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2018年1月末までのところでの仮想通貨の状況を、主に時系列的な動きに沿って解説している。新聞記者の取材をもとにしたテーマから様々な動きの一端を知ることができる。
これ一冊を読んでみてそれなりの情報を得ることはできる。ただ、まだなにかぼんやりとして目の前が晴れない感覚が残った。
日本では「仮想通貨」と呼んでいるいるものを、英語圏では「暗号通貨」と呼んでいる。この呼び名の差異は何なのか、そういう点にも意識を向けてほしい。少しの表現の違いと言えばそれまでだが、このような黎明期にあっては無視できないことではないか。定義が定まっていないものを対象にしているからである。
これらの通貨と呼ばれるものは、ブロックチェーンの技術を基盤にしている。ブロックチェーンはこれらの通貨に限らず非常に有用な技術であるというのが大勢の見方である。そして、この背景を踏まえて、仮想通貨なのかデジタル通貨なのかという、将来に対する期待と不安が混ざり合う議論が本書の後半に繰り広げられている。
伝統的な金融機関の中で長い時間を過ごしてきたひとりとして、正直なところ、これらの新しい出現に対してバイアスがかかった見方をしてしまっていることにあらためて気付いた。そういう意味では、既存の金融機関にとってこれから長く精神的な挑戦を受けていくことになるだろう。ただ、通貨がどんな形態であっても、普く通ずるものとして人々に受容されていくべきものだとするならば、仮想であっても暗号であっても「通貨」たりえるかというのは、現状、少々楽観的ではないかと感じる。