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またしても「何でこの本読みたかったんだっけ?」と思いながら読み始めたが、かなり良かった!!作者が言及したヘドリック・スミス、ロバート・カイザーは訳本があるらしいが、見当たらないのが悔しい。ジョージ・ファイファーも他の本は見つかったが「モスクワからのメッセージ」がない。
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1980年に出したものが元なのか。プーチン=ロシア人=ソ連人という論法は分かりやすい。そこにあるのは強烈な大国意識とその裏返しである劣等感ということになるのだが、トランプはその支持基盤、習近平はその実力の点でプーチンには及ばないので、世界で一番影響力がある人間ということは確かに言えるか。プーチンが内包するソ連は強権であって、ゴルバチョフ、エリツィンに欠けていたからこそプーチンが待望されたのだろう。サンクトペテルブルグ人でベルリンにいたというのも「ヨーロッパ性」を感じさせ、クレムリンの「野蛮性」を稀釈しているのかもしれん。ロシアの「野蛮」はタタール人の遺伝子とされるそうだが、それ自体が神話である。
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木村汎氏(1936年~)は、ロシア政治、日ロ関係を専門とする政治学者で、北海道大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授。
本書は、1980年に出版された『ソ連とロシア人』がもととなっているが、当時のソ連共産党支配体制から現在のプーチン体制への政治体制変更を踏まえ、大幅加筆・修正されたものである。
著者は(売れ行きを考えてのことと思われるが)、まず、今日の国際政治におけるプーチンの重要性を述べ、プーチンを分析するためには、プーチンがその国民的性格を見事に受け継いでいる「ロシア人」を知らなければならないとの前置きをするものの、本書の元来の狙いは、(帝政ロシア、ソ連、プーチン体制と続く)ロシアの政治、経済、社会の諸側面をロシア人の国民的性格から分析するところにあり、その結果、プーチンに関わる記述は然程多くない。
私は先日、ロシア人とのビジネスを目的に初めてモスクワを訪れたが、事前にロシア人・ロシア社会についてのイメージを持とうと、都内の大型書店に足を運んだものの、それらが要領よくまとめられた書籍が見つからず、書名からはプーチン本人について書かれたものと思われた本書を已む無く手に取ったのだが、その中身は、まさに私が欲していた「ロシア人とは?」に答えてくれるものであった。
その切り口は、背景、性格、政治、外交、軍事、交渉、連続、労働、技術、社会の10テーマに分かれてはいるが、畢竟、ロシア人の国民的性格の根底にあり、強く私の印象に残ったのは、以下の点である。
◆ロシア人の国民的性格を形作る諸要因で最も重要なのは自然的要件、即ち、広大無辺かつ天然の障壁(大洋、大きな川、大きな山脈など)を持たない国土と極めて厳しい冬である。果てしない国土は、「ロシア人は空間をたのしむ。何よりも好きなのは、肘を伸ばしうる余地~何らの強制もなしに活動しうる余地である。彼らはつねに強制を避けようとしている」(by英国のロシア史家)という性格を生む。また、厳しい冬からは、「自然と争っても、自然を恨んでもどうなるものでもない。「長いものには巻かれろ」。諦めるのがベスト。このような人生観が生まれる」。そして、米国のジャーナリストに「ロシア人の生活のすべてを支配しているのは、ロシアの冬である~これが、私のロシア観である」と言わしめる。
◆古代ロシアが接触したのは、西ヨーロッパではなく、東ローマのビザンティン文化圏でありギリシア正教であった。ギリシア正教は、あたかもあの世において天たる神に仕えるように、この世においては地上の支配者に仕えよと説く。地上の支配者とは政治的支配者のことであり、それが、帝政ロシア→ソ連共産党→プーチン体制と続く専制的な支配体制が受け入れられるひとつの要因である。
◆ロシアは13世紀から2世紀半に亘りモンゴルの支配を受けた(“タタールの軛”)が、モンゴルは多種多様な諸民族を統治するために専制支配を行い、それが、個人の集団に対する絶対的服従という原理をロシア人に植え付けることになり、その後の専制的な支配体制が受け入れられるひとつの要因となった。
本書は、ロシア政治・社会の専門家が、40年前に著し、その後、ソ連共産党一党支配、ソ連解体、プーチン���制という政治・社会の変化も注意深く観察した上で加筆・修正されたものであり、私が実際にロシアに行って、「なるほど」と思った点も少なくなく、「ロシア人とは?」をイメージするには非常に有用な一冊であると思う。
(2019年3月了)
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国土は地球上の全陸地の八分の一。11の時間帯を持つために、国内の時差は最大10時間。それなのに人口は日本のわずか1.1倍。
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プーチンの人物像、ロシアの国民性、ウクライナ侵攻の背景を知る手掛かりになる。天性の人たらしの才を巧みに操り、「信頼できる人物」とブッシュ(Jr)に言わせたプーチンは、無名のKGB要員から必要な人物を必ず味方につけ大統領に登り詰める。外交上の目標や狙いは、「国際舞台でロシアの発言権や影響力を増大させ、ロシアの国威や存在感を高めること。米国中心のG7、NATO、EUの力を弱体化させること。旧ソ連の衛星圏やソ連構成共和国だった国々(ウクライナ、ジョージア)がNATOやEUに加盟し、ロシアが自己とヨーロッパとのあいだでの緩衝地帯を失わないように全力を尽くすこと」にあるという。
ドレスデンのソ連領事館に勤務していた時に東ドイツのあっけない崩壊を目撃したプーチンは「特定のイデオロギー、政治・経済体制、政治指導者を信用することが禁物であり、これらは危機に直面するや瞬時に変質するばかりか、もろくも崩壊してしまう存在である」ことを確信する。
領土は戦争によって決められるという「戦争結果不動論」は、ウクライナからクリミア半島を奪い、今再びウクライナを武力で屈服させようとするプーチンの信念である。
外交交渉は、決して妥協を許さず自国の要求を貫徹する戦いで、暴力団的手法で威圧する以外解決方法を知らないプーチンに対話で解決をと訴える声が虚しく響く。