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『世界短編傑作集』完全リニューアル版第2巻。
この本は旧版で未読だったようで、チェスタトンなど既に短編集で既読のモノを覗いては、どれも初めて読む作品で面白かった。
昔、小さい頃、子供向けミステリガイド的な本で、トリックの種明かしをバンバンされつつ紹介されてたアレやらコレやらが収録されてて、読みながら「ああ、コレが噂の例のトリックの作品…!」みたいな、初見なのに妙な懐かしさをを感じながら読んでました。
1905年~1914年発表の作品ということで、名探偵モノのお約束の形が定着して、そこからいろんなスタイルの探偵が派生して群雄割拠してる事がこの2巻の探偵のバラエティの豊かさからもよく分かりますね。3巻も引き続き楽しみです。
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推理小説の草創期から名探偵の群雄割拠時代にかけての名作が並ぶ世界推理短編傑作集の第2段。少なくともタイトルを見ればどのような作品だったか思い出せるようにはしておきたいところである。
第2集にはブラウン神父の「奇妙な足跡」やルブランのルパンものの「赤い絹の肩かけ」あたりがメインとなる。ほかにも,月賦の支払を続けさせるという古典ともいえるトリックが描かれた奇妙な味ものの「放心家組合」,ソーンダイク博士,盲人探偵のカラドス,アンクル・アブナーといった「名探偵」と呼ばれる人物が出てくる作品が多数そろっている。そこまで傑作と言えるほどの短編があったわけではないが,数々の名探偵の活躍を見ておく上では必読の1冊ともいえる。さほど面白いという短編はなかったが,登場する多くの名探偵に敬意を表して★3としておく。
〇 放心家組合
いわゆる「奇妙な味」と呼ばれる名作短編の中で最も初期に属するもの。割賦の支払いで高価な家具などを売りつけ,全額の支払が終わっても,支払を受け続けるという詐欺をしていたという犯罪についての作品。面白いのは犯罪者が犯罪を見破られた後に,探偵の違法捜査を責めて証拠の隠滅に成功するというオチ。翻訳モノの古典らしく,固有名詞や世情についての話が多くて,なんとも読みにくいのが難点。トリックが古典として生き残っている点に敬意を表して★3で。
〇 奇妙な跡
足が不自由な物乞いのリップが,親切心と同情から行為で負ぶってくれた男を殺害して金袋を奪って,逆立ちして逃亡したというトリックの作品。障害のある物乞いが犯人という意外性と逆立ちして逃げたので足跡がなかったという謎について描かれた作品となっている。非常に短い作品。ただし,それほどの意外性は感じず。トリックも今となっては平凡。★2か。
〇 奇妙な足跡
ブラウン神父モノ。給仕に間違えられないようにするために,緑色の夜会服を着る「真正十二漁師クラブ」についての話。ある男が給仕のふりをして会場に行き,高価な魚形の銀器を盗み,クラブの会員のふりをして会場を出る。これを20回ほど繰り返したという男の話。
チェスタトンの代表的な作品の一つ。しかし,チェスタトンのブラウン神父モノはなぜか肌に合わない。それほど面白いと感じない。この作品も,分かりにくい描写が多く,何が起こっているのかがすっと落ちない。
世間の評価が高すぎて,期待して読んでしまうので,それほど面白く感じないのかもしれないが…。ブラウン神父モノであることに敬意を表し,つまらないという訳でもないので★3で。
〇 赤い絹の肩かけ
ルブランのルパン(リュパン)もの。ルパンがライバルであるガニマール警部を助け,殺人事件の犯人が誰かとその証拠を渡したように見せかけ,ガニマールが持つ証拠の中に隠されていたサファイアを盗み取ったという話。ルパンは警察にある肩かけの片割れがほしかったのだ。短編としては分かりやすくよくできている。翻訳モノらしく,固有名詞などが多くてやや読みにくいのが難点。とはいえ,傑作といえるほどではない。★3だろう。
〇 オスカー・ブロズキー事件
オスカー・ブロズキーという男が殺害された事件について,前半部分の「犯罪の過程」は犯人視点で描かれ,後半お「推理の過程」は,ソーンダイク博士の推理の様子が描かれている。ソーンダイク博士の捜査により,犯罪の様子が暴かれていくという設定は面白い。トリッ歴史に名を残しているようなものでもなく,それなりのデキ止まりだと思う。★3で。
〇 ギルバート・マレル卿の絵
走行している列車の真ん中から車両を一両抜き取るというアイデアの作品。菜食主義者で食事の前にはどこでも奇妙な体操をするヘイズルという探偵が登場する。このトリックはまさに古典。いろいろな推理クイズで見たトリック。物語としてはそれほど面白いというわけではないが,このトリックに敬意を表して★3で。
〇 ブルックベンド荘の悲劇
マックス・カラドスという盲人探偵が登場する作品。妻を感電死させ,落雷で死亡させたと誤信させるというトリックの作品。妻はカラドスによって命を救われるが,薬を飲んで死んでしまうというオチ。分かりにくい。描写の説明不足で何が起こっているのかが分かりにく過ぎる。トリックもあまり面白くない。これは★2で。
〇 ズームドルフ事件
アンクル・アブナーもの。ポー以来の最もオリジナルなアメリカ産の名探偵といわれている…らしい。完全な密室で起こった銃殺。呪いで殺したという女と神の怒りだという男がいる。実際は,太陽の光が水差しを通って焦点を作り,銃が発砲したというオチ。このトリックも推理クイズなどでよく知っている。よく知っているトリックだと得点を付けにくいが,これは話としても読みやすい。★3で。
〇 急行列車の謎
列車内という広い密室をテーマにした本格もの。難解な作品。解説によると欧米の読者にも難解な作品であるらしい。一介の開業医のところに運び込まれた瀕死の男が「謎の寝台急行列車事件」の犯人であるということと真相を語る。列車から脱出するトリックについて書かれているが分かりにくい物理トリックである。さほど面白いとも感じない作品。クロフツの最初の短編ということで選ばれたのか。★2で。
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古典短編ミステリの傑作集。
お気に入りはモーリス・ルブラン「赤い絹の肩かけ」。これ、おそらく児童向けのもので読んだような記憶はありますが。やっぱりリュパン凄い、となります。あっさりと殺人事件の犯人を推理してしまう探偵っぷりもさながら、ちょっと待て、目的はそれだったのかー!!! ってところも。お茶目なところもよいですねえ。
オースチン・フリーマン「オスカー・ブロズキー事件」も印象的。倒叙式ミステリって、なんとなく少しだけ犯人の味方をしたいような気になってしまうので、犯人と一緒にどきどきさせられました。しかしその一方でさあどうやって暴かれてしまうんだろう、とわくわくする心地も。
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だれかがおまえのピストルの薬莢は湿っているといったときには、たとえきみがいかにそのだれかを信用していようと、相手がアルセーヌ・リュパンを名のる男であろうと、その手に乗ってはいけない。まず最初に撃ってみることだ。
2019/6/3読了
モーリス・ルブラン『赤い絹の肩かけ』(井上勇 訳)より。ルパンが怪盗と名探偵の両方の役割を演じているが、最後にメンタリストにもなっている事を特記しておきたい。