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2018/9/2〜9/13
読み応えがあった。重厚な物語。沖縄の、米軍の、日本の、沖縄における太平洋戦争後がどうだったのかを思い知らされる作品。事実に基づいたフィクションなのか、勉強不足の自分には明確なことは言えないけれども(やっぱり近代史を勉強しないとね)、この物語を知れて良かったと思う。
虜人日記のフィクションバージョンって感じか。
それにしても戦争は人をおかしくするよね。誰のためなんだろう。最前線に来る兵隊さんは、本国で恵まれていない、教育されていなかったり、裕福ではない。だから来る。そして人殺しをさせられ、頭がおかしくなって犯罪を犯す。戦争は誰のためなんだろう。
ほとんどの人が平和を望んでいる中、恐らく政治家や一握りの金持ちやらが仕掛けているのか。だとしたら彼らがほんとうの悪なのか(世の中単純ではないけれど)
それを防ごうと抑止力を実行する政治家は悪なのか。そうはではないと思うが、一般の人からは結局、十把一絡げとなって非難され…。本当に考えさせられるね。
登場人物の個性や取り巻く環境の変化や、恋沙汰なんかも絡み合って、面白かった。
ギブサーは怖かったなぁ。オンちゃん、ウタ、生きてて欲しかったよ。心の中で生き続けていくということなのか。
本は自分が経験できないことを教えてくれると改めて思った。感謝。
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戦果アギヤーたちの生き様を、返還までの沖縄を舞台に描いた物語。
伏線の張り方が見事だった。
沖縄という島の翻弄されて来た歴史の深さに打ちひしがれる。
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沖縄問題は深い。こんな歴史があったんですね。本土返還も地元の人は喜ばしいことばかりではなかった。世界に戦争なんてなければ基地問題もないのに。みんなが平和に暮らせる世の中になってほしい。
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あきさみよう!めちゃ面白かった。
沖縄をめぐる問題の見方が変わる。
悲劇的な状況なのに登場人物たちがどこか明るく楽天的。「あがひゃあ」「あがあ」という悲鳴もなんだかいい。沖縄の人たちのおおらかさやたくましさが伝わる。語りもいい。グスクというキャラクターがいい。嫁はんとのやりとりも最高だった。
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「キジムナーkids」を薦めてくれた友人に読了を知らせると、さらに推奨されたのが、この本。「キジムナーkids」の青春版、リアル版でもっと圧倒されたと。しばらく手を付けていなかったら直木賞受賞したりして、どんどん大きな作品になっていきました。同時に今年2月24日の普天間飛行場についての県民投票、4月21日には衆院沖縄3区補選が行われ沖縄の住民の基地についての想いも表出しています。やばいやばい、友人との再会前に読まなきゃ、と扉を開いたら、あれよあれよ、物語の中に引き込まれてしまいました。いや、物語というより神話でした。「キジムナーkids」は著者、上原正三の自伝的作品でしたが、本書の著者は沖縄出身ではないのに、このテーマを選び、この作品に仕上げた能力に驚嘆しました。受賞の言葉として「戦果アギヤーのように、フェンスを越えて戦果をつかみ取る書き手でありたい。」と言っていましたが、すごい戦果を持ち帰ったものです。テーマだけでなく、( )を多用し語り手の突っ込みや囃し立てを挿入する講談師のような文体、シンプルかつディープ、シリアスかつユーモラスな主人公たちのキャラクター設定、そして英雄伝説によってすべてが駆動する神話的構造を堪能しました。基地問題をもっと多くの人に知ってもらうために直木賞受賞はよかった、とは著者の弁ですが、そういう主題をこんなエンターテイメントできるのはすごい!読了後、熱に浮かされるようにハードディスクに録画しっぱなしになっていた一昨年のHNKスペシャル「沖縄 空白の1年 1945-1946〜“基地の島”はこうして生まれた〜」を見ました。この物語の前史にあたる発掘ドキュメンタリーでしたが、マッカーサーの「アメリカ軍による沖縄占領に日本人は反対しない。なぜなら沖縄人は日本人でないのだから」という言葉に、この問題の原点を見たような気持ちになりました。また平成の振り返りで前の天皇陛下の沖縄訪問の際の火炎瓶事件の映像が繰り返し流されましたが、これも沖縄の歴史をきちんと伝えないと日本と沖縄の溝は埋まらないのだと思います。アメリカに利用され、日本にも利用され、それでも前を向く沖縄の「なんくるないさぁ」スピリットだけ賞賛するだけではイカンと痛感。その中で、ラストの手紙に出てくる「あきさみよう!」という島ならでは感嘆詞に救われました。この本を薦めてくれた友人には「宝島、あきさみよう!」と伝えます。
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センカアギヤーにつじつま合わせのような終わり方をつけて欲しくはなかった。
アメリカーの横暴さ、ヤマトゥの身勝手さがウチナーの悲しみを終わらせない。同じようにこの物語も終わらない。
いつになれば沖縄は…。
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まさに一大叙述詩と言っていい作品です。
沖縄を舞台にした、戦後間も無くから、あの
「コザ暴動」と言う歴史に刻まれている事件
までを、3人の男女の人生をたどることによって
本当の姿が綴られています。
戦後から今の今まで基地の街である沖縄は
結局何も変わっていないことを思い知らされる
一冊です。
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戦後の沖縄,生きていくための戦果アギヤー.オンちゃんを軸に回っていた世界が嘉手納基地に忍び込んだ夜にオンちゃんを失って,幼馴染の3人の世界が変わる.刑務所から出て警官になるグスク,刑務所からヤクザ,テロリストと変貌するレイ,そして教師となるヤマコ.それぞれがオンちゃんを求め,それが自由な沖縄を求める心と深く結びついて,アメリカと日本の駆け引きに揺れる沖縄を疾走する.踏みにじられてきた人々の祈りや怨念とスパイもののような謎を横軸に,3人の駆け抜けた青春を縦軸に織り成した壮大な物語.最後まできちんと面白かった.
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アメリカ占領下の沖縄で3人の男女が翻弄されつつも生きていく様を描いた・・・なんか陳腐な紹介になってしまったな。
物語も面白いんですが、その当時の沖縄の人々や生活が非常に興味深かったです。領土としてはアメリカでありながら沖縄人としてどう生きていたのか。明るいながらもどこか諦観じみた雰囲気。読んでいてどうしてもあの沖縄の美しい海が背景として浮かんでくるので、まるで天国のような場所で鬱屈した生活を強いられるという、どこかこう、ディストピア感というか。
そして3人の生きざまを描く根底にある「消えた英雄オンちゃんの謎」というのが物語にしっかりとした芯になっているように思います。オンちゃんの生死やあの夜にあったことは?というミステリがただの時代筆記ではない面白さを与えているような。
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何ておもしろい!冒頭からぐいぐい引き込まれる。実際の事件に重ねられるところでは,「墜落事故」とかとしか認識していなかった,そうよねそういう実態があるよねと反省させられる。いろんな場面で映画を観てるみたいに情景が浮かぶ。厚いだけでなく熱いという斉藤美奈子さんの言葉どおり。結末が分かった上で最初から読みたいけど,さすがに厚いので,文庫が出たら勝って読み直そうかなと思う。
書いたのは東京の人なのかすごいなと思いながら読んだけど,途中から,沖縄の人じゃないから書ける本なんじゃないかなと思った。根拠は説明できないけど。
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「沖縄の戦後の歴史を、ちゃんと知っとるかね?」
戦果アギヤーという言葉も初めて知った。
「あんたら、そんなことも知らんわけ?」
三人の若者が、コザの街を駆け抜ける。
その魂の熱さと疾走感。
日本(ヤマトゥ)とアメリカーにぼこぼこにされても
嘘ばっかつかれても、
それでもへこたれず、走る。
本自体が、熱を持っていて、持つ手が火傷しそうな錯覚さえ。
くしくも翁長沖縄県知事が亡くなった日、読み終わる。
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第九回山田風太郎賞受賞作。戦後の沖縄が舞台。兄であり友である”英雄”を失った幼馴染のグスク、レイ、ヤマコ。グスクは警官、レイはテロリスト、ヤマコは教師になり、各々、占領下、英雄を追いかけながら、奪われたものを奪い返そうと、嵐のように駆け抜ける。三人の友情とともに、沖縄の信仰について、実際に起きた戦闘機墜落事件、米軍車両死亡交通事故、暴動等、沖縄の悲しい現代史もじっくり語られる。ミステリー要素もあり、読みどころ満載。登場人物の喜び、悲しみ、強い思いが描かれながら時は進み、どこを読んでも熱い、熱風を感じる。圧倒の一冊。
なんくるないさーの陰には歴史があったのねと沖縄をより深く認識できた。読んでよかった。
星は4.8くらいかなあ。
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戦後米軍政下の沖縄の歴史を追体験することになる。
作中の事件などは基本的に史実であり、米軍の圧政や日米の政治に翻弄される姿は、沖縄民からすれば理不尽以外の何物でもない。
作者は東京出身のようだが、本作を通じて流れる土着の薫りや沖縄弁の会話など、よく書けたものだと感心する。
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第160回直木賞候補になったことで、読んでみた。
著者初読みかと思ったけど、デビュー作である「地図男」を読んでいた。それ以来の真藤作品。
舞台は第二次世界大戦後のアメリカの統治下にあった沖縄。
米軍が我が物顔でのさばるコザの街で、米軍キャンプから、物を盗んでは、貧困の街に物資を与えていた少年たちは、自らを「戦果アンガー」と呼んでいた。その中でも、絶対的な信頼を得て、「英雄」とされていたオンちゃん。
しかし、キャンプ嘉手納を襲った時、オンちゃんだけが戻らぬ人となってしまう。
死亡も確認できず、行方不明になってしまったオンちゃんをひたすら慕う、親友のグスク、弟のレイ、恋人のヤマコの三人の人間模様を、沖縄返還の1972年まで描く。
本州で生まれ、育った人間である自分には、戦後の沖縄の混乱は正直想像もつかない。
今作を読んで、知ったこともたくさんある。
主要登場人物が、悲観的でないことから、躍動感あふれる文章で綴られるが、実際の歴史の重さが文章の隙間から見え隠れするような気がした。
他の方のレビューにもあったが、沖縄の人の「なんくるないさー」の言葉の裏にあった、いくつもの諦め。
私は、この言葉を誤解していたことを実感した。
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「なんくるないさ」
沖縄の人達がよく遣う言葉。
楽天的でおおらかな人柄・風土を表す素敵な言葉だと今までは思ったいた。
けれどこの作品を読み終えた今、意味合いが少々違うことを知る。
忘れなければ生きていけなかったから、それだけの目に遭ってきたから。
暗く辛い過去を吹っ切ろうとして交わされる言葉でもあったのだ。
そして度重なる弾圧を生き延びたおばあ達が口にする「なんくるないさ」の温かな重みに泣きそうになる。
物語全体の疾走感がたまらなくいい。
今を必死で生きる。
ただがむしゃらに、ひたむきに。
あの頃の沖縄を私は知らないけれど、目の前に浮かぶ映像が心を捉えて離れない。
泣き喚き叫ぶ声が耳の中でいつまでも渦巻く。
生きる、ってこういうことだ。
読めて本当に良かった。