紙の本
季語と向き合う姿勢が素敵だ
2018/11/24 08:50
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
俳人夏井いつきさんの活躍には目を見張るものがある。
TBS系のバラエティ番組「プレバト!!」で注目を集め、その軽快で洒落っ気のある語り口はNHKの「NHK俳句」でも健在だった。
多くの俳句愛好者が視聴しているだろう「NHK俳句」の選者を2年間務めたその成果となるのが本書である。
中でもうまく出来ていると感心したのが、「季語の六角成分図」。
俳句では基本的に季語がはいるということはよく知られている。もちろん無季句の俳句もあるが、俳句は色々な制約がある創作が面白いともいえる。
だから、季語は大事にしたいし、日本語の美しさも季語で味わうことができる。
その季語がどういう構成でできているのかを分解したのが「六角成分図」である。
六角とは、視覚・嗅覚・聴覚・触覚・味覚そして連想力である。
本文に出て来るが、「麦」と「麦の秋」という夏の季語、中でも小津安二郎の映画のタイトルにもなった「麦秋」、「麦の秋」は、「麦」そのものではなく「麦の実る頃」を表わす季語だということ、なので「六角成分表」では連想力がまさる季語になる。
それを理解した上で俳句を詠むのは重要、と夏井さんはいう。
この本の夏井さんはとても真面目で、季語ひとつとっても過去の「歳時記」をさらってその言葉がいつ頃季語として採用されるようになったかを見ていく。
例えば「遠雷」という夏の季語も昭和15年になってようやく登場する、季語としては比較的新しい言葉らしい。
一つひとつの言葉を丁寧に読み解く、それがいい俳句を詠む、第一歩なのかもしれない。
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①季語の六角成分図②似て非なる季語たち③音で楽しむ季語④添削道場⑤類想を超える秘策の5章からなる季語の解説本といっていいかな。
季語の六角成分図というのは、視覚、嗅覚、聴覚、触覚、味覚、連想力の6つの成分で季語を分析して、六角形の図形で表そうというもの。よくスポーツのチームなんかを評価するときにこういうのを使うよね。
似て非なる季語というのは、例えば「陽炎」と「逃水」、「草の芽」と「ものの芽」などのように似た季語を六角成分図や例句をもとに徹底検証するというもの。
どの章も、季語が持っている伝統の奥深さ、イメージ力というものを気づかせてくれて面白かった。例句がたくさんあって、詳しく解説してくれるのもよかった。
季語というものを知って、それを手掛かりに実際の自然や事象に直接向かい合って、しみじみと感じてみたい。
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はじめに
1章 季語の六角成分図
2章 似て非なる季語たち
3章 音で楽しむ季語
4章 添削道場 推敲のコツ
5章 類推を超える秘策
巻末 はじめての句会スタートガイド
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これもまた市民図書館からお借りしたもの。「季語道場」と銘打つぐらいだから,初級者向けではないのだろう。でも,初級者のわたしでも結構興味深く読むことが出来た。
夏井さんは,季語をよく知って,自分の俳句に季語をじょうずに取り入れるためには,季語が持つ独特の雰囲気をなるべく体感してほしいと言っている(ような気がする)。そのための手がかりとして,「季語の六角成分図」というものを提唱している。
「季語の持つ要素を視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚・連想力の六つの成分に分け,数値化して六角形のグラフに表現」すれば,「それぞれの季語の持つ性格が一目でわかりますよ」と言っている。さらに,その「グラフの値に正解があるわけではなく,詠み手が季語についてどう考えているか自由にグラフにしてみようという試み」を読者に勧めているのである。これは大変分かりやすい。
おそらく,俳句を作らない人にとっても,この「言葉を5感+連想力で表してみる」ということは,ものの見方考え方を拡げてくれるに違いない。
「陽炎」と「逃水」,「雷」と「稲妻」の違いはどこにあるのか,この六角形のグラフに表してみるとなにかが見えてくる…というのですが,わたしは本を読んで「へ~」と思っただけです(^^;)。だって初心者だもの。
昔の俳人から,今の俳人まで,さらには一般人の句もたくさん収録されていて,それぞれに夏井さんの解説があり,読み物としても面白いです。
私のすきな金子兜太さんの句も取り上げられていました。
梅咲いて庭中に青鮫が来ている
俳句は作れないけど,兜太さんの句はすきなのがいっぱい。
この本棚にも,以前,数冊紹介した。
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夏井いつきさんの「NHK俳句」での経験を基にした俳句実践講座。季語の本質に迫る季語の六角形には、なるほどと思った。また、類想、類句が多いということで、その脱出法を指南している。