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乗り遅れるな、これが世界水準だ
人類の叡智=科学では捉えきれない超常現象を通して、人間は再発見される。進化を、科学を、未来を――人間を疑え。SFとミステリの枠を超えた、大才・宮内悠介の代表作にして入門書。吉川英治文学新人賞受賞作。
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宮内悠介の短編集が文庫化。
収録作の中では『ムイシュキンの脳髄』が好きだ。ドストエフスキーが好きだからかな……。
長編も好きなのだが、宮内悠介はやっぱり短編の方が面白いような気がする。
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世界観がすごい。疑似科学なんだけど、淡々とした、突き放したような、感情を排除した語り口に、まるで真実が語られているような気にさせられてしまう。認知が歪む、不思議な感覚がある。
だからと言って面白いかっていうとまた別問題なんだけど、私は好きです。
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超能力や超常現象を題材にした短編集。
1人のライターが取材する形で物語が進んでいくので、連作としての面白みも期待していたが、最後の短編で前の登場人物が出てきたって程度。
それぞれの現象や能力が本当にあるのかないのか明言しないまま終わるので妙な読後感にはなる。
納得できない感じが好きではないが、そもそも読み進めるのがつらかった。題材は好きなのでかなり残念だった。
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平和への切なる願いを抱いた人類は、その自由意志によって
おのれのエゴイズムを去勢することさえできる
ところが、エゴを捨てたあとには自由意志すら残らない
人間らしさを失って、社会に適応できなくなってしまうということだ
このジレンマ
これを打開するべく設定されたまやかしの希望こそ
すなわち宗教であり、物語であろう
まやかしの希望でも、あらたな人のつながりを生んでくれるなら
なんの問題もないように思えた
ところがそれは
価値観の異なる人間どうしに、あらたな軋轢をも生み出したのだった
軋轢は、またあらたなエゴと争いを生み
さらに人々の罪悪感と現実逃避で過激になっていくだろう
あくまで争いを嫌う人々は、社会の片隅に隠れ
いつしか死の世界へと迷い込んでいくだろう
そのように、死の欲動に抗おうとする人間の理性は
敗北を宿命付けられているわけだ
しかし、僕は思うのだけど
ファウストが最後それを見出したように
死の欲動に直面してなお、揺るがない生の喜びというものも
自己満足のそしりは免れないにせよ、あるのではないだろうか
疑似科学シリーズと銘打っておきながら
どうも本物のエスパーとしか思えない人物を出してきたところに
ある種の詭弁性を持った連作短編集
SFということにはなっているんだろうが…
修業して、超能力が身につくと信じた集団は実際いたからなあ
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非常に魅力的なタイトルの本作ですが、連載時は「疑似科学シリーズ」と銘打たれていたそうです。はて「疑似科学」とは何ぞや?と思ってWikipediaを見ると、日本語の意味としては「科学性をうたっているが実際には非科学的であるもの」を、本来の意味としては「うわべだけの科学や、誤った科学のこと」を指しているようです。
本作では放火猿、共時性、スプーン曲げ等の非科学的な題材が扱われますが、それらに対する科学的真贋についてはほとんど触れられていません。一方で、非科学的な事象をもとに起こる様々な事件については論理的な解が導かれるようになっており、言い換えるとミステリを読む際に構えるであろう「論理性」およびそれと対をなすであろう「非科学」がともに齟齬をきたさないよう、うまくバランスをとった描かれ方がされています。SFミステリ作品ではよく使われる手法ですが、それを「疑似科学」という観点でアプローチしているところがユニークであり特徴的であるように感じました。
色々と読みどころはあると思いますが、個人的にはライターを生業としている主人公が、傍観者の立場から徐々に疑似科学の世界の側へ堕ちていってしまう様が読んでいて面白かったです。一方で、作品全体を通した印象はクールというか低体温というか、ここは気合をいれて盛り上げるところだろうという箇所が意外にさらっと書き流されていたりして、やや物語への感情移入が難しい面があったようにも思えました。
とはいえ、日本を舞台にしていることもあるのでしょうが、過去作と比べるとかなり読みやすく、文庫の帯にあるように著者の入門書としては最適な一冊ではないかと思います。
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【疑似科学シリーズ】と銘打たれた超常現象が題材の連作短編集で、フリーライターである主人公の視点を通して事件の顛末がルポタージュ調に語られる展開が何とも新鮮。序盤はライターという立場から事件を俯瞰していた主人公だが、中盤から徐々にその渦中に巻き込まれていく。前半二作品にはブラックユーモアの要素も感じたが、全編通してSFというよりも超常現象を題材にしたミステリーという印象。お気に入りは「ムイシュキンの脳髄」と「水神計画」の二編。エピローグ的扱いの「沸点」は特にそうだが、全体的に哲学的要素の強い作品でもあった。
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「わたし」が似非科学と対峙する連作短編だ。
と言っても、「わたし」は決してその似非科学を暴いてやっつけるようなヒーローではない。
ただそれを「見る」だけだ。
SFともミステリーとも言い難い本作。
スプーン曲げや代替医療など扱う題材は面白い。
しかしながら、どうにもうまく表現できないが、私にとっては読みにくく、そこまで厚いとは言えない文庫本を読むことにいささか難儀した。
著者と私との波長が合わない、それが最もぴたりとはまる表現なのだろう。
シンクロニシティと崇拝、言霊と水質浄化、プラセボと終末医療......。
どれもこれも弱った心にするりと入り込んで狂信的とも言える信仰を集める。
それゆえに私の心はその描かれた疑似科学を拒んだのかもしれない。
知れば洗脳されてしまうかもしれない。
第六感、それも似非科学だろうか、本能が危険だと知らせた。
これは作り話、そう思っていても、簡単に人の心は流されてしまうものだから。
そんな考えこそが、いや、真実を突いているかも、いや、それも科学じゃない、いやいや、科学だって万能じゃない、仮定の話ばかりだ.....。
堂々巡りが、「かも」が、私の頭を埋め尽くしていく。
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初宮内悠介作品。
とっつきにくい部分もあるが、興味深いテーマが取り上げられた一冊。
最後の「沸点」はうらぶれたサンクトペテルブルクに希望が灯されて好きなエンディングでした。
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疑似科学というテーマは、思ったより僕らの身近なものらしい。
かなり好き。
たまたま最近読んでた『謎解き カラマーゾフの兄弟』に、匿名会(AA)についての話が少し出ていて、思わぬシンクロ。
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擬似科学やオカルト的なモノをテーマに、そこに縋る人の心理面を描いていて、面白いです。
上手く表現出来ないけど、新しい感じ、不思議な読了感がありました。
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もっとオカルトな内容でぶっとべる話かと思えば、いたって冷静な静かな小説。
同じテーマで短編を並べるスタイルは嫌いじゃない。語り手が作者本人なのか否か、読み手からすれば混同するような感じもディック的で悪くない。あくまで多分作者本人ではないが。
ちょっと、自分で期待値を別な方向に上げてしまってから読んでしまったかなあ。
ただ、ラストは微かに光が見えるような感じで良かったけどね。
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一人の記者を語り部に、事件の当事者のインタビューで構成されたモキュメンタリー風味の連作短編集。起こる事件はどれも超能力や不思議な水、代替医療など、ニセ科学のオンパレードで、一見すると荒唐無稽なものばかりだが、それを支える設定や仮に現実に起こった場合の驚異的な予見力、大衆の反応などは実にリアルで、現実と虚構の境目が曖昧になっているかのような感覚を覚えてしまった。
火の使い方を覚えた猿の話である「百匹目の火神」は「猿の惑星、征服」のようで、世間の右往左往とする感じや遅々として進まない対策、政治家の失言によるバッシングなどがスラップスティックで実に面白かった。
表題作「彼女がエスパーだったころ」は超能力少女というファンタジックな題材ながら、一般人のそれに対する猜疑心や世間の受け入れ方、科学との距離感などが絶妙で、現実に超能力少女が現れた場合の周囲の反応と消費のされ方というのはリアリズムに満ち溢れている。超能力がメタル・ベンディング=スプーン曲げという些細な何の役にも立たない能力というのが実によく、オカルトに対してなんとか暴いてやろうとする声や、超能力ビジネスと宗教団体の違いは母体となる組織の有無であり、信者のその後をケアしないという、マジックである手品側からの超能力に対する批判なども興味深い。
まさに超能力者がもし現実に現れたら?のシミュレーションとしては完璧であり、このへんのリアリティには文句のつけようがない。作者の目指した偽科学を肯定も否定もせず、また希望を寄せたり絶望と遊ぶわけでもなく、冷徹に見据えて境界を不明瞭にした筆致は見事ではあったが、その反面、SFとしては十分でもミステリとしては存外に弱い部分もあり、また圧倒的な現実性と地に足の着いた印象のせいか、ロマンのようなものは感じなかった。人間の業とでもいうべき弱さは伝わってきたのだが、事件は違うとはいえ全編通して同じトーンの作風だったので、食傷気味というのが正直なところである。ただこの語り口は素晴らしく、夢中になって読んだ短編集でもあった。
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宮内悠介さん初読。
SFの人というイメージだったけど、この短編集は、信仰と超現象と偶然の境界を巡る小説だった。
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疑似科学がテーマの連作短編集。「彼女がエスパーだったころ」「ムイシュキンの脳髄」「薄ければ薄いほど」が好き。