。作者の妖や先人たちに対する尊敬の念は伝わってくるけれど、霊宝の説明が多すぎるあたりとか、ストーリー全体の流れをうまく掴めなく、少し残念。
投稿元:
レビューを見る
なるほど、霊宝というアイテムの解説がたくさん出てくるところとか、ゲームっぽさを感じる楽しさはあったかな。やや冗長な印象もあるんだけど、どっぷり浸る人にはたまらない魅力があったんじゃないだろうか。物語としても、けっこう面白かったと思う。俺の印象としては、ホラーというよりも、戦争の悲劇と民俗学的な怪談の融合、かな。長いとは言ったけど、先を読み続けようと思わせるだけの魅力があったと思う。
投稿元:
レビューを見る
戦時中の疎開の話や 空襲などかなりの迫力で書かれていて
精神的 肉体的な追い詰められ感・屋敷での妖怪との攻防
ずっと 圧力が高いです 怖いです
壮大な話なので一冊に収めてあるのがもったいないくらい
霊宝の説明書きが古文書風で楽しめました
投稿元:
レビューを見る
ふわっとした出だしから始まり、
途中はこのさきどうなるんだろうという
ワクワク感があったけど、
うまく収束できなかったように思った。
途中は大傑作かもと思ってたんだけど。。
投稿元:
レビューを見る
戦争中、ある山里に疎開した兄・冬野心造と妹・真那子。
父と母のいる東京を目指し、綾織香苗と共に脱走した真那子だが、
山から見つかったのは香苗だけだった。
妹を探しに山に入った心造は不思議な霧に包まれ大きな屋敷に迷い込む。
しかしそこは魑魅魍魎のいる妖の館で…
前半おもしろかったんだけどな~
後半がなんか期待外れ感がすごい。
深夜のアニメとかになりそう。
投稿元:
レビューを見る
図書館で借りた本。千里眼を持つ婆様、探し物や未来の事など全て見える婆様は村人たちに重宝されお礼に米をもらいながら生活していたのだが、呆け気味になり村人個人の未来を大声で喚くようになってしまい、村人たちは婆様を担いで山に捨てに行く。その話を疎開してきた子供達に夜話として聞かせていた。
ある日、子供が山で行方不明となり神隠しに遭ったのでは?という展開から恐ろしい話に物語は続いていく。遠野物語や妖怪伝説、霊宝などたくさん散りばめられた読み応えある本だった。
投稿元:
レビューを見る
柳田国男の民族とか迷い家伝説とか物の怪とかそういう類の小説であることがツイッターで偶然見かける.調べると今年の角川ホラー小説大賞の優秀賞受賞作.クオリティは保証されているので迷わず購入.
投稿元:
レビューを見る
「天邪鬼」の起こりはここにあったとは。
舞台は戦時中の疎開先、里山ならではの様々な伝承が物語を回すという民俗的な空気が濃く、何より主軸は山の怪異譚と、私的に大好物の要素が並ぶ。
特に導入部、心造がついに屋敷に迷い込むまでの握力たるや凄まじい。
屋敷に揃う"霊宝"の数々を駆使して生き延びるべく化け物どもと戦っていくんだな…と想像させるに充分な設定は、まるでひと頃流行ったホラーゲームのようでもある。
もっとも、作中で紹介されるその霊宝の数がどうも多過ぎ、途中で目録を読み進めていくのが苦になる瞬間もあったが…。
さらにはここに、当時の軍国教育に染まった少年の狂気を通し、教職員を中心に左翼思想が蔓延しつつあった昭和30年代をクールに描写するくだりや、果ては何物をも超える家族の情愛なんかもぶっ込んでくるわけだが、そんな力技の数々が決して浮くことなく、見事に物語と融和しているのが心地良い。
筋と離れ、書かれている文章そのものもリズムに富んで美しく、日本語を操る力も相当なもの。
私もちょくちょく山に入るので、いつか大きな"屋敷"が忽然と目の前に現れたらどうしよう…とこれから頭の片隅で常に怯えるのではないか?
また、私は貴志祐介氏の作品も大好きだが、巻末に収められた選評を読み、やはりね、と独り納得したりも。
投稿元:
レビューを見る
第24回日本ホラー小説大賞受賞作。
もともと遠野物語に登場する迷い家の伝承に興味があり、今市子の「百鬼夜行抄」やその他フィクションで引用されるうちに好奇心が湧いたので購入。
帯で錚々たる顔ぶれが絶賛しているが、特に宮部みゆきと漫画家の漆原友紀(「蟲師」の作者)が褒めているのは納得。そりゃこの二人なら気に入る。綾辻氏と貴志氏もわかる。
学童疎開で田舎にやってきた軍国少年の心造が、行方不明になった妹をさがして迷い家に至る和風ホラー。
田舎の悪ガキと疎開児童の対立があったり、心造や香苗が東京大空襲のトラウマを背負ってたり、当時の世相と迷い家の不気味な存在感を絡めた展開が見事。
文章も達者で饒舌、心理描写も上手くグイグイ読ませる。良い意味の玄人っぽさ。
中でも心造が屋敷で出会う霊宝の目録にはわくわくさせられる。
迷家に保管された妖ゆかりの道具の由来が数行しるされているのだが、この怪異憚が本当に面白く、ここだけ摘まみ読みしても高揚をおさえきれない。
次はどんな奇想天外な無双アイテムが出てくるのか……心造の相棒となる犬もとい狼の妖、しっぺい太郎も非常にいい味をだしてる。
高慢で狡猾で低俗で誇り高い、「ぐふふ」と笑い自分の知名度の低さに本気で落ち込む彼のキュートさと邪悪さにはときめくこと必至。
第二章は時代が飛んで視点人物も変わるが、迷い家に滞在している間に心造に起きた変化、彼が侵された憎悪と絶望に起因する狂気にぞくりとする。
霊宝を組み合わせて威力を倍にする、または欠点を補うという発想も秀逸で、機転を利かせ窮地を切り抜けてく姿は痛快。それがのちに大参事に繋がるとは……永久に時が止まった隠世と終戦を迎えた現世の隔絶の残酷さが感慨深い。
クライマックスのスペクタクルは、荒俣宏の「帝都物語」を彷彿とさせた。
ラストは少しわかりにくいがあまり書き込みすぎても興ざめなので、余韻が残る終わり方ととれるだろうか。
全く話は替わるが、学帽学ラン短パンの規律正しい軍国少年スタイルで日本刀や短刀を振り回す心造のビジュアルはマニアックな向きにはたまらない。
シリーズ化するかこれのみで完結かはわからないが、もし続編があるなら迷い家にやってきた様々な境遇や価値観の迷い人たちと、彼が交流する話になるのだろうか。
その趣向も楽しそうなので実現したら読んでみたい。
投稿元:
レビューを見る
日本ホラー小説大賞優秀賞受賞作。
昭和20年、疎開の地で山に迷い込んだ少年の前に現れた巨大な屋敷。一度迷い込めば出ることはかなわず、その中には無数の妖怪が跋扈する恐ろしいその屋敷の中で、数々の霊宝を使いこなし生き延びようとする少年の冒険譚……と思いきや、第二章からの展開には絶句するばかり。さまざまな民話伝承がこれでもかというほどに詰め込まれた作品です。
数々の霊宝にまつわる来歴がとにかく楽しいです。知らないものもかなりありましたが、聞き覚えのあるものも多くて。妖怪は恐ろしいけれど、霊宝をうまく利用して立ち向かうシーンには大興奮。なるほど、そんな使い方をすればよいのか、とわくわくさせられてしまいました。そしてなんといってもしっぺい太郎が登場するとは! 子供の頃に昔話で読んだので、懐かしくなりました。
というわけで最初は心造に対してはひたすらに応援する気持ちしかなかったのだけれど、第二章からがなんともおぞましくつらいことに。心造って勇気はあるし、利発だし、しかしその利発さが救いようのない現実をきちんと見据えているからこそ不憫で仕方ないのですよ。「怖いものなんかみんな、みんな無くなってしまった」というセリフがあまりに悲しくて。そんな彼が純真さゆえにどんどん邪悪になっていくのがやりきれない……! この時代だからこその倫理観や価値観というものがひどく重くのしかかってくる気がしました。このような時代は二度と訪れないでほしいです。
投稿元:
レビューを見る
東京大空襲の後、冬野心造は妹の真那子と集団疎開で古森塚へやって来た。行方不明になった妹を探して山へ分け入ると大きな屋敷が現れる。
第24回日本ホラー小説大賞 優秀賞。
装画 蟲師の方ですね。
遠野物語のほか数々の民話伝承が入ってる。前半は賢い少年が道具の特性を即席で活用して、妖が巣くう屋敷を攻略していく冒険譚といったところ。
しっぺい太郎とのコンビがなんだかんだ良い。P194~195、悲しさ美しさ気高さが詰め込まれてる感じで、すごく好きなシーン。
後半は只々悲しかった。軍国教育をされた少年が両親を亡くしても弱音も吐けず、日本が勝つことだけを拠り所にしているような姿が辛い。まだ小学生の子供にこんな思いさせたくないなぁと戦争の卑劣さを感じる。
投稿元:
レビューを見る
遠野物語などの民話をベースに突如山のなかに現れた古い屋敷のなかをアイテムを集めつつ状況を打開していく、という紹介文(角川ホラー文庫30周年記念の公式HP記事より)を見て読みたくなった
こういうRPG的な仕掛けで話が展開していくホラーも好き。遠野物語や民話がベースになっているので耳馴染みのある妖怪の名前が出てきたりしていておもしろかった
描写次第で絵本とかで見たおばけがこんなおどろおどろしい妖怪になるんか…と関心した。舞台はまさに戦時中で疎開先の山から話が展開していく
古めかしい漢字や言葉遣いも多かったのでそれに慣れていなければするする読めたとはならないかもしれない