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『#中国経済成長の罠』
ほぼ日書評 Day348
中国経済は、金融危機懸念という段階から、ハードランディングも想定しないといけない時代に入ったという。
リーマンの時とは異なり、同国の金融は直ちに世界各国と直接のつながるものではないという相違点はありつつも、その規模の大きさが、不測の事態のインパクトの大きさに直結する。「最も危ない銀行」と名指しされる「中堅銀行」である中国招商銀行の国内外の支店は1830店舗に及ぶ(p.40)。平成30年の都銀5行の有人店舗数が合計で1772、それを超える規模だ(平成元年は13行、3412店舗)。またこの1行で97兆円相当の余震規模を持つ。
地方不動産への迂回融資のメインルートたる融資平台を始めとするシャドーバンキングの仕組みは、かつての日本のノンバンクや、サブプライムローンとも似た様相を呈してくる。
一方で、中国は2015年頃にはルイス転換点を越えたとも言われるが、バランスシート不況の懸念が高まる中、中央政府による経済へのグリップ低下も気になる要素だ。
ただし、最悪のシナリオは、同国のバブルが崩壊し、深刻な世界同時不況に陥ることなのだろうか。個人的妄想であれば良いのだが、経済破綻をきっかけに同国が、社会コストの軛にとらわれることなく、環境汚染や軍事行動等、従来型民主主義国家の枠組みでは「禁じ手」だった手段に訴えるようなことは、起きてほしくないと切に願う次第である。
なお、所々、初歩的な誤植も散見されるが、文章自体は、この手の本にありがちな持って回った表現がなく、ひじょうに読みやすい。上記のサマリーに間違いがあった場合には、評者の経済分野での知識不足によるものと、ご容赦願いたい。
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