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以前に読んだことがあったのに気付かず手に取ってしまった…。
でも内容もおぼろげになっていたし改稿箇所があったりして、そして何より樋口有介作品に夏の印象を持っている自分としては、時を経て再読しても面白かった。
生意気で気怠げな主人公は、樋口作品のそれとして「いかにも」な感。
幾人もの女の子との会話はスピード感あるのがいいよね。
まあ、そういうところが若干は小賢しい感じも受けるのだけど、そういう部分の未完成なところも主人公としての魅力なのかな。
その主人公と関わりを持つ幾人もの女性もまた魅力か。
ここは樋口作品としては珍しい部類に入るくらいに関わりがあるような。
登場数の多さというか。
しかしそういった設定も、小笠原という閉じた世界を象徴するために必要なことだったのかもなー。
誰もが、誰もを、知っている(知らない)というような。
今作、探偵モノではあっても推理モノでは無いよね。
事実は最後に怒濤のように披露され、エンターテインメントとしてはそこに至るまでの探偵の行動にあるという。
そしてその探偵にしても、真たる探偵は早々に舞台から降り、その探偵の尊厳?価値?正当性?を証明するために奔走するのが主人公、と(奔走はしてないか)。
今作が最初に上梓されてから17年経っても、作中で触れられている空港は小笠原に出来ておらず。
ちょっとググったらようやく建設案がまとまりかけているようなところ。
飛行機が小笠原を結ぶようになれば今作で描かれたような世界は無くなるのかもしれません。
そうなる前に行ってみたいですなあ。
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古文書を繙くと、どうやら2015年に
一度この本を読んでいるようだが...(^ ^;
全くもって記憶に無し(^ ^;
まぁ、だいぶ加筆訂正した、とのことなので、
印象が変わっているに違いない...(^ ^;
作者お得意の「韜晦した若者」が主人公。
二年ぶりに帰省した小笠原の父島で、
様々な事件に出会い、結果的にその謎解きをしていく。
様々な出会い、別れ、邂逅があり、
「余命幾ばくもない初恋の女性」のエピソードが、
通奏低音のように悲しみとノスタルジーを奏で続ける。
やり場のない怒り、無力感、虚無感...
刹那主義的に生きながら、悩み続けている主人公。
彼を取り巻く小笠原の人々がまた良い。
豪快な海の男を気取りつつも、小心者の漁師や、
働き者の旅館の娘、飲み屋のマスターとバイトの女性、
かつてエリートで心を病んでしまった男等々、
実にリアリスティックで、「それぞれのドラマ」を生きている。
また小笠原という、一般的には「陽」のイメージで
語られがちな「南の島」でありながら、
実は閉塞的な特殊な状況が作品に活きている。
「逃げ場のない」島は、縦にも横にも窮屈なのだ。
若い頃ロングで小笠原に滞在したことがあるので、
フェリーが出てしまった後の「虚脱した感じ」とかを
肌感覚で思い出せて、余計に感情移入。
ちょっとした描写が「そうそう」って思える。
巻末の解説を読んで、「以前のバージョンとは、
主人公のセリフがこう変わっている」という部分を読んで、
初めて「あ、このセリフ覚えてる」と思い出した(^ ^;
このセリフの変化によって、主人公の「立ち位置」が
前版と今版とで全く変わっている訳だが...
例によってミステリなので、細かくは述べるまい(^ ^
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樋口有介先生の夏の描写はとてもいいですね。
小笠原の空気やそこで暮らす人々の様子が伝わってくる。
親しかった友人たちの変化、恋模様など切なさを感じられた。
夏になると読みたくなる。