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一見なんでもないような歌が涙を誘う。
義父母、両親、夫、子、孫と続いていく家族の絆の強さ。
大切な人を亡くす悲しみとその後を支える息子たちとの日々。感動の一冊!
倉本さんの歌集の原稿を初めて読んだとき、いままでにない経験をした。とくに強い感情があるのでもない一の章「三月の雪」から、何かの兆しのように涙が湧いてきて、読み上げるまでずっと泣き続けたことである。「命はんぶん」の章で、人目をはばかるほど咽び泣きした。
(中略)
登場人物がよく書けていて、真実そのものといっていいドラマが書けている。彼女は自然体の歌を書きながら、大きな仕事をしていたのだと思う。
歌は短いが、その瞬間の命を表わす、ときに短い歌が長い年月を表わすこともある。
これに対し、歌集は長編小説に当たる、うたびとは自身の気持ちを瞬間瞬間表わしながら、その一生で長い物語を書くのだと、私は言っている。
この歌集は、それを説明するのにぴったりのものとなった。
この物語は、永遠に続く愛の物語であろう
(五行歌の会主宰 草壁焔太跋文より)
ふくよかな胸へ
懐紙を
すっと忍ばせたよう
かさなる稜線に
三月の雪
キューピットの矢が
わずかに
外れて
今 あなたといる
不思議
夫が余命を
告げられた歳になって
つくづく思う
穏やかに過ごしてくれたのは
周りの人への夫なりの愛だったと
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