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メディアによる報道だけでは知り得ない情報を
会得できるのが本書の強みである。
紛争地で医療活動に従事する中で感じた
筆者の心に痛み、苦しみ、悲しみ、
そして患者さんや現地の方と接することで
感じる喜びなどを真っ直ぐに読み取ることができる。
読み終えてすぐに人道援助に携わることは厳しいが、
同じ地球上に明日の命の保証が無い地域があり、
迅速な治療が受けられないため失われる命があるという
重大な現実を知り得るきっかけになる一冊である。
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安直なコメントを書くのを躊躇わせる。
文体は軽くてわかりやすく、読みやすいが、内容は大変重い。
学生時代の初志を貫くために、日本で看護師を何年も経験した後、海外留学。卒業後、現地の病院で何年も勤務し、看護士長にまでなったのに「国境なき医師団」に応募する。
そこまで著者を突き動かすものは何なのか。
そういう人たちばかりが集まる「国境なき医師団」とは何なのか。
赴任先で体験する戦地の現実は、経験した者にしか実感できないだろう。
苛酷で、非現実的だが、否応のない現実だ。
赴任先から短期間帰国する著者が見る東京の姿が、仮想的で、非現実的なのはやむを得まい。
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涙を禁じ得なかった。
自分の心がこんな風に動揺することに、驚いた。
初めは好奇心だった。「国境なき医師団って一体どんな人が?そしてどんなことをするのか?」
自分でも驚いたけど、読み進めてすぐに、
「私も看護師になりたい!人命を救わなくては…!」
という思いに駆られ、その30分後ほどには、体験してもいないのに著者の経験を追体験した気になって、この世界に憤りを感じ、「やってらんねーよ」と思った。(誠に勝手である。)
戦況下で目の前に血を流している人がいるにも関わらず、自分たちと外との間に絶対的な境界線を敷くという国連の塩対応は想像通りではあるが、でもやっぱりいけ好かないエリート集団然としていて本当に憎らしいとさえ思ってしまった。と、思いつつも私は今スタバでティーを片手にのんびり本を読んでいるんだけども。
同じ女性ということもあり、著者の失恋には一緒に心を痛めた。ライフプランも考えなければならないが、遠いところで救える命があることにも胸が痛む…。そんな崇高なジレンマを抱くことなどわたしにはないかもしれないが、でも国際協力の現場を志した身として人ごとではおれなかった…。
もし仮に私は彼女の立場に立てたとして、幸せだろうか?たしかに人命救助の喜びはあろうが、戦地に慣れてしまってはこの世界に絶望してしまうのではないか?自分の生をも憎むのではないか?余暇を興じる自分を責めはしないだろうか?
本書の末文のいくつかの疑問文がその葛藤をよく表していると思う。
現場の生々しい声、そして彼女の人生をも赤裸々に語ってくれているからこそ、1人の女性のこれまでを追体験できるような良著でした。
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「シリアで内戦が始まったのは、早くから知っていた。以前のシリアは独裁政権・監視社会だったものの、人々は自由に街に出歩き、生活も教育水準も高い豊かな国だった。
まさかシリアで内戦が始まるとは、当の国民も、思っていなかっただろう。ところが2011年の民主化デモから始まった騒乱は全く間に内戦へと発展した。」 p.87
独裁政権・監視社会は内戦が起きるリスクが高くなる。
病院が攻撃されたというニュースは何度も見た。
実際に現場にいた人の証言を聞くと、また違う衝撃がある。
どんなに心を痛めていても、安全な部屋からでは、実際に何が起きているのかなんて、これっぽっちも理解できてないんだ。
「中東の混乱を収束させるには、パレスチナ問題を解決しないと始まらない。それだけ複雑に絡まり合う世界の対立の根深さが詰まっているんだよ」 p.216
「広河隆一 人間の戦場」観たい。
川崎市の平和館で12月1日に自主上映が行われるらしい。まだFBに情報は載ってないけど。
http://ningen-no-senjyo.com/jyouei/?p=1211
すごくいい施設だから、もう一度行きたいとは思ってたけど、微妙に遠いんだよね。どうしよう。
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国境なき医師団で活躍されている看護師さんの手記。
すごく分かりやすく素直な文面で、現地の状況がストレートに伝わってきます。
今も紛争が絶えない地域の、ニュースや歴史解説では分からない、現地の人たちの生活や感情が分かるのが貴重です。
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看護師研究をする中で本書を取った。心動かされる内容に動揺しながらも、大切なことを伝えてくれるジャーナリズム本であると感じた。エルサレムでのエピソードが非常に考えされられる。国際看護学を学ぶ上で参考になるのかもしれない。
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色々と考えさせられました。
争いはホモサピエンスの宿命なのかもしれません。
争いのある環境では子供たちの健全な成長も阻害され、負の連鎖が続きます。
いつか平和な世の中が来るのだろうか?
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国境なき医師団で働く看護師さんが世界各地の紛争地での体験を語っている。それと共に、子供の頃にみた国境なき医師団のテレビをみて憧れ、看護婦になり、オーストラリアに留学して英語を学び、今に至る著者の生い立ちも。ニュースではアメリカ軍のシリア撤退が報道されているが、その裏で、きっと、今も、こんな状況なのかと思うと胸が痛む。
赤十字の作ったムービーはまさに本物だと思った。
https://www.youtube.com/watch?v=0OsMTS1pn00
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2018年56冊目。
読みながら手が震える、そんな体験を久しぶりにした。読まなければこんなにつらい気持ちにはならなかっただろうと思いながらも、これほど読んで欲しいと思える本も少ない。
「紛争地」と一言でくくってはいけない。ニュースでありふれた言葉としてとらえて、そこで終わりにしてはいけない。現場で本当に何が起こっているのか、その詳細を知って、怒りと、やり切れなさと、著者への敬意と、いろいろな思いがごちゃ混ぜになって、まだ整理できない。
正直近年、有名で大きな組織よりも、小さくても画期的な取り組みをしているNPOへの関心の方が強くなっていた。そして、この本も「国境なき医師団か」と、大きな興味を持たずにスルーしかけていた。
実際にこの本を読んで、そのことを大いに恥じた。世間にもてはやされずとも、最前線で泥臭く、最も必要とされているのに最も見過ごされている人たちのために、誰に知られずとも頑張っている人たちに心からの敬意を抱いた。
「敵の味方は敵」の構造の中で、援助従事者たちは決して安全な立場ではない。病院は爆撃の対象になる。限られた設備の中で、ある患者を後回しにしなければならないこともある。生々しい絶望と隣り合わせにありながら、いつもいつも理想を追えるわけではない。それでも、その場における最善を常に探し続ける著者や国境なき医師団のスタッフのみなさんに、心からの敬意を。
敬意という言葉しか見当たらない。
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”国境なき医師団”
その活動内容ははじめて仔細に知った気になる。おそらく、これが全てではないと思いつつも。
現場の様子は、ある程度想像のつくものだったけど、それをなにも特別ではない普通の一般の医療従事者だった著者が体験していくことになることがリアリティある。
普通の、というのは、本書の中盤に語られる国境なき医師団(MSF)に加入するまでの経緯から。優秀とか、エリートとか、よくできた医学生とかではない著者の半生が記されている箇所から感じたものだ。
また、MSFが、立場は中立というのは分かってはいたが、医療活動のみならず、
「証言活動も重視すること」
を団体の方針に掲げているのは意外だった。
医師と医療ジャーナリストによっての設立という経緯から、その発信力も大切なことは分かるが、その証言の中立を保つのは難しいだろう。
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国境なき医師団の看護師が8年間の活動を書いた本。
イラク、シリア、パレスチナ、南スーダンなど紛争地での活動を書いてくれているが、辛すぎる事実が多いが、どの地域でも犠牲になるのは無関係で丸腰の一般市民。
イラクではISISにより人間の盾にさせられて村に閉じ込められている人々が、噂レベルでの情報を頼りに地雷源を歩いて逃げてきた家族がいたり、空爆で自分以外の家族が全員死に、「死なせてくれ」と訴える女性がいたり、妊娠したまま負傷し、お腹で赤ちゃんが死んでしまっていたり。
地雷負傷者が運ばれてくるときは大抵親族で、先頭を歩いていた人が死亡、2人目が重症・・というように後ろに行くほど傷は軽症であることが多いとか。
MSFのスタッフも宿舎にいるときに当局の捜査を受けたり、寝ていても緊急で呼び出されたり、全然休む暇なく限界に近い状態で働いている。
大抵の国はMSFで人道支援の手続きをすれば、中立を保って活動できるが、シリアは許可がおりず、さらに病院が標的になるため、無許可でこっそり隠れるように活動していると書いてあって驚いた。
そして、そのひっそりとした病院も空爆を受ける。
手術の最中に空爆を受け、撤退命令が出たにも関わらず、執刀していた外科医と麻酔科医は何事もなかったかのように手術を続けていたとのシーンには何とも言えなかった。
「落ち着いて、この爆弾でYukoが死ぬときは俺も死ぬときだから。俺は怖くないよ。だからYukoも怖がらないで」
爆弾ごときで撤退する気が微塵もない人たちに、尊敬以外の他の感情がうまく出てこない。
南スーダンでは戦闘が始まり、他のNGOが撤退する中(命の危険があるから当然)、MSFと国際赤十字が残り、協力して活動したと。
赤十字は物資が豊富で、簡易テントでクリニックも作ってくれてとても助かったと書かれている。
それぞれの団体で得意な部分を補いながら活動できるのが理想。
しかし、毎日戦闘の音を聞いてると頭がどうにかなってしまいそうだと思う。
読んでいるだけでも、気持ち悪くなってくる。
紛争地の活動でよく言われる言葉が「怖いと思うものは帰国した方がよい。ただし怖さに麻痺してしまった者は一番に帰国させなくてはならない」だという。
自身でも書かれているが、白川さんはこのような状況になっていたのではないだろうか。
そもそも世界から戦争などなくなるのが一番いいに決まってる。
しかし、その戦闘地で自分も限界に置かれながら活動してくれてる人たちがいるから、助かってる命もある。
戦争をなくすためにどうすればいいのだろうと毎回考えさせられるが、答えが出ない。
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国境なき医師団に属した看護師の手記。それは著者が記されたものでもあり、同時に国境なき医師団のプロモートでもある。一時期はジャーナリストへの転向も考えたが、自身のすべきこと、できることを考え、看護師としての生き方を改めて選択する場面からは、更に「紛争地の看護師」として何をすべきかがクリアになったようで、文章にもその変化が感じられた。また、平易な文章で淡々と綴られる形式は読み易く、多くの人に実情を伝えるべき適切な形であると判断したからだろう。派遣から戻り、いわゆる日常生活もわずかながら綴られているが、平和は薄皮一枚で隔てられているだけであることを強く意識させる、強烈な一冊だった。
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この話は昔の話ではなくて今の話なんだよねぇ。そしてこの話の場所は小説で設定されたのでなく、現実の世界の話なんだよねぇ。
ちょっと、あまりにも、考えにくい。どうすればいいんだろう。
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情熱大陸で見たことがあったが、
あんなのは序章でも何でもなかった。
CMだったのだ。
この本を読んで、
現地でのスタッフの生活状況が分かった。
自分もこうなれるのか、
いつかこの境地に立てるのか、
全く分からなくなった。
呆然とした。
同時に勇気をもらった。
ここまで出来るならば、
私もやってみたい、やるしかないと。
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自戒の念を込めて問いを発してみる。
いま日本人のどれくらいが、世界中でこうした現実があるということを意識しながら生きているんだろう、と。
「知らなかったでは済まされないことがある」
小学生くらいのときにそう教わった。
クラスで陰口をたたかれている子がいることが問題になった時だったか。
それとも修学旅行で広島の平和記念公園を訪問するのに際して、平和学習をしていた時だったか。
いや両方の場面できっと言われたはずだ。
そして他の場面でもきっと言われてきたと思う。
その度にこの言葉は確かなリアリティを持って僕の胸に迫った。
「知らなかったでは済まされないことがある」
この本に書いてあることも「知らなかったでは済まされないこと」だと思う。
大学入学共通テスト、生徒の記述力をあげたいなら、こういう文章を読ませて感想文でも求めればいいのに。
この文章を50万人の受験生が読んでくれたら、少し世界が変わるような期待が持てるような気がする。
少なくともアルバイトの学生が採点できるための、形式的な記述問題なんかやるよりはだいぶ期待できる。
と思う。