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まさに一大叙述詩と言っていい作品です。
沖縄を舞台にした、戦後間も無くから、あの
「コザ暴動」と言う歴史に刻まれている事件
までを、3人の男女の人生をたどることによって
本当の姿が綴られています。
戦後から今の今まで基地の街である沖縄は
結局何も変わっていないことを思い知らされる
一冊です。
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戦後の沖縄,生きていくための戦果アギヤー.オンちゃんを軸に回っていた世界が嘉手納基地に忍び込んだ夜にオンちゃんを失って,幼馴染の3人の世界が変わる.刑務所から出て警官になるグスク,刑務所からヤクザ,テロリストと変貌するレイ,そして教師となるヤマコ.それぞれがオンちゃんを求め,それが自由な沖縄を求める心と深く結びついて,アメリカと日本の駆け引きに揺れる沖縄を疾走する.踏みにじられてきた人々の祈りや怨念とスパイもののような謎を横軸に,3人の駆け抜けた青春を縦軸に織り成した壮大な物語.最後まできちんと面白かった.
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アメリカ占領下の沖縄で3人の男女が翻弄されつつも生きていく様を描いた・・・なんか陳腐な紹介になってしまったな。
物語も面白いんですが、その当時の沖縄の人々や生活が非常に興味深かったです。領土としてはアメリカでありながら沖縄人としてどう生きていたのか。明るいながらもどこか諦観じみた雰囲気。読んでいてどうしてもあの沖縄の美しい海が背景として浮かんでくるので、まるで天国のような場所で鬱屈した生活を強いられるという、どこかこう、ディストピア感というか。
そして3人の生きざまを描く根底にある「消えた英雄オンちゃんの謎」というのが物語にしっかりとした芯になっているように思います。オンちゃんの生死やあの夜にあったことは?というミステリがただの時代筆記ではない面白さを与えているような。
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何ておもしろい!冒頭からぐいぐい引き込まれる。実際の事件に重ねられるところでは,「墜落事故」とかとしか認識していなかった,そうよねそういう実態があるよねと反省させられる。いろんな場面で映画を観てるみたいに情景が浮かぶ。厚いだけでなく熱いという斉藤美奈子さんの言葉どおり。結末が分かった上で最初から読みたいけど,さすがに厚いので,文庫が出たら勝って読み直そうかなと思う。
書いたのは東京の人なのかすごいなと思いながら読んだけど,途中から,沖縄の人じゃないから書ける本なんじゃないかなと思った。根拠は説明できないけど。
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「沖縄の戦後の歴史を、ちゃんと知っとるかね?」
戦果アギヤーという言葉も初めて知った。
「あんたら、そんなことも知らんわけ?」
三人の若者が、コザの街を駆け抜ける。
その魂の熱さと疾走感。
日本(ヤマトゥ)とアメリカーにぼこぼこにされても
嘘ばっかつかれても、
それでもへこたれず、走る。
本自体が、熱を持っていて、持つ手が火傷しそうな錯覚さえ。
くしくも翁長沖縄県知事が亡くなった日、読み終わる。
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第九回山田風太郎賞受賞作。戦後の沖縄が舞台。兄であり友である”英雄”を失った幼馴染のグスク、レイ、ヤマコ。グスクは警官、レイはテロリスト、ヤマコは教師になり、各々、占領下、英雄を追いかけながら、奪われたものを奪い返そうと、嵐のように駆け抜ける。三人の友情とともに、沖縄の信仰について、実際に起きた戦闘機墜落事件、米軍車両死亡交通事故、暴動等、沖縄の悲しい現代史もじっくり語られる。ミステリー要素もあり、読みどころ満載。登場人物の喜び、悲しみ、強い思いが描かれながら時は進み、どこを読んでも熱い、熱風を感じる。圧倒の一冊。
なんくるないさーの陰には歴史があったのねと沖縄をより深く認識できた。読んでよかった。
星は4.8くらいかなあ。
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戦後米軍政下の沖縄の歴史を追体験することになる。
作中の事件などは基本的に史実であり、米軍の圧政や日米の政治に翻弄される姿は、沖縄民からすれば理不尽以外の何物でもない。
作者は東京出身のようだが、本作を通じて流れる土着の薫りや沖縄弁の会話など、よく書けたものだと感心する。
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第160回直木賞候補になったことで、読んでみた。
著者初読みかと思ったけど、デビュー作である「地図男」を読んでいた。それ以来の真藤作品。
舞台は第二次世界大戦後のアメリカの統治下にあった沖縄。
米軍が我が物顔でのさばるコザの街で、米軍キャンプから、物を盗んでは、貧困の街に物資を与えていた少年たちは、自らを「戦果アンガー」と呼んでいた。その中でも、絶対的な信頼を得て、「英雄」とされていたオンちゃん。
しかし、キャンプ嘉手納を襲った時、オンちゃんだけが戻らぬ人となってしまう。
死亡も確認できず、行方不明になってしまったオンちゃんをひたすら慕う、親友のグスク、弟のレイ、恋人のヤマコの三人の人間模様を、沖縄返還の1972年まで描く。
本州で生まれ、育った人間である自分には、戦後の沖縄の混乱は正直想像もつかない。
今作を読んで、知ったこともたくさんある。
主要登場人物が、悲観的でないことから、躍動感あふれる文章で綴られるが、実際の歴史の重さが文章の隙間から見え隠れするような気がした。
他の方のレビューにもあったが、沖縄の人の「なんくるないさー」の言葉の裏にあった、いくつもの諦め。
私は、この言葉を誤解していたことを実感した。
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「なんくるないさ」
沖縄の人達がよく遣う言葉。
楽天的でおおらかな人柄・風土を表す素敵な言葉だと今までは思ったいた。
けれどこの作品を読み終えた今、意味合いが少々違うことを知る。
忘れなければ生きていけなかったから、それだけの目に遭ってきたから。
暗く辛い過去を吹っ切ろうとして交わされる言葉でもあったのだ。
そして度重なる弾圧を生き延びたおばあ達が口にする「なんくるないさ」の温かな重みに泣きそうになる。
物語全体の疾走感がたまらなくいい。
今を必死で生きる。
ただがむしゃらに、ひたむきに。
あの頃の沖縄を私は知らないけれど、目の前に浮かぶ映像が心を捉えて離れない。
泣き喚き叫ぶ声が耳の中でいつまでも渦巻く。
生きる、ってこういうことだ。
読めて本当に良かった。
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沖縄の現在の長閑な風景とは違う、戦後の沖縄を舞台にした若い男女三人の駆け抜ける時代の熱と疾風の物語。
沖縄の基地問題はニュースでよく聞くが、戦後の沖縄の人々の苦悩や葛藤が主人公三人の生き様をとうして
読み手にも熱く伝わってくる。
沖縄の魂はどこまでも熱くエネルギッシュで真っ直ぐだ。
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これぞ小説、物語の真髄か。
描かれているのは、大戦後から返還に至るまで、沖縄の20年間。
凄惨な地上戦を経験し、以降も理不尽な蹂躙に耐え続けた沖縄を舞台に、実際にあった史実を縦軸にして、実在の人物も交えながら、凄まじきスケールで当時の熱気が紡がれている。
正直、単語レヴェルでノイズのように沖縄の方言=ウチナーグチのルビが頻繁に振られていることもあってか、冒頭は取っつき辛かった。
随時、括弧で閉じられている”語り部”の合いの手のような呟きも、イマイチ意図が分からなかった。
が、それもこれも読み進めていくうちにつれ、この作品になくてはならない、不可欠な要素であると思われてきたから不思議なものだ。
物語としてのプロットはもちろんのこと、選択され綴られた言葉の質も相当なもの。
これだけのヴォリュームなので、あるいは過剰な修辞や蛇足的な書き込みが散見されてもおかしくはないが、今作に限ってはそう感じたところはなく、その場その場でふさわしい日本語が過不足なく並べられており、まるで韻文のような美しいリズムさえ伝わってくる。
折しも、今まさに辺野古の埋め立てを巡って大きく揺れている沖縄。
至らぬ言葉でこれ以上細かく感想を述べることは控えるが、この小説を読んで心動かぬことがあればそれはもう人間として嘘なんじゃないか、そう言い切ってしまってもいい類の稀有な大傑作だと思う。
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返還前の沖縄を舞台にした、暑くて熱い疾走感あふれる闘いの物語。
沖縄の人々の生き抜く力に圧倒されながら、改めて沖縄の痛みに思いを致した。
史実とフィクションを融合しながら、幼馴染の三人を中心に物語は進む。
物資を奪還するため米軍基地に忍び込んだ後、行方が分からなくなった、彼らが慕い、憧れ、尊敬する”戦果アギャー”の英雄オンちゃん。
彼はどうなったのか、その行方に、読者も頁を捲らざるを得なくなる。
読み終えたあともしばらく、沖縄の熱い息吹に取り囲まれたいた。
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うーん、面白いかどうか、微妙な感じ。沖縄言葉が一杯でちょっと読みづらい感じでルビは無視。結局最後にわかったことが、ずっと探していた答えが出て一応完結。盛り上がりにちょっと欠けていた気がするな。
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今回の候補作では本作がベストでした。ものすごい熱量を持った作品です。いやはやこれは凄かった。
最近の作品だと東山彰良『流』の印象に近いですかね。版元も同じ講談社ですし。
舞台は戦後の沖縄。
敗戦から7年後の1952年、サンフランシスコ講和条約によって日本が主権を回復した年、言い換えると琉球が本土から分断された年からこの物語は始まります。
戦勝国であるアメリカ軍が蹂躙するかの地で、軍から物資を強奪する「戦果アギヤー」と呼ばれるワル、いや英雄が台頭します。
しかし冒頭、嘉手納空軍基地に侵入した「戦果アギヤー」のリーダー格、オンちゃんがいきなり行方不明になってしまいます。
本作は親友のグスク、弟のレイ、恋人のヤマコを主人公に、オンちゃんを探す長い旅を描いた物語です。
シンプルなタイトルと分厚い装丁からは、これが勝負作だ!といった感じの気合の入れようが伝わってきます。
実際、20年分の話が盛り込まれているので密度は高いんですけど、ドライブ感のある語り口が心地いい流れを作っており、どんどん読み進めることができます。
瀬長亀次郎をはじめとした実在の人物、ゴザ暴動などの実際あった事件を織り交ぜながら、ミステリの雰囲気も漂わせつつ、物語は加速度をつけてクライマックスへなだれ込んでいきます。
こういう書き方をすると沖縄の方が不快に思われるかもしれませんが、こんなにもダイナミックで波乱万丈な物語が生まれる下地があるにもかかわらず、近年沖縄を舞台にした小説はあんまり描かれていような気がします。
(自分が知らないだけかもしれませんが。)
本作をきっかけに、沖縄の光と影について描かれた作品がもっともっと生まれればいいなあ、と思いました。
歴史書では決して描かれない戦後沖縄の物語が、ここにあります。
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読み終えるまで約1年かかりました(笑)
長かった。。。
僕には直木賞作品は、まだ早過ぎた。
文章は、語り部が話すような口調で書かれており沖縄の方言が満載で、大変読みづらかった。
進捗の90%を超えてからサクサク進めたけど、それまでは中弛みで面白くはなかった。
意地で読みきりました。