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書き下ろし
漫画家の明日香は、父母の離婚後二十数年会っていなかった父親が亡くなって、病院だった家屋敷を遺産として受け取ることになり、屋敷内の片づけをするうちに自分と父親との関係、祖父母のもとでの家族関係、母や兄との関係、恋人との関係を見つめ直すことになる。
祖父や父が兄を選んで自分を選ばなかったことに鬱屈を感じ続けてきたが、凡庸な父もそうだったのではないかと思い至る。また面倒を見ていた年下の恋人が自分のもとを出ていこうとしたときに暴力をふるったことで父親の血を意識する。父が自分の作品を読んでいたこともわかり、最初は拒絶感を持っていた屋敷が慕わしいものへと変わっていく。
自分が書いてきた作品も、「私みたいな大人や子供を一人にしないために漫画を描いていたんだ。」と気づき、「愛を手放すことについて、ただ悲しい以外の感情にたどり着きたい。」とああたな境地を目指していく。
このあたりは作者と重なるのかな。
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著者の特徴である生々しい表現やファンタジー要素は薄く、むしろ漫画家が主人公という自身を投影したかのような現実的な設定。そこで描かれるのは家族という呪い。家族の在り方が変わりつつある現代日本において“正しい家族”なんて概念は成立するのか?坂元裕二や是枝裕和に通じるテーマを感じた。
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重苦しい家の,家族の呪縛.愛に飢え愛を求め愛に苦しむ.ではその「愛」とは何だろう?ということを,父の遺産を相続し古い館を整理していく中で,クッキリと浮かび上がらせていく手法は見事.幽霊を探す男の子の存在もとても自然だった.そしてその心の変化が,漫画作品に結晶するところ,ゾクゾクした.
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家族という縛りの重苦しさを感じながらも、一気に読んで面白かった。
家族とは、好きときらいが絡まって苦しい、でよく言い表されていると思った。
古い屋敷を片付けながら家族を考え、家族の縛りから解き離れていく感じがよかった。
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図書館で借りた本。
幼いころに別れた父親が亡くなった。遺産として屋敷をもらった娘明日香は、なぜかほかの親族は屋敷に入れないようにとの遺言を守り、1人で(彼氏と)屋敷の片づけを始めていく。
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思っていたよりもスルスルと読めたけれど
考えれば考えるほど難解な気がしてくる。
「いたのに不在」なのか「いるのに不在」と思っているのか
「あったのに不在」なのか「あるのに不在」か
不在なのは人なのか、眼には見えないものなのか
考えると沼にはまっていくよう。
年下の俳優志望の青年を養う明日香が
ことばの端々に嫌な奴感がでてきて
最後は嫌な奴やん!となるのが凄く上手いと思った。
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2018.10.11.以前一冊読んで苦手と思った彩瀬まるさんの作品。前に抱いた、なんで独りよがりな人なんだろうと思ったが、姉に勧められ、そうじゃなかったら読まなかったろうなと思いながらすすめられて読んでよかったと思った。
いい年になって親からの愛情を受けられなかったから云々というのはおかしいと兄からたしなめられる主人公、本当にそう思った。最近流行りの毒親小説に辟易している私にとって大変新鮮な切り口だった。
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疎遠となっていた父の死後、個人病院だったお屋敷を相続することになった明日香。
明日香の祖父の代から続くお屋敷の片付けは、自分自身と向き合う作業になって行く。…
漫画家として成功者の立場で、若い編集者と接する姿や、自分がパトロン化しつつある恋人冬馬に対する後半の態度など、明日香の問題行動が痛々しい。
お屋敷の片付けをしながら、選ばれなかった自分という過去を切り捨て、父の本当の思いを知ることになる過程が丁寧に描かれる様子は、とても好みでした。
緑原、冬馬と、また縁がつながりそうなラストは、嬉しいエンディング。
斑木アスカのこれからが楽しみでした。
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明日香の心の奥底には父親がおり、潜在意識の中に入り込み、本人ににはわからいまま、父親と同じ行動をしている。
【本文より】
愛で結びつけなかった私たちは、これからもこの愛なき場所で、何度となく、顔を合わせるだろう。挑み、競り合い、慈しみながら、たった一人とたった一人で。
不思議なことに私自信にはお金を使って何かをしたいという具体的な欲望が見あたらない。少し無理をしてでも叶えたいという欲望がない。
だからこそ冬馬にお金を使って喜ばせるのが好きだ。彼の喜びが、まるで私の喜びであるように感じる。やっぱり、愛しているのだろう。
私は冬馬を愛している。
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主人公アスカはそれなりに売れている女性漫画家、男優の卵冬馬とヒモを飼うように同棲しているが、父親が死に相続として過去住んでいた屋敷の始末をしだしてから、それなりに平和な生活にザワザワと波が立ち始める。
ストーリーは正直いうと凡百なもの。それこそ昼ドラとかに転がっていそうな、ありがちな愛情に飢えた女性の転落と復活劇。しかし、綾瀬まるが描くと上手さで読み応えが出てくるねんなぁ、さすがである。
「貴方のためにしてあげる」ほんま、この気持ちって不幸の元なんだなと…なのに、この気持ちって居心地がよい。酔い心地が良くて酔い醒めの悪い悪い酒のようなものである。
誰かのために何かをしたくなる気持ちは分かる。が、その気持ちが「してやってる」に発酵した時は要注意。その後の展開を考えると止め時なのかも知れない。
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漫画家の主人公が突然、全く関わりのなかった父の死をきっかけに遺産整理を行い自分と向き合っていく物語。
ハッピーエンドというよりはまだ、これから物語が続いていきそうなラストでした。
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不在。
彩瀬まるさん。
家族という縛り。劣等感。理想。
自分を幸せにできるのは自分しかいないんだ。
おもしろかった。
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フレーズはいいなと思うものもあちこちあるのだけれど、全体としては中途半端な印象。漫画家とか年下の演劇青年の恋人とかずっと会ってない父親とかお屋敷とか古いスタインウェイのピアノとか、設定はこれでもかと少女マンガ的で、そのせいかヘビーな感じはあまりない。かと言って少女マンガ的な世界に徹するわけでもないし、暴力や愛憎などの黒いものが唐突な感じがする。欲張って盛り込み過ぎなのか、こなれていないのか。
彩瀬まるはいつもなんとなく気になって読んでしまう作家さんなのだけれど、これは読んでも読まなくてもよかったな。
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幼少期に満たされなかった思いに気付いて、前を向いて歩いていくお話し
所々、よしもとばななっぽいと感じる文体あり
親の期待通りに育った兄に
「お前、いい歳して、親に愛されたとか愛されなかったとか言ってるのって変だぞ」みたいに言われるけど。
愛された側はそんなこと考えもしないんだろうな。
愛されていないなんて感じることもなく育ってきたら、そりゃそう思うよね、気持ち悪いってなるよねー って思って読んだ。
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なんだろう、この居心地の悪い読後感をどう言葉にしたらいいものか。
いまのわたしにはどうしても明日香という人間のどこもかしこもが受け付けない。
なんて身勝手で傲慢で被害者意識強めの救いようのない女だと思えてしまう。(だからこそ多くのものを失うのだけど
でもこういう環境で育ってしまうとこういう人間ができあがるのかなと思うと、恐ろしくもある。
生まれてくる場所は選べないのに。
選ばれなかったことを明日香はずっと忘れられないのかな。
わたしにはとうてい理解できない思考と行動と発言ばかりで戸惑いっぱなしの読書タイムだった。