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読了しました。
「読了」と書きましたが、この本は一般的に読了するものではありません。
なぜ、「読了」したのかを長文になりますが書きましたので、お付き合いください。
以前より非営利組織の活動に様々関わっており、もともと会計好きも相まって、
NPO法人の会計に関することを調べていたら、ネットで見つけてしまって、
思わず買ってしまい手にした本です。
ちなみに私は、簿記1級や税理士科目合格し、仕事も経理をやっており、
それなりに研鑽を積んでおります。
本書は、書名のとおりNPO法人において、主として使用することを想定して作成された会計基準のルールをはじめとして、事例、Q&A、基準ができるまでの経緯なども含めて相当な内容が記載されている本です。
ちなみに、NPO法人の経理担当者向けの実務書ではありませんし、これを読めばNPO法人の会計を担えるといものではありませんのでご注意ください。
簿記や財務諸表論を知らないと読むのは苦痛でしかありません。
そもそもこの本を手にする前から、こうあればいいなあと思っていました。
それは、NPO活動には様々な活動があると思いますが、そのほとんどは無償の労働、物品・不動産の寄付などの提供をもとに成り立っていると思います。
いわゆる株式会社でしたら、売上げが何億だとか、
資本金が〇億円以上だから大企業だとか、昨年の利益から何倍になったので、配当利回りを上がったとかといった企業会計のことで表現され、客観的なチェック(監査など)が施され、信頼性を確保することになります。
資本主義では、お金を持っている投資家が、利益を生み出す力のある経営者に、資本を預け、そのリターンとして基本的には配当や、株件売却益を享受する仕組みです。
なので、株式会社の姿を現す会計情報は、信頼の重要なファクターになるのです。
信頼性の高い企業には、人、モノ、お金、そして情報が集まり、企業価値は増大します。
では、NPO法人はどうでしょう?
ボランティアは労働ではありませんから、人件費は支出されず計上されません。
こども食堂に寄付された食品は、対価を払った仕入れていませんし、利益を上乗せして日替わり定食を販売しているわけでもないので、売上げをはじめとした、儲かった
儲かっていない利益計算をされません。
そうなると、会計でNPO法人の状況を表そうとすると、まったく実態とは異なることになります。
最近はクラウドファンディングなどが活発になり、自分が寄付したお金がどのような
事業に使われているか、興味を抱く人が多くなってきました。
もちろん、金額ではない定性的な活動報告や、関係者のアツい思いがその法人や事業を形作り、その思いに共感し信頼されるところに、人、モノ、お金、そして情報が集まり、非営利事業はさらに増大します。
私は、非営利であってもリソースを獲得するために、非営利のNPO法人であっても、
信頼性を高め、一般の企業会計では評価されない、ボランティア活動や、寄付を受けた食料について、金額に換算し表現することで、そのNPO法人の形を表すこと���、信頼を獲得する一つの手立てなると考えておりました。
そうすると、非営利であっても、さらなるリソースを獲得ができるはずだと考えてました。
実はそういった考えは既に、相当な方がの議論を経て10年近く前に世に出ており、記載されているのがこの本です!
初めて見たときは、もー驚きました。すごいのなんのって!
本書を電車で読みながら、目を輝かせている中年オヤジは私ぐらいではないでしょうか、笑。
ボランティアの無償の労働は、「ボランティア評価費用」
食品の無償の寄付の受領は、「寄贈食品受入評価益」
として表現されます。
ある団体の、収益合計(お金をもらった金額)は、12億円ですが、
そのうち寄贈食品受入評価益11億円です。
食品の評価益の表示がなければ、1億円だけの収益です。
この差は明らかです。
参考までに、その実際の事例がこちらです。
(セカンドハーベストジャパン2019年度活動報告:http://2hj.org/about/pdf/jigyou_2019.pdf)
今回は書評というより、NPO会計基準の素晴らしさを伝える内容になってしましましたが、本書には、その考え方、崇高な理念、計算ロジック、表示メソッドなどが会計用語を中心にしっかりと記載されており、私のような視点で読むと驚きの連続と、感激の嵐となる気持ちにさせてくれる本です。少なくとも私にとっては…。
なお、この本は読み物ではなく、NPO法人の会計情報(IR)や、資金調達(ファンドレイジング)をされる方が、「調べもの」として使用する本なので、小説やノウハウの詰まったビジネス書のごとく、私みたいな驚きと、感激をするものではないことをお知らせしておきます。
NPO法人の会計責任者でIRを意識されるかた、クラウドファンディングで資金を
集めた後に信頼を得るための決算を報告しようと思っている方にお勧めの本です。
こういった実務ができる機会を与えて頂ける方がおられましたら、是非ご連絡を頂戴したいです。やれる範囲は限らるかもしれませんが、気持ちは夏のひまわり畑のひまわり状態です。
また、この話についてこれるマニアックな方がおられましたら、一緒にキャーキャー言いたいので是非、ご連絡ください。
今回はよくわからない書評になりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
ビバ、NPO法人会計基準!