紙の本
記憶障害
2018/06/25 22:56
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投稿者:ぽんぽん - この投稿者のレビュー一覧を見る
記憶障害の17歳の女の子視点でのお話。
どうしてもその設定のために繰り返しが多いですが、さほど苦痛には思えず、楽しめました。
自立の物語ですね。
終盤いろいろ明かされる真実に驚きました。でも納得はいきました。
お兄ちゃんのジェイコブが素敵に思いました。
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前向性健忘症というとまず思い出すのが『博士の愛した数式』なんだけど、あれは家政婦の視点から書くことで、いろいろなめんどうを省いていたのだなということがわかる。
本人の視点から書いたものだと『わたしが眠りにつく前に』を思い出したりしたけど、どうしても「自分の書いた記録」というものが頼りにならざるを得ないし、あと、繰り返しも必然になる。
そこらへんを、現在形を駆使した、短くてリリカルな文章で切り抜けているのが本書かなと。それでも前半は、正直ちょっと長いなと思ってしまったけど、テンポよく読めるのでそんなに苦労しない。
そしてフローラがスヴァールバルに行ってからの後半は、なんというか、障害をものともしないフローラの圧倒的な思い込み(?)と行動力にぐいぐいひっぱられる感じ。それが、北国の夏の白夜の光景やなんかとうまくからみあって、なんともいえない雰囲気をかもしだしている。
「わたしは今、この瞬間にいる。この瞬間を生きられるときに生きることは、わたしが生きるためのルールなんだって思う。だって、それなら、記憶は必要ないから」
この文章、美しいな。これ、きっと、フローラだけじゃなく、すべての人が生きるためのルールなんだと思う。
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17歳のフローラは、前向性健忘症という障害で事故のあった10歳以降の記憶は数時間しかもたない。両親と親友のペイジのおかげで生活ができている。忘れてしまう記憶のためにあらゆることをポストイットにメモして家中に貼ってある。そんなフローラはペイジと出かけたパーティを抜け出しペイジのボーイフレンドのドレイクと海岸でキスをした。そして、その記憶は翌日になっても忘れていなかった。
そのころ離れて暮らす兄のジェイコブが病気になり、両親はペイジに留守番を頼んでフローラを置いて数日間出かけることになる。だが、ペイジはフローラが自分のボーイフレンドとキスをしたことを知り、怒って手伝いに来なかったのだ。フローラは自分がドレイクとのキスを忘れていないことを喜び、両親のメールにはペイジが来てくれていることにする。
ドレイクからのメールに心躍らせるフローラは、北極に留学に行っているドレイクに一人会いに行くことにする。
すぐ忘れてしまうフローラの頼りない記憶ではあるが、その行動力にドキドキさせられながらも、自分の記憶の続かなさをメモで補いながら北極圏まで一人でかけるフローラ。そこで出会った素晴らしい人たち。
結局は両親に連れ戻されてしまうのだが、そんなフローラの行動力に共感する友人たちのおかげで成人となった18歳のフローラは大きな決断をする。
前向性健忘症という障害を克服する話、というよりは束縛する両親からの独立という誰にでもある、どこの家庭でも起こりうるテーマなのである。
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前向性健忘症の17歳のフローラは、脳に傷を受けた10歳以降の短期記憶ができない。けれど、ある夜、親友のBF ドレイクとキスをした記憶だけは消えなかった。
フローラはドレイクのおかげと病気の改善を信じ、彼を愛し求め、北極圏まで追っていく行動にでる。
ドレイクがヒドイやつだと分かっているので、何度も「ドレイクとキスをした」と記憶を呼び戻すフローラの一途さに悲しみと辛さを感じながら読む進める。
記憶は人格を形成していく。ドレイクに託した希望は、自分を取り戻すための旅だったのだ。そこには苦しさも辛さもあるが、ひとりで行動する喜びに溢れている。
最後、もっと衝撃的な事実が明かになり堪らなく辛い。けれど、フローラの旅は決して無駄ではなかった。
自分らしく生きるとは、誰もが求める普遍的なテーマだったと気付く。
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家族以外に誰も自分を愛してくれないんじゃないか、なんなら家族も自分のことを愛してくれていないんじゃないか。たぶん誰でもそんな孤独感を感じることはあるし、障害を持ってるフローラからしたらその孤独感はもっと強かったんだと思う。
そこで初めての男の子とのキス。甘い言葉も言ってくれるドレイクにフローラは舞い上がる。しかもその記憶は消えない!きっと特別な運命的な恋に違いない。
自分の障害を治してくれる可能性を持っている男の子、そして自分を愛してくれて、孤独から救ってくれるドレイクにフローラは夢中になる。ドレイクを追って北極にまで行ってしまう。
でもそれは全然運命的な恋でもなんでもなくて、ドレイクは北極で新しいガールフレンドを作っているし、「フローラとキスなんかしていない。別の女の子とキスしてるところを見たフローラが、自分のことと勘違いしただけだ」とか言う。
結局、キスは本当にしていて、ドレイクはどうせフローラが忘れてしまうと思い、すごく軽い気持ちでフローラにキスをしていたことがわかる。わたしはドレイクめちゃくちゃ最低だと思った。
でも、たぶんドレイクみたいな男の子は現実にたくさんいて、ドレイクのその軽さはすごくリアルだと思った。すぐ忘れてくれる女の子に適当に甘い言葉をかけて、ヤレればラッキーみたいな。
ただ、この物語に出てくるのは、ドレイクにふさわしい軽薄な女の子じゃない。孤独から逃れてふつうに暮らすことを願う勇敢なフローラだ。
フローラは、自分を治してくれると信じてドレイクを追いかける途中で、いろんな人に出会う。その人たちはフローラにとても親切で、フローラの友達になる。
フローラが追いかけたドレイクは最低なやつだったけど、結局のところフローラを孤独から救うことに一役買ったわけだ。
もうこの先誰にも愛してもらえないんじゃないか、1人で生きていくしかないんじゃないかと絶望して何も動かないのでは人生は変わらない。本当に孤独なままだ。
でもフローラは「勇気を持って」自分を救う旅に出る。自分を救ってくれる魔法の王子様はいなかったけれど、フローラは自分で自分を救うことができたのではないだろうか。フローラを見習って、勇気を持って、わたしも旅に出てみようと思う。
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第21回やまねこ賞第3位作品。記憶障害の主人公の一人称語り形式だからしかたないがあまりの繰り返しの多さにやや辟易。評価が高いから期待して読んだがあまり感動できなかった。
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また、娘のおススメ。ジャンル的にはYA
記憶障害の少女の一人称で書かれているので後半まで良い意味で読者は騙される。
中盤が同じことの繰り返しなので、意味はあるのだけど本を読みなれていない子は飽きてしまうかも。
少女を誰よりも大切に思っているはずの母親よりも、他の人が彼女の未来の救いになるという結末が辛く、でも素晴らしい。