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自分も多分に洩れず、AIやディープ・ラーニング、ビッグ・データについて「幻想」を持っていた。
コンピュータはあくまでも「計算機」。
意味や価値を理解することはない。
ディープ・ラーニングをさせるにも、人間が「教師データ」を選んで、枠づけなければ、行うことはできない。
(そのデータのゆがみや、そこに含まれる悪意をスルーしてAIの判断を仰ぐ恐ろしさについても、本書は指摘している。)
では、AI恐るるに足らず、となるかというと、そうもいかない。
今の教育が育てているのは、AIでも代替可能な力だからだ、というのだ。
AIによるバラ色の未来はないという新井さんの未来予想は次のようなものだ。
AIに代替できない仕事での深刻な人手不足が起こる。
その一方で、AIと競合する能力しか身につけてこなかった人には職がなくなる。
現在でも格差が広がっているとされるが、これではますます激しくなるようだ。
言葉に関わる仕事をしている身としては、AIが苦手とする自然言語処理について興味がひかれた。
・係り受け
・(指示語と指示対象の)照応
この二つは、AIでもかなりの精度で正解できるようになるという。
逆に、AIが苦手なのは、次の力。
・同義文判定
・推論(生活体験や常識を駆使して文章を理解する力)
・イメージ同定(グラフや表と文章の内容が一致しているか判別する力)
・具体例同定(定義と具体例の一致を判定する力)
これらの力は、高校入学時くらいには獲得されているらしい。
そして、こうすれば高まる、という処方箋は、現在の所見つかっていない、と。
かなりショッキングな本ではある。
けれども、この本が貴重なのは、悲観して終わり、でないところだ。
最悪の未来を避けるために、筆者は「中卒までに、教科書が読める読解力を」と主張する。
それを具体的にどうするのか、どういった教育プログラムが必要なのかは、これからの課題のようだけれど。
突破口はここだ、と指し示してくれた感じはする。
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説得力があり面白かった。
特に教育に携わる人に読んで欲しい。
読書メモ:
数学の言葉は、論理、確率、統計のみ。
確率は理論から結果を予想する。統計はデータの分析から仮説を見つける。
数学には意味を記述する方法がない。真か偽のみ。
シンギュラリティとは、「真の意味でのAI」が自分自身よりも能力の高いAIを作り出すようになる地点。
シンギュラリティは来ない(少なくとも我々の次の世代くらいまでには)。コンピュータができるのは計算だけ。計算は数式に置き換えられる。現時点で数式に置き換えられるのは論理、統計、確率だけ。「認識」を数式化できる方法はわからない。
AIにできない仕事は、高度な読解力と常識、柔軟な判断が要求される仕事。AIに仕事を奪われる人間に、その高度な仕事ができるのか。
中高生にテストした結果、係り受けと照応はできるが、同義文判定、推論、イメージ同定、具体例同定はランダムに選んだのと変わらないレベルで全くできてない。
要は教科書を読んで理解する読解力がない。
データを分析すると、読書習慣と読解力には相関がない。読解力を高める処方箋は明らかになっていない。
読解力は中学生くらいまでに獲得する(高校では伸びない)。
結論としては、なんらかの施策で中学生までに教科書を理解できる読解力をつけさせないと将来は大変なことになる。
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人工知能をブラックボックスにして崇めることなく、その仕組みをばっさり暴いている。つまり、それは計算機の営みであり、そのまま数学の限界に縛られるものだと。
ただし、楽観視はできない。すでにホワイトカラーにつくような上位20パーセントの学生と同等の能力を現在の人工知能は示していると。
これは、社会においてフレームのある産業の合理的判断速度を限りなく上げ、産業人を疲弊させるだろうと。
破滅を防ぐためには、人工知能には出来ず、人間にしか出来ないことを模索すべきという最後の結論の章は、いささか唐突だが、間違いなく正解だ。
ただ、人工知能と人間の違いを考えるにあたって、その前提条件として、身体性と信念の体系(人の可能性を信じる、社会基盤を信頼するなど)への考察は外せないだろう。
また、現状に対する処方箋を模索するにしても、知的な障害や認知的な不安定さをもった人は、どういう位置づけになっていくのかが言及されておらず、漠然とした不安を感じた。
全体的に問題提議の書としては十全なインパクトを持っていたが、その処方箋の提示部分で、読解力の向上との結びつきが弱すぎると感じた。
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AIの現状を含め、現在の学生が抱える危機から今後の社会が迎える本当と嘘をわかりやすく「数学者」の立場から解説する。非常に読みやすく私のようなAI 初心者にはちょうどいい内容。著者の自信が強く感じるところも多いが、比較的多方面からの視点でまとめられており頷きながら読むことができた。
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ぐっちーさんがメルマガで推していた本。北海道に帰省した際にいっきに読んだ。この本が指摘することには、大いに考えさせられる。
「ロボットは東大に入れるか?」で有名になったプロジェクトを率いた新井紀子先生が著者だ。ここでいうロボットはAIのこと。2011年にスタートしたプロジェクトは、当時、国内には東ロボ君に匹敵するようなAIの大規模プロジェクトはなかったそうだ。それだけ、先端を行っていたということだろう。ボクは「東ロボ君」プロジェクトのことはニュース等で知っていたが、もう少し穿った見方をしていたと反省した。新井先生は、あくまでAIが東大に合格することが目的ではなく、「現時点のAIは東大に合格できなくて当たり前!」と判断した上で、AIを社会的な環境に具体的に適用することで、課題や限界が見えてくるかを見極めたいと思ったらしい。
本著はその目的や過程、そこから導き出される問題意識について周必しているが、大きくは2つの結論がある。
1.東ロボ君は東大には合格できる能力はないが、MARCH(明治、青学、立教、中央、法政)や関関同立(関西、関西学院、同志社、立命館)には合格できるまで達している。これは、大学進学希望者の20%の能力であり、それなりの能力には達していることを意味する。
2.新井先生は、「実は学生は試験問題が理解できていないのではないか?」という誰も想定してこなかった仮定を確認するために、読解力テスト(RST:Reading Skil Test)を開発し、全国的なRSTを実施した。その結果、新井先生の仮定を裏付ける結果が出てきた。すなわち、「試験を受験する多くの学生は、問題文の意味をきちんと理解できていない」ということ。
この2つの結論から、新井先生が描く未来は、あまり明るいものではない。東大には合格できないが、MARCHや関関同立レベルのAIは社会に浸透し、それなりの地位を築く。一方で、基本的読解力を持ち合わせていない学生や社員はAIに太刀打ちできず、大きな就職難が訪れる。
これはある意味、とんでもない指摘だ。もしもそうなれば恐ろしいことになるが、丁寧に解説している本書は説得力を持っているように思う。本書を読めば感じるが、新井先生は良識のある真摯な姿勢を持ち合わせている研究者だと思う。だからこそ、新井先生の主張が本当に思えてきて恐ろしい。
本書については、いくつかの紹介があるので、URLのリンクを貼っておく。
https://dot.asahi.com/aera/2018030100042.html?page=1
https://news.yahoo.co.jp/byline/egawashoko/20180211-00081509/
https://www.nippon.com/ja/features/c04703/
数学者(数理論理学)である新井先生の言葉は分かりやすい。数学の歴史と常套手段を紹介しつつ説明しているので、そういう意味でも「よくわかる」本だと思う。
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シンギュラリティは来ない。AIの東大合格を目指す東ロボくんプロジェクトディレクターの著者はそう断言する。では失業に怯える必要は無いのか?否、むしろRST調査によって明らかにされた日本の中高生の読解力を通して絶望的な未来が提示される。とても辛く暗雲たる気持ちにさせられるが、本書で繰り返し言及される数学と読解力にこそ時代を生き抜くヒントがあるのだと思う。
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AIの進展によって、人間の職が奪われる可能性については以前から指摘されているが、著者はAIに代替されない職に付けるだけの能力を備えた人材が育っていないことの危機感を強く訴えている。
その背景として、読解力をはかるためのテストの結果なども紹介され、中高生だけではなく、社会人でさえ、十分には読解力がついていないことを指摘されている。
他方、私自身、AI技術は日々スゴい勢いで進歩していると思っていたが、まだまだAIにはできないことが多く、特に人が常識で判断するようなことが、AIは苦手と知り、なるほど~と妙に納得するとともに、そういう分野がある限り、やはり人にしかできないことを人としてきちんとこなしていく、子供たちにもそれをこなせる能力を身に付けさせていくことが大事だと感じた。
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必読書。子供たちの読解力が実は大変になっている(昔からかも知れないが)ことが分かる。AIにも負ける読解力では、日本の将来は……
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AI を学習させて東大合格できたないかを、検討していた著者の本。有名なプロジェクトなんですね。
本の前半は、プロジェクトを通して見えてきた、AI にできること、できないことや、何が出来るかといった内容。
普段見ているニュースサイトなどでは、シンギュラリティ間近といった論調が多いのですが、実際に研究やってる方の意見は随分違うものなんですね。
考え方など勉強になりました。
後半は、子供の読解力の調査をした結果とAI の学力などについて。読解力がないってあるんですね。自分もどうなのか心配になりました。
子供と本を音読していると、てにをは、だったり単語だったりをたまに読み飛ばすことがあります。それも、読解力と通じる話かなとふと、思いました。
著者の次の研究結果がどこかで発表されることを楽しみにしてます。
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AIについて過大な評価をしていたことがわかった。
取り敢えず読解力はありそうなので一安心だったが、将来を生き延びる術を考えなければならないな。
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筆者が東ロボくん開発で分かったAIの限界を示すとともに,AIでの処理が苦手だった読解力(教科書を読む力)に関してはかなりの割合の人が出来ていないことを示した本である。
AIは数学で記述可能な処理をしているだけで,決して意味を理解はしていないこと。
人間は理解していると思いきや,基本的な日本語を読む力が備わっていない人がかなりいること,教科書が読めない人はAIに仕事を奪われるのみならず,奪われた後で新しいことを学習することも難しい,とのこと。
最近私が感じていた所得の中央値の低下,一部の優秀な人が富を生み出していて所得差が拡大していること,の理由はこういうことか,と思った次第である。
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四則演算や統計がベースとなっているAIが人間の知能を超えるシンギュラリティは起こらないという筆者の主張には、AIが囲碁で人間に勝ったというニュースだけでAIを恐れていた私には衝撃が走った。AIは限られたフレーム(範囲)での使用や数学で表現できる物には強みを発揮するが、読解力が必要な仕事をこなすには限界がある。これからの時代を生きていくための力として読解力を磨く必要があることが良く分かった。
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とてもわかりやすい
読解力の必要性。
社会の中で自立していくために
これからの子どもたちに必要なスキル。
問題点は確かに、と頷けるけど、
それを解決するのは難しい。
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読解力を伸ばす効果的な方法ははっきりしていないようだが、年経ても伸びていくものではあるらしい…興味深し!
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20180318読了。
AIの現状と人間の読解力について述べた本。
AIについての説明は他の本でも色々あると思うが、読解力の調査から出た仮説に関しては納得せざるを得なかった。
主張が明確で全体的に読みやすく、AIの限界と人間が何をすべきかを知るには良い本だと思う。
以下、私的な要約。
・AIは世間で思うほど優秀ではないが、人間に取って代わる能力は充分に備わっている。確率、統計やビッグデータなど決められた枠組みで結果を出すのは得意。
しかしAI自体に言葉の意味を理解させることはできない。
AIの元になる数学自体に、人間の活動全てを数値化する能力がないから。定義できないものには対応できない。
だから人間は意味を理解して推論したり、枠組みにない似て非なるもを判断するような能力が求められる。
しかし、中高生の読解力を調査した結果、そもそも文章をきちんと読んで理解したり、説明するような能力を持つ子供達が思っていたより少ない事が分かった。まるでAIが確率的に答えを出すみたいに、数学の証明をしようとする子供が多い。
AI以下の人間があふれて失業者が出まくるという最悪の自体を回避するためには、日本の教育で読解力を上げて学習する能力を育てる事が課題。
しかし、今のところ具体的な処方箋はない。現状の日本の教育では読解力は高校生以上では上がっていないので、大学で何か学ぼうと思ってもその土台がないから身につかないし、企業も大学に期待しなくなってる。
唯一の希望としては、読解力はどうやら後天的にも身につける事が可能であること。それを日本の教育に組み込んでAIによってクビにならない人材を育てられるようにするのが今後の目標。