紙の本
絶望的作品
2019/01/07 13:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
こういう小説は好きではないのだけど、妙に気になって次はどうなるのだと思わせるところがエライ!
一番好かんところは、悪の本質である理香の夫が弾劾されていないことだ。この男こそが一連の物語の元凶。行政はどうしてそこへ手を付けなかったのか。そこら辺の言及がどうしてないのか。どうも釈然としないまま、まっとうに生きられない人ばかりが右往左往した小説だった。
投稿元:
レビューを見る
法で裁かれない悪がこの世にはどれほど存在するのだろう。
殺したいほど憎い相手をそのまま殺しちゃうのは許されないけど、誰の目にも触れられないまま殺されていった心はどうしたらいいんだろう。
被害者面して死んでいった人間は、天国と地獄のどちらへいくのだろう。
投稿元:
レビューを見る
自分的に、この作風が若干食傷気味になってきてしまってるんかな?確かに、毎回同じものばかり書かれても飽きてくるし、作者的にも違ったものを書きたいという思いもあるだろうし、そういう意味では、望みどおりのものが出てくることなんかないだろうし、それはそれでつまらん。リーダビリティの高さは相変わらず圧倒的ながら、今までに読んだ数作と、同じレベルで本作を好きになれなかったのは、おそらく主人公への反感かな。抱えている闇が深いとはいえ、相当な凶悪犯罪者やからね、これ。別に飽くが主人公だから気に入らんなんてことを言ってるんじゃなく、それに対する周囲の穏やかな眼差しが理解出来ん。まあ、病んでる人たちを上手く描くって意味では、本作も、作者の力量が十二分に発揮されたものには違いないけど。
投稿元:
レビューを見る
親による虐待や、ろくでなしの男に追われるという要素から「アンチェルの蝶」を連想させられました。ただ、登場人物のほとんどに共感できなかった点で、これまでに読んだ遠田作品に比べると心象が悪く感じます。
確かに、高山徹(=大西麗)や安西千穂の過去には哀れみを感じますが、殺人に対する罪悪感のない徹と彼に尽くす千穂、そして実の娘をないがしろにする賢治の身勝手さに対する苛立ちが、それを上回ってしまうのです。
さらに私が本作を受け入れづらいと感じた決定打があったとすれば、千穂の懐妊を徹が知った時の「あんたの自己満足のために子供を産むな」というセリフ。本作の登場人物のほとんどに嫌悪感を覚える要因はこれかな、と。
悲惨な過去や経歴があるとはいえ、自己満足を優先して他者(特に子供)をないがしろにする登場人物たちのそうした姿と、(これは勘違いかもですが)作品内にうっすらと漂う「彼らにも同情すべき点がある」という空気・雰囲気に、拒絶反応が生じていたのかもしれません。
文章に関しては、冒頭から終章までじっくりと、一文字も漏らさず読みたいと思わせるクオリティの高い作品だと思うのですが……読後感の良くなさが、嫌な感じで後を引いてしまいました。
投稿元:
レビューを見る
三ヶ月足らずでこの人の作品を5冊読みました。
こんなに続けて同じ作家の本を読むのはかなり久し振り。
今回もまるで読者を突き放すかのような憂いを持った登場人物たち。
算数障害を持つ透とそろばん講師の千穂。
この二人、お互いの寂しさの埋め方が吉田修一の『悪人』の二人の関係を彷彿とさせる。
今回の遠田作品は他と比べると少し異色な感じがして、
何だか他の作家さんの本を読んでいる様。
遠田節は健在なのですが。
ここまで来たら遠田作品、制覇するしかないな。
投稿元:
レビューを見る
夫と義母に虐げられながら自分を殺して生きる千穂。夫が起こした交通事故の身代わりとなり、被害者の透と接触したことから、千穂の運命は大きく変わり始める…。
久々に冒頭から引き込まれ一気に読んだ。
婚家にいても逃避行へ出ても、透をはじめとした登場人物たちの生い立ちが明かされたり、殺人が繰り返されたりと、昏く付きまとう空気に、一体どこに終点があるのかと思いながら読んだが、終章の存在にやや救われ、読後感はそれほど重くならずに済んだ。
投稿元:
レビューを見る
なかなか残酷なお話でした。
透の生い立ちが残酷。弓場の過去も残酷。千穂の生きる世界も残酷。あっさり人を殺してしまうあたりも残酷。
みんなの気持ちがどこかわかるようでわからない感じでした。
千穂の義母が一番残酷で気持ち悪かった。
2018.4.7
投稿元:
レビューを見る
主人公の名前や悩み、職業まで自分に似てるところが多くて、書店でちょっと立ち尽くしてしまった…。
長編ですが、はらはらするストーリー展開、明らかになっていく謎、そしてちょくちょく挟まれる濡れ場のおかげで、中だるみなく読めます。
ほんとよくセックスする…この男…。
最近読書から遠ざかってたんですが、やっぱ本読むの楽しいな!って思えたきっかけの本です。
投稿元:
レビューを見る
大人買いするほどは著作が出ていないため、マイブームになっているとまでは言えないけれど、まちがいなく今いちばん惹かれる作家です。
見初められて身分違いの結婚をした千穂。玉の輿に乗ったはずが、不妊のせいで姑と夫から嫌みを通り越して虐待を受けている。そろばん塾を経営する千穂は、透という若い男と知り合う。算数障害の透に親身になる千穂を見て、浮気を疑う夫。一方、かつて殺人事件で妻を亡くした老人は、殺人犯の息子で死んだはずの少年・麗の面影を持つ透を見かけ、麗と透が同一人物ではないかと考える。
引き込まれ度という点では満点です。主要な登場人物に心から共感できる人柄は出てこないのに、千穂と透の逃避行の行く末がどうなるのか気になり、途中で本を閉じることができません。算数障害というものも初めて知りました。
人は、自分の測りでしかものを見ていない。幸せか不幸せかも本人しかわからないこと。障害に対する無理解に気づかず、いかに自分の尺度でおせっかいを焼いていることか。心に闇を抱える人の役に立てるはずだとの思い込みが、時にその人を苦しめているのだと痛感します。また、報道は必ずしも真実ではないということ。本当にわかってくれている人がわずかでもいればいいんだろうか。辛すぎて、厳しすぎて、読後は呆然。それゆえ、引き込まれ度は満点だけど、好き度の点では悲しすぎてマイナス。
蓮の花がポンポンと音と立てて咲くシーンだけが美しく目に浮かぶ。
投稿元:
レビューを見る
婚家から虐げられ孤立する女が出会ったのは、自らの生い立ちと算数障害に苦しむ男。愛を忘れた女と愛を知らない男が向かう先には、何が待っているのか――。
投稿元:
レビューを見る
悪意と悲劇の満漢全席で、正にTHIS IS 遠田潤子な物語だが、題材を色々盛り込み過ぎで何だかどれも消化不良な印象。人物描写が丁寧な遠田作品にしては展開が早すぎて乱雑にすら思えるが、登場人物全員どこかしら歪んでいるので、そもそも共感を前提とした物語ではないのかもしれない。しかし、ラスト二頁に込められたメッセージは痛烈で、欲望の捌け口だった大西麗の虚無感や、子供らしさを奪われた新藤恵梨の届かぬ叫びを通し、読者に対しても鋭利な刃を突き付けてくる。度を越した善意は悪意を凌駕するエゴに成り得るから恐ろしい。
投稿元:
レビューを見る
7月-6。3.0点。
大学教授に嫁いだ主人公。不妊治療10年。
義母の嫌みに堪えながら暮らすが、数字に拒否反応を示す若者と出会う。
ドロドロとした人間模様。こういうの書かせたら上手い作家。
あっという間に読める。
投稿元:
レビューを見る
雪の鉄樹からこの作家さんが気になっていたが、ブックオフには置いておらず、新品を購入。
最初から流石の筆力。ぐっと惹きつけられる。
目まぐるしく進む展開に、ページを捲る手が止められなくなる。
35歳の千穂は不妊であることから、マザコンの夫と義母から嫌味を言われ続ける毎日だった。
ある日夫が酒に酔った男を轢いてしまい、千穂に罪をなすりつけようとする。
謝罪の為、その男を探していた千穂はコンビニで偶然見つけ、そこで彼が算数障害であることに気付く。珠算教室の先生である千穂は彼の力になろうと彼の元に通う。
執拗に妻を監視する夫から、彼との関係を一方的に疑われ、これまで抑えてきた不満が爆発した千穂は、家を飛び出し、彼と共に逃亡する。
新藤賢治は蓮田を持つ農家だった。彼の妻の13回忌に、彼の妻を殺し服役していた大西理香の獄死を知る。何故最愛の妻が殺されなければならなかったのか?その真実を探し始める。
2つの話が交差した時、全ての真相が少しずつ浮かびあがる。
暗く、重く、辛く、苦しい時間が長いのだが、物語から目を離せない自分がいた。
それぞれの登場人物の、ほんの少しずつの過失が大きな事件を生み出してしまう。没頭してしまう作品だった。
投稿元:
レビューを見る
彼女の本は、これで3冊目。
「雪の鉄樹」「カラヴィンカ」ともに、とても面白かったので、
今回も期待大。
35歳の千穂は、不妊治療を始めて10年、
夫と、姑からの嫌みにずっと耐え続けていた。
そんな時、暗い過去を持ち、算数障害に苦しむ27歳の透に出会う。
千穂は彼の力になりたいと手をさしのべるが、
疑い深い夫に、二人の関係を一方的に攻められ、
これまで押さえてきた感情を爆発させ、ある事件を起こしてしまう。
そして、千穂と透、二人の遠飛行が始まる・・・
帯にある「熱量がすごい!」の言葉通りに、すごい展開になっていく。
これでもか!というくらいに、てんこ盛りなのは、この作家さんの良いところかも。
ミステリーでもあり、メロドラマのようでもあり、
次から次へといろんな事実が判明していくので、
読み始めたら止まらなくなってしまった。
悪意はないのに、他人を不幸にしてしまう・・・
そして自分も・・・
なんだかやりきれない思い・・・
どうか、登場人物たちが幸せになれますように・・・
と祈りつつ読み進めてしまう本です。
投稿元:
レビューを見る
先の展開が気になって一気読み。
結末は物悲しくて気持ちもすっきりしないけれど、行き着く先で幸せになれることはない展開だったから致し方ないか。