投稿元:
レビューを見る
1ページにひとつの質問で、思い出されるのは今年買い求めた『今日の宿題』(B&B)という書だろうか。
http://bookandbeer.com/news/shukudaib/
こちらは純粋にQAの本ではなく、「宿題」なので、「XXXしてください」というものあるが、「あなたにとってxxxとはなんですか?」といった問いかけも多く、その答えのない宿題を考えることを日々の糧にしてくださいというもの。
本書も書店の惹句にはこうある;
「質問の答えに正解はありません。(中略)自分自身の内面に語りかけ、覚醒させる。(中略)言葉の力を今こそ感じて自分と向き合うために必携の一冊です。」
寺山修司の私設秘書として16年間、苦楽を共にした著者が記したものであるが、寺山との関係で、これらの質問を考えていく必要はなさそうに感じた。寺山修司へ向けた質問もあるのだろうが、多くは純粋に、答えを考える楽しさを味わうために発せられた他愛もない質問だ。
「心も年をとるのでしょうか」
「時間を保存する方法を知っていますか」
これらのうちいくつ答えられたとか、ネガティブな解答がいくつあったらどうのこうのと、性格判断や知恵比べをする類のものでもない。ただ、思いもよらない物事に対しての問や、普段は考えもしない疑問を呈する鋭さがあり(全てが全てではないが)、読む側は、気楽に柔軟に想像力、創造力を発揮して、自分自身の答を導きだせばよい。いや、導き出せなくても、その過程を楽しむことができれば、本書の役割は果たせているのだろう。なにしろ、正解は無いのだから。
ふと、先日読んだ『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(帚木蓬生著)の中で紹介されていた、フランスの作家、モーリス・ブランショ(1907-2003)の言葉が蘇る;
ー La reponse est le malheur de question.
(答えは質問の不幸である)
正解のない、答のないところに幸せはある。ネガティブ・ケイパビリティを世に広めたビオンも
― The answer is the misfortune of disease of curiosity - it kills it.
(答えは好奇心を殺す)
と言い切っている。
本書にも「答えることは罪ですか」という問いがある。柔らかく頭を使い、答えを探る刹那の愉しさに酔いしれよう。
さて、本書は、質問毎に英語の対訳が付く。質問によっては日本語と英語で問いの内容が異なるものが、たまにある。例えば、
「希望というのはなぜ二字だと思いますか」
これを、英語だと2文字じゃないけど、何て書いてあるんだ?と思って見てみると
Why do you think the word hope begins with letter "H"
とある。
気になったついでに、考えてみる(英語のほうの問をだ)。私なりの答えは、
”自分( I )”の隣にあるものだから。
あまりに綺麗に決まりすぎて、これ、どこかで見聞きしたかもしれないな、と思っている。