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紙の本
目からウロコの緻密な分析、圧巻の将棋史
2018/05/09 22:11
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ザ・フライヤー - この投稿者のレビュー一覧を見る
当初は、目次を見るとタイトルの刺激に比べ、何の変哲もないガイド本かと思った。だが、第1章の棋士の出世のシステムで、少しは将棋を知っているつもりだった私が、いかにテレビ等のメディアにイメージ操作されていたかがわかり、思わず引き込まれるように読み進めた。圧巻は第2章で、名人戦を1期ごとに追いながら、決して結果の羅列ではなく、名人と挑戦者の周辺事情・心理的葛藤を交えて、木村義雄名人から佐藤天彦名人に至る流れを大河ドラマのように描写している。実力名人制以降80年のロングストーリーが手に取るようにわかる。筆者が言うように、この「歴史認識」がなければ今は到底語れないと思った。また、タイトル戦創設の経緯によって、タイトル戦と一般棋戦を分ける要素は何かも詳細に書かれており、マスコミの情報では錯覚を起こしそうになるタイトル戦の価値判断はこれによって決まると言える。「最高契約金=最高権威ではない」や「タイトルホルダーの呼称のからくり」などは、確かに立場上「プロが書けない」だろう。そしてクライマックスは、実力名人制以降最強棋士は誰かというテーマに対して目からウロコの緻密な分析をしている。分析に用いる手法の根拠を明確に示しており、データによって見事に証明されている。要するにマスコミは{筆者は触れていないが便乗する連盟も)、まるでショースポーツの興行のようにスーパースターを作り上げたいがために、ウソを言うのではなく必要な情報を隠しているのが明白だ。筆者の分析手法は公平性を第一に置いており、「公式タイトル獲得数で比較するのは、大相撲で言えば双葉山と白鵬、大鵬らの優勝回数を比較するのと同じ位愚か」旨の記述は、機会均等でない簡単な理屈もぼかして隠すメディアへの痛烈なメッセージだろう。私は信じ込まされていた洗脳から脱して清々しい気分になった。筆者は意図していないかもしれないが、史料本・データ本としての価値も十分あると思う。さらに第2編は第1編のシリアスな分析から打って変わって、指導対局エッセーにより棋士・女流棋士の素顔をソフトタッチで描写している。筆者は指導対局の楽しさを多くの人に知ってもらいたいという普及(?)の意図のようで、ユーモア溢れる表現の中に棋士・女流棋士へのリスペクトが感じられほのぼのとした気分になった。また、私のようにあまり棋力の高くない者にとっては、いわゆる自戦記のように棋譜・図面ばかりでは無味乾燥だが、筆者のは「体験記」であり、臨場感や心理・表情・会話の中に指し手が交っているので読み物として楽しい。とにかく、久々に読みごたえのある一冊で、マスコミはこの本の内容のことを知った上で語ってもらいたいと思える書だ。
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