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ゴールドマン・サックスのクオンツからITスタートアップ、買収によりフェイスブックに、と華麗な転身を遂げた著者の半世紀。
ちょっとシニカルで饒舌で、テンポの良い語り口に対して翻訳も読みやすい。
普段何気なく目にしているインターネット上の広告というものについて、誰がどういう基準でだしているのか、という説明も十分されていて好奇心も満たされる。
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はー面白かった。ウェブ系でスモールチーム経験があれば楽しめるはず。性格は悪そうだけど、口だけじゃなくて本気で何かをやった人の話には惹きつけられるんだと思う。
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めっちゃ読むのに時間かかりました。
私がベンチャー企業で働くわけでもなく、IT関連の仕事でもないので正直専門的で難しいなぁと思う箇所もあったけれど
結論は面白かった!
色んな世界を知れるのはやはり面白い!
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著者のゴールドマンサックスからスタートアップ時代を描いている上巻。
自分で立ち上げたアドグロックで創業メンバーとの衝突や前職のCEOからの嫌がらせなど、スタートアップならではの問題が印象的だった。また、最後には衝撃の展開も…。
著者の教養の深さによる文章表現の豊かさと赤裸々な語りによる没入感を楽しめる一冊だった。
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【感想】
上巻と下巻を両方読了。「華々しい世界ってわけでもないんだなぁ」というのが率直な感想だった。
シリコンバレーは一言で言うと「カオス」だ。なんでもありの無法地帯。勤めているエンジニアはスマートとは程遠いテックオタクの集まりであり、プロダクトとコードにしか興味のないギークが、今日もドタバタと社内を混乱させている。
シリコンバレーのエンジニアというと、世界一の頭脳職である。それゆえお洒落なオフィスで優雅に働いているんじゃないかなぁと想像しがちだが、それが全くの幻想だということをわかりやすく教えてくれた。
「社内のどこへ行っても、情緒面で不器用な若い男のギークたちであふれている。そのなかにおそらく一割ほどだろうか、若い女性がぽつぽつとまぎれこでいる。さて、どんな間違いが起き得るだろう?性的にも法的にも地雷がたくさん埋め込まれたこの状況で、フェイスプックはいちいち細かな決まりを設けて取り締まるのでなく、基本方針を一つ定めるやりかたを選んだ。言葉を選んで、しかしはっきりと、人事部の男性社員はこう言った。同僚を一回デートに誘うのはOK、だがノーと言われたらノーであり、それ以上誘ってはならない。一度誘ったらそこまで、それ以上やると制裁の対象になる、という」
「絵心などないギークたちが、人生で初めて白いまっさらな壁というキャンバスを前にして描きはじめたのは、線と丸だけで描いた悲哀の感じられる人間の絵に大きな吹き出しがついて、フェイスプックの社風をネタに笑えないジョークをつぶやいている。つたない花や動物の絵は、三歳児が描いたなら親だけは「上手ねー」と言ってくれるであろうレベル。
週末、ザックはふたたび全社あてのメールを発信した(あるいはフェイスブックの全社員向け社内グループに投稿したのかもしれない)。要点はこうだ。「みんながアートを創作してくれるものと信じて託したが、やってくれたのは破壊行為だ」まあ事実そのとおりだった。オフィスは今や世界でもっとも前途有望なIT企業というより、ミッション地区の路地裏にしか見えない。いや、それ以下だろう」
とまぁ、やっぱり人には「コード向き」「アート向き」が存在し、社交的か内向的かも人によってバラバラなのだ。そして、この「どこもかしくも変わった人間がいる」というのがシリコンバレーの強みであることは間違いない。
そんなモンキーたちばかりの世界で、筆者は超がつくほどのエリートだ。3人の仲間でスタートアップを立ち上げ、歴戦の投資家たちと手ごわい交渉を重ねながら資金を獲得する。3人のチームで開発した「アドグロック」をツイッターに売却し、自身はフェイスブックに入社。FBXというアドエクスチェンジを開発した後、Facebookを去っている。
とても順風満帆な人生……とならないのが本書の面白いところ。
筆者の生活は、スタートアップ時代から一日16時間にも及ぶ仕事、仕事、仕事の連続。アドグロックを立ち上げた仲間とは裏切りに近い形で袂を分かち、子どもをもうけたパートナーとは離婚。養育費がかかったストックオプションの受け取りに気を揉みながら、最後は組織に潰���れて事実上のクビ宣告を受ける。自身はフェイスブックでの社内政治に巻き込まれたあげく会社に捨てられ、かつての仲間はツイッターでのどかに暮らして多額の報酬を受け取っているという、何とも皮肉な結末で終わるのであった。
こうした恨みもあってか、筆者のフェイスブック評はなかなか辛辣だ。
「フェイスブックには、本気で、本当にもう心底から本気で金のためではなく、大人も子どもも地球上のすべての人が青枠に縁どられたフェイスブックのページを見るようになるまでたゆまず進むのだと心底本気で思っている人間が大勢いる。これは考えてみると単に欲得で動くよりもよっぽど怖い。欲深い人物はかならずなんらかの値で買い上げられるし、どんな動きをするか予測がつく。でも本気で狂信的な人間はどうだろう?どれだけ金を積んでも落ちないし、狂気の構想のもとで自身も周囲も何をするかわからない。これが、マーク・エリオット・ザッカーバーグという人物と、彼が作り上げた会社の姿なのだ」
「フェイスブックは方針も雰囲気もナポレオンが支配した帝国に似て、宮廷政治の例にもれず、周辺でさまざまなはかりごとやドラマが繰り広げられる。皇帝に近い位置にいれば、それがすなわち組織におけるその人の力になる。フェイスブックを支配する青年皇帝の目の届く範囲に入り込めば、そうと明言しなくても担当プロダクトに最高レベルの恩恵を与えられ、会社の後押しが手に入る。エンジニアを割り振られ、ほかのプロダクトを中断したり押しのけたりしてもらう優遇を受け、何より自身が宮廷のような帝国のなかに定位置を確保できるようになる」
本書は、こうした筆者のウィットに富んだ皮肉がなんとも痛快で面白い。また、IT業界における内情暴露だけでなく、スタートアップがいかにして資金調達に奔走するかや、インターネット広告がどのように収益を上げ(どのようなロジックで広告主から利用料を取り)、それがどうやってユーザーの注意を引きながら欲しいと思うアイテムに手を伸ばさせるよう設計されているか、などが詳細に語られている。デジタルマーケティングの手法部分も併せてとても読み応えがある作品だ。
ただし、エッセイとしては内容が相当に難しい。デジタルマーケティングの経験者、そしてスタートアップの立ち上げと資金調達の経験者でないと理解が追い付かないところが多々ある(実際、私は大部分がチンプンカンプンだった)。業界の実情をふんわり味わう読み方もアリかもしれない。