紙の本
わかりやすい議論
2021/06/29 11:35
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投稿者:コアラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いつもどおり多くのグラフや表を使って説得力のある議論を展開している。オリンピック後に不況になるとは昔から言われていたこと。それをグラフを使ってわかりやすく説明してくれている。そんな明白なことをわからない馬鹿者がこの国というか世界中に多すぎる。2022に北京で冬季オリンピックを開いたら習王朝も崩壊するんじゃないか。「経済学者がひた隠す近代経済史の大ウソ」は白眉だ。知らなかった。なるほど本をいくら読んでも一次資料のデータに当たらなければ本当のことはわからないのだなと再確認した。ううん,これだから社会科学の研究者は信用ならない。やっぱ文系大学いらないよね。
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かれこれ20年以上、新作が出るたびに追いかけている著者の一人である、増田悦佐氏の最新作(2018.5現在)です。二度目の東京五輪が開催される2020年前後に不況になると、多くの識者が述べていますが、増田氏も、恐怖の三重底(超長期、長期、短期)が世界を襲うと述べています。
その中で資産を守る知恵を最後の部分で述べていますが、何かを買っておくならば、昔からの彼の論調である「ゴールド」のようです、日本は世界で最も安くゴールドを購入できるというのがその理由のようです。しかし、世界が金本位制に移行するとなれば、私が思っていたのとは逆でしたが、手放した方が良いとのことでした。
ビットコイン初めとする仮想通貨との付き合い方が今後は大事になってくると書かれています。購入すれば儲かる、という書き方ではありませんでした。さらに、これから株式会社が手仕舞いになっていく(前兆として今見られるのは、自己株式購入による株価つり上げ、株価が上がっているのは一部の独占企業のみ)更には、人工知能は単純作業よりも、経営などの今まで高付加価値な仕事と思われている部分での置き換えが早いというのは、私としては納得できました。
あと社会人生活を何年続けることになるか、わかりませんが、会社に勤めている間に、必ず人工知能と関わっていくことがあると思います、人工知能を排除するのではなく、上手に共存していくには自分はどうあるべきか、どう変化すべきかを考えさせられた本でした。
以下は気になったポイントです。
・投資見合う収益がない「生産高」を投資した価値が存続するという前提で見れば、中国の経済はあれだけ大きくなる。これを欧米や日本がやっているように、寄与しなかったものを除却する作業を正直に行っていたら、中国はすでにマイナス成長になっている(p31)
・ブラジルの貨幣価値は、1986年から94年までの累計でも、2兆7500億分の1、そして、1967~94年では、2750兆分の1になったが、経済は大きく縮小していない(p45)
・2020年の東京五輪後の不況はたんなる不況にとどまらず、過去約500年にわたって発展してきた近代市場経済が史上初めて経験する、3重底になると予想される。4年ごとの短期、アメリカで50年ごとの長期、84年に一度起きてきている21年にわたる超長期不況の大底(p70)
・2020年の日本は、2007~2027年の超長期大不況、2020年をピークとするアメリカの政治暴力サイクルの頻発期、そしてオリンピック不況をすべて経験する史上初の国家となる(p72)
・東方からの奢多品貿易ルートをオスマントルコに抑えられてしまったイタリアンの都市群(ベネツィア、ジェノバ)は、オスマントルコに食い込んでこのルートから得られる利益を守る方針をとる、欧州で唯一、イベリア半島の西端のポルトガルはギャンブルとして、アフリカ南端回りでアジアへの新航路開拓に乗りだした(p82)
・オスマントルコが欧州を攻略した16世紀の頃の欧州の中心は、パリやロンドンではなく、神聖ローマ帝国の首都で、地理的にも欧州の中心である、ウィーンであった。東ローマ帝国滅亡から、第一次ウィーン包囲に至るまで、深刻な懐疑を余儀なくされる人がでてきた、地理上の発見・プロテスタントの宗教改革がほぼ同時に起きたのは偶然ではない(p83)
・略奪して欧州に持ち帰ればすぐに儲かるような貴金属のない土地でも、その土地に適した生産活動をすれば自分たちも豊かになり、自国も栄えるはずだと考える、オランダ・イギリスが台頭してきた(p85)
・イギリスがスペインの無敵艦隊を破ったのは大して意味のある敗戦ではなかった、問題はその後も延々とオランダのプロテスタントを軍事的にも宗教的にも打ち破って、カトリックに再改宗させるために巨額の資金を浪費し続けて、返済できない借金を背負ったこと、1世紀で10回以上も国家破綻をした。ドイツの二大銀行家は没落、スペインへの貸しが多かったジェノバはヴェネツィアに覇権を奪われた(p89)
・インドでは、綿紡績・織物工業の熟練工たちの手首を切り落としてまで、インドの大衆がイギリス製の工場で量産した綿織物に依存せざるを得ない状態を創出している(p94、107)
・奴隷解放という立派な目的のためにイギリス政府が補償金を支払った相手は、黒人奴隷ではなく、奴隷という私有財産を解放しなければならなった奴隷所有者や奴隷商人であった、補償額はイギリス国内生産の約3%、政府支出の40%、これは、20世紀の2度の世界大戦からの復興費用よりも大きな負担であった(p109)
・アメリカが1837-57年の長期不況から立ち直ったのは、1861年から始まった南北戦争で徹底的な焦土作戦により莫大な復興需要を作り出したから、奴隷解放は後付けの議論、1861年開戦、1862年大陸鉄道建設宣言、1863年奴隷解放宣言という順番が物語っている(p111)
・1921年に作りすぎて営業赤字に陥っていたGMは、生産台数を4分の1の100万台にせよと命令した。この計画を実施しても他社にシェアを奪われる心配がなかったのは、2番手の単品生産のフォードに対して、フォードT型を増産したら、類似車種を低価格で売りまくってつぶす、という脅しが効いたから(p114)
・アメリカの株式市場全体が、将来の収益期待で動くのではなく、すでに閉店セールに入っている。デパートシアーズが1株10ドルで大底を打ってから、自社株買いや借金による増配を始めると再上昇し、一時は140ドルまで上がった、そして下がるまでに13年以上かかっている。これから考えると、アメリカ閉店セールは20年はかかる。「自社株買い+配当+買収合併」が、「設備投資+研究開発費」を超えたのが、2004年なので、閉店セールの終わりは、2020年代半ばと予想できる(p127)
・1820年は、アンドリュー・ジャクソンが、フロリダに逃げ込む黒人奴隷の逃亡を阻止するという名目でスペイン政府軍を叩くだけではなく、フロリダに住んでいたセミノール族という住民部族をどんどん殺していた(p135)
・1870年は元奴隷だった黒人たちに対する暴力事件が増えた時期、奴隷でないので懐は痛まないし、持ち主に賠償請求される心配もない、北西部や西海岸では中国人労働者に対して行われていた(p137)
・イギリスは1807年に国内での奴隷貿易とイギリス本土への奴隷輸入を禁止したが、すでに所有している人は保有してい良い、国外での奴隷貿易も禁止しなかったが、1833年には海外での貿易も禁止した(p158)
・イギリスにおいても実質賃金が一番伸びていたのが、1870-90年代、この時期をなぜ大不況というかの理由として、1)伸びていたのは新興企業家(工業)であり、貴族や地主にとっては大不況、2)権力を握っていた人に、経済学者はなびく、3)危機状態でないと革命を起こせない人達がいた(p173)
・AI化で消滅する可能性が高いのは、単純労働よりも、比較的高い知的能力を必要する、高給取りの仕事である、そのほうが得意分野である(p219)
・投資に対して、何をすべきでないかは、不動産は何があっても住み続ける気で買う家と土地のみ、株は買うな、何をするかは、1)金(ゴールド)とどう向き合うか、2)暗号通貨にどう向き合うかに絞られる。現在、1980年初頭の価格より安く金を買える通貨は日本円のみ、もし金本位制が採用されると思ったら、金は買わない方が良い、すべて売却すべき(p248、252)
2018年5月27日作成
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1807272020年恐怖の三重底☆☆ 増田悦佐
書名はおどろおどろしいが、内容はクォリティ高い
体系的・論理的はもちろん、独自の視点・データ多い
「金融資本主義の終焉」という点は同感
管理通貨制度はBSの爆発的拡大をもたらし、
最終的には制度崩壊する その日は近い
問題は「BSの統制不能」がなぜ生じて、
次の世代、新しい決済・通貨制度はどう生まれるのか
→著者は、①金②仮装通貨
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