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日本では非常に貴重なジョージア映画の入門書。研究書ではなく、作者のジョージアの映画人たちとの交流を交えながらジョージア映画の歴史を紐解くガイド的な位置付け。今、岩波ホールで開催中の「ジョージア映画祭2022 コーカサスからの風」の予習に役だった。作者原田さんは同映画祭イベンターも務め、初日に挨拶をされていたが、ジョージア映画の不遇を訴えていた。旧ソ連時代にジョージア映画の所有権がソ連のフィルムセンターにあった関係で、ジョージアはソ連解体後もロシアから版権を高額な金を積み、一つ一つ買い戻している最中だという。そのせいで日本でも旧ソ連時代のジョージア映画は数十本しか観ることができない。
実生活で縁もゆかりもないジョージア映画に惹かれるのは何故だろう? テンギズ・アブラゼ、シェンゲラーヤ父子等の巨匠や近年ヒットした『みかんの丘』『とうもろこしの島』を観て思ったのは、ジョージア映画は共通して宗教的なテーマによる画面の荘厳さと、民族的なテーマが生み出す熱狂とヒューマニズムに彩られているということ。自己言及的な、内省的な厳めしさに、発散する開放的な雰囲気が加わり独特の映像世界が展開される。ーーテンギズ・アブラゼ監督曰く、「映画はより民族的であるほど、より普遍的になる」。そして、画面に広がる壮大かつ厳しい自然のダイナミズムが素晴らしい。