投稿元:
レビューを見る
本文150ページ弱、全体にルビも振られていて、小学生でも読める体裁だが、見た目より深く、勉強になる。
著者は大阪府立大学名誉教授。獣医師であり医学博士でもある。大学で長年、ヒトと動物の解剖学の授業を行い、動物とヒトの身体の違いを熟知している。
「体」、「頭」、「骨」、「脊柱」、「耳」、「目」、「筋肉」、「皮膚」、「雄の生殖器」、「雌の生殖器」、「消化器」、「歯」の各部について、いくつかのトピックからヒトとイヌの違いを説き起こしていく。
真っ先に挙げられる違いは、ヒト=二足歩行に対してイヌ=四足歩行であることだろう。上肢(腕)と前肢(前足)の作りは特に異なり、ヒトでは腕をくるんと回すことが出来るが、イヌは振り子のように動かせるだけである。イヌでは上腕の部分が胴体に埋め込まれた形になっている。これは速く走るために適した構造である。ヒトでは木に登ったりぶら下がったりするために、鎖骨が発達している。イヌでは鎖骨が退化しているため、木にぶら下がることは不可能である。
イヌの肩甲骨は、筋肉とともにハンモックのように働いて、胸部を脊柱と前肢にぶら下げている。
また、骨格を比較すると、イヌはつま先立ちで歩いている形になっている。ヒトでは下腿は三頭筋(筋肉の一端が3つに分かれている)だが、イヌではこのうち、ヒラメ筋にあたる部分がなく、二頭筋になっている。ヒラメ筋は踵を地面につけて直立するために働くもの。これがないイヌは踵を地面につけて歩くことは出来ない(踵を地面につけて座ることは可能)。
それぞれの形態の違いは求められる機能の違いと密接に結びついている。
進化の過程で、ヒトは直立することを選び、イヌは速く走る方を取った。そうしたいくつかの違いがヒトとイヌの身体の違いとなっている。
比較することで違いがわかり、何気なく見過ごしていた体の各部の機能がより深く理解できる。
著者自身によると思われるイラストも簡潔でわかりやすく、独特の味がある。