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組織再編税制の専門家である佐藤会計士と税理士法人チェスターの創業者2名が専門特化型事務所経営のノウハウを解説。佐藤会計士は職員を雇わずに時給10万円のチャージレートを確立して個人事業を貫いているのに対し、税理士法人チェスターは100人を超える職員をかかえ資産税分野のナンバーワンを目指している。どちらのタイプを目指すかは読者の判断だが、読み比べると面白い。職業会計人には一読の価値あり。
P23
佐藤 あと、30代後半で独立する人に多いのですが、安定収入にこだわって下請けになってしまっていたりします。
例えばどこかの上場会社の下請け、どこかの会計事務所の下請け。そこで何百万という年収を確保して、空いた時間で他の仕事をとりにいくというスタンスが多すぎます。
これって安定収入が本当に安定してしまっているので、 ほかのところを頑張らなくなる。
荒巻 そこに甘えてしまう部分があると?
佐藤 例えば監査バイトで年収700~800万円もいったら、まあ真面目に働かないですよね。
本業のほうをおろそかにしても食っていけてしまうし、 それで結構稼げてしまうので。
荒巻 むしろ監査バイトのほうが高くなっていたりする。私も最初は監査バイトをしました。今考えるとありがたかったですが…。
そこはやはり独立当初の「本業で成長してやろう」というモチベーションが大事になってきますね。
P119
それでは、組織再編税制についての税務判断に悩んだ時はどうするのか。自分の専門分野であることから、自分で対応せざるを得ない。しかし、ビジネスの基本はクイックレスポンスである。回答を遅らせることは、信頼関係の破壊につながる。トーマツに勤務していた時に、上司から「悪い情報は早く伝えろ」と言われたことがある。間違った回答をしてしまったら、速やかに対応し、もし間に合わなければ、クライアントにきちんと謝るべきだからである。「間違った回答をした」 のではなく、「税務判断に悩んで速やかに回答できない」というのも、クライアントにとっては悪い情報である。自らが行おうとしている取引が、税務上の判断がグレーな内容だからである。それなら、あえてリスクを取るよりは、より安全なストラクチャーに変更するという判断もあり
うる。2日、3日と返事が遅れた結果、最終的に、「やっぱりわかりません」では困るし、「おそらく問題があると思います」 という回答なら、「それでは代替案を教えてくれ」という話になる(こういう場合には、「それなら、もっと早く教えてくれればよいのに」 とクライアントが思っている場合も少なくない。税務判断に悩んでいるというのは、それ自体がクライアントにとって有用な情報であるため、一刻も早くクライアントに伝えたほうがよい。
「手元にある情報だけでは結論が出せず、いろいろな情報を調べてからでないと回答できない」というのも、クライアントにとって悪い情報である。 いつもは早く答えてくれるのに、今回は時間がかかりそうだからである。それなら、どれくらい待つことができるのかをクライアントが判断してくれる。スケジュールを調整してみて、じっくりと考えてみればよいだけ��話である。
ちなみに、ほとんどの事案は、ぐっすり寝て、次の日になると、簡単に答えが出てしまう。1日くらいなら返事が遅れたとは思われないため、税務判断に悩んだら、 次の日にもう一度考えるというのも有効な手段である。
クライアントや提携先との信頼関係の構築のためにコミュニケーション能力が重要であるかのような誤解をしている若い人たちもいるが、正直に仕事をしていれば、ほとんどの事案では、何とかなるものだと思う。
P175
佐藤 会計事務所ではなく、一般事業会社を例に挙げると、成功している経営者の方は2種類います。
1つはリスクをリスクと思っていないので、特攻したらうまくいってしまったという人。もう1つは、本当に勉強家で毎日1冊は必ず本を読んでいるという人。大体このどちらかですね。
この2種類でいくと、会計士・税理士は 「リスクを考えずに特攻したら結果的にうまくいきました」 という人種にはなりにくい人たちが多い(笑)。
会計士・税理士は、本をたくさん読んで勉強していったほうがいいでしょうね。
福留 逆に、リスクを考えずに突っ込んでいくことができやすい職種であるともいるかもしれないです。会計士・税理士の資格があるので、独立に失敗しても、最悪、何とか食っていけるというのがありますし。
佐藤 失敗しても、サラリーマンに戻れますからね。