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2018年50冊目。
何かが受け手に届くまでの間には、多くの人たちの、多くの手間とこだわりがこめられている。たいていの場合、受け手のあずかり知らぬところで。それはきっと、本に限ったことではない。この本を読むと、本に対しても、本以外のものに対しても、それが手元に届くまでの物語に思いを馳せずにはいられなくなると思う。
この本は、編集、装丁、校正、印刷、製本、取次、営業、書店...と、読者に本が届くまでのリレーの各区間を担うプロフェッショナルたちのエッセイ集。出版業界にいる人間として、どの方のお話にも背筋が伸びる思い。誰もが、著者の思いが届くべき人に届くべき姿で届くように、大事なことが零れ落ちてしまわぬように、丁寧に丁寧に仕事をしている。著者の言葉だけではなく、言葉にならない言葉にまで寄り添おうとしている。
この本を読みながら、自分の手に乗っているまさにこの本に対して、敬意と愛着が増していくのをひしひしと感じられた。印刷技術の発達の要点は大量生産にあると思うのだけど、今自分が手にしているこの本が、たった一冊しかないものすごく稀有なものであるような気さえした。本書の中で藤原隆充さんが仰る「1000冊の仕事ではなく、1冊×1000回の仕事」という言葉に触れてしまうと、「作品」としての本の姿が色濃くなり、大切に読みたい、置いておきたいという思いがぐっと強まる。
独立して活動されている方々が多く、実は起業家精神も学べる本だと感じる。どなたも間違いなくパッションがあるのだけど、暑苦しく息苦しくなるような文体のものはなく、言葉を受ける以上に、自分側から入っていけるようなものばかりだった。本全体を通じて、肩ひじ張らず、とても心地よい読書感だった。本自体の重量や紙質も、それを手伝ってくれたと思う。ずっと手に持っていたくなるような感覚。
...
すてきな本を世に送り出してくださり、どの執筆者にも、製作過程のどの関係者にもお礼を伝えたいくらいの気持ちだけど、個人的には、やはり橋さんへ。橋さんの、本への、書店さんへの、書店員さんへの思いには、橋さんの発信を見るたびにいつも胸を打たれていました。あの人への2年越しの思いも、書いてくださり感謝です。しっかり胸に刻みました。来月12日に、もう一度読もうと思います。ご出版、おめでとうございました。
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2021年8月13日読了。
P290
作家の遠藤周作は、しばしば「生活」と「人生」と
いう言葉を、対比的に用いた。
生活は水平に広がっていき、過ぎ去っていくものだが、人生は垂直線を描き、あるときは天に向かって
伸び、また、あるときは大地の奥深くに入っていく。
人は、生活するのにあまりに懸命になると、
人生からの声を聞き逃すことがある。
一人ぽっちになった今、磯辺は生活と人生とが
根本的に違うことがやっとわかってきた。
(『深い河(ディープリバー)』)
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お仕事小説みたいにも読めるかもしれない。多少知識がないと難しいかな。調べるきっかけになると思う。中高生には難しい…のかな?
本という作品に関わる人々の思いにも触れられるし、一般的に認知されている職業以上のことに気付かされる。今まで以上に手に取る本の存在が作品として感じられる。
この本と並行して、『桜風堂ものがたり』(著:村山早紀)も読み進めると、読みやすいと思う。内容は連動していないけれど、書店員の主人公やそこに関わる人たちの関係性も照らし合わせながら読めば、いろんな見方ができるのではないかなと思う。
校閲者の牟田さんをテレビで存じ上げていたから気になった本。
読書人生にて初めて購入して読んだエッセイ集。
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本を読者に届ける仕事に携わる10人の方のエッセイ。
関わり方は違っても、本を贈るという気持ちは、同じ。
この本には、心が込められている。
何度でも読み返したくなる。
きっと、その度に励まされ、慰められ、勇気づけられるんだろう。
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BBO実行委員の役得?は、一冊の本ができるまでのさまざまな職業の人たちの手によってできていることを実感できたこと。
著者、ライター、デザイナー、編集者、校正者、装丁家、ブックコーディネーター、印刷、書店、なんとたくさんの人たちの元を経て届けられていることか。
普段の置賜の生活でこれら職業の人たちと、まず話したり、会ったりする機会はないだろう。どんな考えで、向き合っているのか、知らないだろう。
それは本にかぎらず、どんな職業にとっても、きっとそうだ。
だから、一冊の本を手にとったとき、その裏にある「想い」を想像してみる。
本が人から人に手渡されて、伝わっていく。
知らないところでつながっていく。
そんな奇跡を夢見ながら、本づくりに関わっている人たちは真摯に仕事に向かっている。
(実行委員K)
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私たちは当たり前のように本を読んでいるけれど、一冊出来上がるまでには、たくさんの人の手と熱い、熱い思いが込められているのだと改めて実感した。
著者、編集、校正、装丁、印刷、製本、営業、取次、書店員、本屋。
仕事内容だけでなく、10名の人生も踏まえて知れ興味深かった。
この本は驚くほど軽い。
装丁も綺麗。
触り心地も良い。
他の本では見れない奥付にグッときた。
本を読む人は、ぜひ読んでほしい。
私にとって、とても大切な一冊となった。
たくさんの方の元へ届きますように…
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20181021 話題の本。自分としてはあまり考えた事がなかったが本が手元に届くまでの関係者及びその仕事が語られている。手元に本がある事もその作業の流れとしての結果。読む側も何かを問われているのかは各自の判断だとおもう。自分としては本屋を徘徊してまとめ買いする衝動がそれほど変わったことではなくむしろ必然という事が分かったのも収穫だ。
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著者だけでなく、編集、校正、製本、営業、取次、書店……と、1冊の本にはいろんな方の思いが詰まっているのだと思ったら、手元にある本たちがいとおしくなった。
一生に読める本は限られているけれど、これけらも本を手に取り、読み続けていきたい。
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本の出版というフィルターごしに
じんとくる思想が彼方此方に散りばめられて
物事を心で考えるヒントがたくさんでした。 暖かい本。
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読書家の友人から、プレゼントされた1冊。
贈られた本のタイトルは、「本を贈る」でした。
「本をつくる仕事に携わっているので、この本の執筆者の気持ちがすごく分かると思う」
という推しの一言も頂いていました。
書籍の制作管理部門に配属されていた頃、紙や印刷、製本の原価計算をしていた経験があるので、本の装丁を見て、なんて丁寧なつくりの本なのだろうと惚れ惚れ。
「気合い」というか「魂」のようなものが入っていることが伝わってきました。
本から漂う気配と、友人の一言を受けて、「大丈夫かなぁ、私」と若干、心配に。
私は、自分が好きなことを文章に書くのは好きだけど、本という一冊の形にまとめあげる編集は得意ではないし、校正もできれば専門家に任せたいほうです。
文章を書くのと、本を読むのは好きだけど、本づくり全体に情熱を持っているかと問われると、それほどでもないような気もします。
この本に寄稿した著者たちの気持ち、分かるかなぁ。響いてくるかなぁ・・・。
などと思いながら、読み始めました。
結論からいうと、友人の「読み」はドンぴしゃり。
本に携わる著者それぞれの思いや気持ちが詰まっていて、
私自身も、「あぁ、こんなふうに本に携わっていきたい」と思いました。
改めて、自分の仕事の在り方を見直す機会になりました。
本書は、著者、編集、校正、装丁、印刷、製本、営業、取次、書店員、本屋という、
本が生みだされる過程に携わる人や、生まれた本が読者のもとに届くまでの過程に携わる人、計10人のエッセイをまとめています。
一つひとつのエッセイは、著者の言葉が活き活きしています。
本に携わる中で培った経験とか、実感とかを踏まえて語っているので、
文章が「身から出た言葉」から成っている気がします。
本を取り扱うすべての人に読んでほしい1冊。
もちろん、本を読むのが好きという人にもお勧めの1冊です。
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本をつくる人、流通させる人、
上流から下流まで丁寧にリレーで描く作品。
ものをつくるその過程、工程をないものにしようという風潮はやめた方がよくて、
すべて可視化した方が本当はいい。
本だけでなく、あらゆるものについて、
こういう本が出版されたらよいのでは、と思う。
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大切な人が困っているとき、金銭だけでなく、私たちは言葉を贈ることもできる。編集者から装丁家、校正者、印刷、製本、取次、営業、本屋まで、贈るように本をつくり、本を届ける10人が自身の仕事や、本への想いを綴る。
こういう想いが詰まって,手元に届くのですね。
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タイトルや前評判から漠然と、本を作ることに所縁のある人による良書案内、あるいは読書の楽しみについてのエッセイだろうか?と思っていたのだけど 、想像してたのとは違う角度から攻めてこられた感じ。改めてタイトルに納得。途中本を撫で回したり表紙を閉じたり開いたりしながら本の手ざわりを確認してしまいました。
読んだことのある作品について書かれたものについてはそちらもまた再読したくなる。本好きにはたまらない一冊。
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本が好き。
本をたくさん読める!そう思って大学に進学したな。とか
出版社に就職して辞典関係の仕事がしたい。とか
色々思ってた時があったので、本に携わる仕事に就かなかったけどその気持ちを味わえた気がした。
やっぱり本が好きだわ〜ってなったし、買ってよかった。
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本を作るということをあらためて考えされられる。本というのは、概念でもなくて、「もの」なんだなあと思う。多くの人の手によってつくられて、多くの人の手に渡る。
本の内容からではなく、「こんな本を作りたいな」とイメージして、それにあうような中身を考える、というのは今までにない発想だった。マーケティングとか、ターゲットとか、そういう言葉を使わず、本当にこの本が欲しい、モノとして置いておきたい、そう思ってくれた人に本を届ける、というのも良かった。
伝える、というと、伝わらない、という悲しさがつきまとうが、双方のコミュニケーションだけではない、「届ける」どまりであっても、それは十分なコミュニケーションであるというのを、読んで気づかされた。たしかに、「伝わった?」と首を縦に振らせるだけが、コミュニケーションではないのかもしれない。
スルーされているかもしれないけれど、それも含めて互いに許し合う、変に空気なんて読まない、どんどん、届けたいから届けたいものを、届ける。
「本」というものを通して、ことばになっていない「コトバ」を多くの人に、必要としている人に届ける。
そのために、魂をこめた本づくりが求められることもあるし、スムーズな物流が求められることもある。
おもしろい話だった、人それぞれに本との関わり方があるのだ。とてもいい本。この手元まで届いてよかった、そして今まで出会いのあったすべての本が愛おしくなる本でした。