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二巻では、ついに帰宅を果たしたアンジェリンらパーティとベルグリフのトルネラでの田舎暮らしが描かれた前半と、その帰路にて遭ったボルドー伯領内での一幕が描かれている。
この巻における白眉は、やはり前半におけるベルグリフの教導だろう。無敵に近い力を持ち、それがゆえに自然と驕慢さを持ちつつあったアンジェを叱咤し教導するシーンは、この物語らしい良いシーンだった。
邪教をもって扇動する少女シャルロッテと従者のビャク、若いながらもボルドー領を富ませる名君ヘルベチカとその姉妹のセレンとサーシャ。ボルドー伯爵に気に入られたベルグリフがどうにも気にくわない若き家令のアシュクロフト。
突飛ではないが、魅力的なキャラクターたちに彩られて、物語は起伏に富んで描かれている。良い一巻であった。
評価は星五つ。心を鬼にして教導した前半のベルグリフと、覚悟を決めて成長した後半のヘルベチカを主に評価している。
書籍版書き下ろしの「EX 姉妹」や初回版限定特典の「夜のともしび」もまた良かった。特に前者は、物語上ではその心情が詳らかにされていないセレンを描いた良短編である。
また、表紙からしてそうであるが、toi8 さんのイラストもまた味わい深く魅力的である。
良い書籍化が進んでいて、読者としては大変喜ばしいところである。