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復帰(?)して、最初に感想を皆さんに読んでもらうべきは、やはり、この『からくりサーカス』にしたかったのです
もちろん、他の良い漫画を下に見ているつもりはありません
ただ、あえて断言したいのです、藤田作品は別格なんだ、と
つまり、他の先生方には、藤田先生をぶっ飛ばせるくらい、強くなっていただきたいのですよ、一漫画読みとしては
この【文庫版】(13)は、藤田ファンでも、いや、藤田ファンだからこそ、藤田先生の凄さが肌身に感じ取れるんじゃないでしょうか
現代パートを更に良質と感じさせる過去編、と表現すれば、他の藤田ファンも納得してくださると思っております
10~20代の漫画読みからすると、良い過去編を描ける一番の漫画家は尾田栄一郎先生なのかもしれません。吾峠呼世春先生の名を挙げる漫画読みも、きっと、中にはいるでしょう
尾田先生と吾峠先生の強さも、毎回、感じ取っているのも事実ですが、30代の漫画読みとしちゃ、やはり、一番は、藤田和日郎先生です
この(13)で描かれている過去編で、特に強く感じたのは、母の強さ
藤田作品に登場するお母さん達は全て、子供たちの為に身と命を張る覚悟を持っており、その中でも、アンジェリーナさんはその強さが顕著であるように思います
恐らく、というか、間違いなく、自動人形を引き付ける囮として戦っていた時よりも、しろがねとして強くなっていたに違いありません
強さが一段階どころか二段階も上がっていたのは、子供“達”を守りたい、母としての思いがあったから
かつて、鳴海が悪魔と化した時、ギィが引かなかったのは、彼自身も母を失った怒りと、自動人形らへの憎しみ、何より、アンジェリーナさんを守れなかった己の弱さへの憤りから、悪魔と化したからだったんでしょうか
悪魔になれる者同士だからこそ、鳴海とギィの間には、確かな男同士の友情が確かに芽生えたんだ、と私は確信しています
アンジェリーナさんの形見である「あるるかん」の、自動人形との戦いで千切れた左腕を鳴海に繋いだのも、大切な妹を彼になら託せる、と思ったからかもしれませんね
また、フランシーヌ人形の変化もまた、この(13)で、読み手の心を強く打った一撃でしょう
きっと、彼女は、満足する死を迎えられたに違いありません
自動人形なのだから、死ではなく「壊れた」が正しい、そんな間抜けな事を言う者は、藤田ファンにはいませんよ
だって、あんなにも、心から、と分かるほどの良い笑顔を今際の際に見せたんですよ
だから、私はフランシーヌ人形は、人形として壊れたんじゃなく、人間ではないにしろ、人形でもない何かになって、死ぬ事が出来た、と信じたいんです
しかし、そんな泣ける展開から、エレオノールが過酷な運命に陥ってしまった事をブッコんでくる藤田先生、ほんとに良い意味で鬼
次巻では、諸悪の根源である貞義が、その本性を剥き出しにします
つまり、勝が主人公として、より覚醒する展開が待っているってことです
さぁ、気合を入れて、読むぞ、(14)
この台詞を引用に選んだのは、ギィさ��は、悪魔になれる男だけど、確かな優しさもある人間だ、と感じ取れるものだからです
矛盾するかもしれませんけど、優しい人間だからこそ、誰かのために生じた怒りで、悪魔になれてしまうんでしょう
しろがねとして、ゾナハ病を世界中に撒き散らし、哀しみしか生んでこなかった「真夜中のサーカス」の首魁である、フランシーヌ人形に対しては、経験に支えられる憎悪があったでしょう
しかし、フランシーヌ人形は、自分が死ぬのも厭わず、自分よりも大切なエレオノールを守りました
妹を守ってくれた強い友に、ギィさんは怨みの念を捨て、感謝を示しました
友情、と表現するのは微妙に違うかも知れませんが、それでも、ギィさんとフランシーヌ人形の間には、優しい絆が芽生えていた、と私は感じます
「・・・・・・お前の欠けた『歯車』は、埋まったのか・・・? おまえは、何かに、なれたのかい・・・・・・なあ、フランシーヌ・・・・・・・・・」(byギィ・クリストフレッシュ)