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やっと、やっと、この[文庫版]『からくりサーカス』(11)を読み、感想を書く事が出来ます
お待たせしてしまい、申し訳ありません、藤田先生
いや、藤田先生は待ってないよ、とツッコまれそうですね。けど、気にしないでください、皆さん。私も、今、読み終わったばかりの勢いで言っちゃってる、その自覚は持っているので
私が、この[文庫版]『からくりサーカス』(11)を読むのに、時間どころか日数がかかってしまった理由、解ってくださる方は、まぁ、半分くらいはいらっしゃるんでしょうか
解らないって人は、きっと、買ってすぐに読めたんでしょう
もちろん、バカにする気は微塵もありません。素直に言えば、羨ましいです
私は、下手なタイミングで読むと危険だな、と言う予感が、これまで読んで来た良い漫画で培ってきた経験から感じ取れたので、心、いえ、魂が、「読め」と言ってくれる時を、体力作りに励みながら待っていました
もちろん、藤田作品のファンなので、待っていたって良い事なんかない、それは承知しています
けど、藤田作品のファンであるならば、じっと耐えて、最高のタイミングに動くべき事もご理解いただけるはずです
ともかく、この[文庫版]「からくりサーカス」(11)は、生半可な覚悟で読んだらダメだったんですよ、私の場合
ちなみに、この(11)と相性の良い曲は、個人的には、「命に嫌われてる」かな、と思ってます
とは言え、他にもグッと来る曲があるかも知れないので、皆さんにも、「この曲が良い」と自信満々で言えるものがあるのでしたら、教えて貰いたいです
未読の方が、この感想を読んでいるとは思えませんが、一応、ざっくりとあらすじの説明をします
「しろがね」と「自動人形」の全面戦争は、勝者も敗者もなく、両陣営が絶望すら感じられないほどに、容赦のない、圧倒的な火力で消し飛ぶ決着となります
ざっくりしすぎだ、と他のファンからお叱りを受けてしまうでしょうが、正直なところ、私の、未だ至らぬ実力じゃ、『からくりサーカス』の良さを知らない方々の心を揺さぶれる、正鵠を射た感想は、まだ書けません
しかも、この(11)は、一つのターニングポイントともなる、重要な巻ですよ。それこそ、当時のアシスタント、担当編集者さん、または、女優の杏さんくらいですよ、「そういう話なのか」と未読者が深い理解を得られる感想が書けるのは
藤田先生は入れないのか、と言われそうですが、書けても、書きたくない、と仰るんじゃないでしょうか
とは言え、私にも、藤田先生のファンである矜持もありますから、もうちょっと頑張ってみます
ともかく、この(11)を読むなら、ハンカチと鼻紙、可能なら、スポーツドリンクを用意してください。言うまでもありませんが、ハンカチは涙を拭くのに、鼻紙は鼻をかむのに、スポーツドリンクは脱水症状の予防に必要です
改めて、藤田先生は人間の生き方と死に様を描く実力が、業界随一だ、と感じました
初めて読んだ時も、凄ぇ、と思ったんですけど、この『からくりサーカス』以降の連載作品を読んだ事で、以前よりも、その凄さを肌に感じられるようになりました。また、押切蓮介先生の『狭い世界のアイデンティティ』(3)を読ませた事も、感じ取る力の成長にプラスと働いてる気がします
調子に乗って良いなら、小説家デビューすべく、今現在、読んでくださる方の心を揺さぶり、熱く出来るストーリー作りに四苦八苦しているからこそ、感じ取れるようになったんでしょうか
人間は、死にます。理由は様々でしょうけど、死んでしまうのです
死ぬ時は、男だろうが、女だろうが、子供だろうが、老人だろうが、サラリーマンだろうが、一国の大統領であっても、一人で死にます
けど、後悔のない生き方を選べた人、満足の行く死を自分の行動の末に選べた人は、自分が繋いできたバトンを、次の人に渡せます
一人で死ぬのだとしても、自分の想いを受け継いでくれる誰かがいるから、その誰かの為に命が張れる、最期まで戦える、そして、笑顔で逝ける
人間として、長い人生の終わりを迎えた彼らの最期は、人によっては、残酷と感じる形かも知れません
ただ、私は、美しさすら感じました。美しい、そう表現すると、語弊があるかもしれませんが、「人間らしさ」、それは確かに詰まっています
自分だけの為に生きる、持っている物を使う、その生き方を、私は悪い、とは言えません
当人が、その生き方は正しい、と信じられるなら、それで構わないと思います
弱い奴を救って死ぬなんて、バカがする事だ、と考えるのも、それは本人の性根ですから、言うべきことはありません
ただ、私は、自分の為じゃなく、誰かの為に死んだ人は、カッコ悪くない、そう感じるって話です
極端な言い方をしちゃうと、藤田先生は、私に憧れる死に方を示してくれたんですよね
この(11)は、大勢の「しろがね」が命を落とします、自分達の希望である加藤鳴海を助けたい、こんな所で死なせはしない、その想いだけで、自分の命を最期の一滴まで絞りきり、生命力を燃やし尽し、人間として死んでいきます
自分の為に死んでいった者の心を受け継ぎ、体に宿し、魂に刻んだ加藤鳴海
彼は、これまで以上の実力を発揮し、以前に苦戦を強いられ、手も足も出なかったパンタローネとアルレッキーノを行動不能レベルまで破壊します
残るは、フランシーヌ人形のみ。皆が出来なかった事、自分がすべき事、そして、負の流れを断つべく、加藤鳴海はフランシーヌ人形の前に
しかし、ここで、鳴海も、読者にとっても信じがたい真実が明らかになります
一体、どんな展開を迎えたのか、その衝撃は、皆さんで感じ取ってください
私が、この(11)を読めなかった理由に「?」な人も、間違いなく、私と同じく、「まさか、ここで、そう来るか」と、藤田先生の裏切り力に戦慄したことでしょう
乱暴な言い方をしても構わないなら、この展開で、藤田先生に惚れ直さない漫画読みは、藤田先生の作品が肌に合わないので、他の漫画を好きになる事をお勧めします
まあ、藤田作品の良さが、全く解らないのに、この(11)まで読んでいる人はいないでしょうけど
加藤鳴海が、これから、どうなってしまうのか、気になるところですが、舞台は、もう一人の主役である勝が立つものに移ります
サーカスの芸人と���て、着実に開花の兆しを見せつつある勝にもまた、己が進むべき道の選択を迎える時が近づいています
こりゃ、(12)を読むのにも、少し、時間がいりそうです
この台詞を引用に選んだのは、この(11)の中に散りばめられている、名言の中で、特に強く、私の心が打たれたからに他なりません
あくまで、私個人の印象ですが、藤田先生が考える、いえ、信じたい、人間の「美しさ」と「強さ」が、この言葉に詰め込まれているのでしょう
人間は、追い詰められた時にこそ、本性が剥き出しになると言います
きっと、これほどまでの怒りを、漫画と言う形に出来る藤田和日郎と言う名の人間は、死神の手が肩に置かれる状況になっても、にっこりと笑えるんです
私も、ヤバい時ほど、生きる事を諦めないで、笑える人間になりたいです
そういう強さを手に入れるためには、やはり、この『からくりサーカス』や、他の良い漫画を読んで、感想を書く事を疎かにしちゃいけませんね
「いいや、ちがうな、アルレッキーノ。死んでゆくから、人間は美しいだと?てめぇが醜いと言った『しろがね』達は・・・きれいだったぜ。死ぬから、人間はきれいなんじゃねえ!死ぬほどの目にあっても・・・まだ、自分が生きているってコトを思い出して・・・にっこり笑えるから、人間はきれいなのさ」(by加藤鳴海)