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キム・ジヨンの中にすべての女性が入っています。彼女と同じ思いをしたことのない女性はいないのでは。
怒りや悲しみを直接的に声高に表現しているわけではなく、むしろ淡々と一人の女性の人生の話が進みます。
だからこそ、女性読み手であれば文章の中に自分を見つけるのでしょう。
ぜひ、全ての人に読んで欲しいと思えた本です。
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面白くてあっという間に読了。
韓国社会の一端が見えて、日本よりもまだまだ生きづらい現実がわかる。
カウンセリング方式の文体も読みやすく、冒頭は義母や知り得ない夫の過去のガールフレンドの言動や癖が乗り移って、
サイコな話しかと思ったけど、それとは関係なく物語りは進んでいく。
家長制度故の女子への差別や偏見。
このジョンの母親のまたその母親の受けた仕打ちにしてみれば、まだ大学にもいけてるし(この母親がほんとに素晴らしい)徐々に改善はされているのかもしれないけど、まだ根強く残っている。日本も然り。
ちなみにタイトルの”キム・ジヨン”は韓国で一番、多い名前だそう。
この憤然たるジヨンの叫びは、韓国の女性の叫びなのだろう。
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韓国文学に多少興味を持ち始めたので、
今話題となっているこの作品を
手にとって読んでみた。
日本における女性蔑視も
いまだ問われているが、
韓国の女児出生制限が
そんな遠くない昔に行われていた
ということに驚く。
メキシコやインドでも女性蔑視、
性犯罪が問題になっているが、
全てにおいて根は深い。
最後の章、
主人公キム・ジョンをカウセリングしている、
自分は女性の良き理解者だと勘違いしている
精神科医が1番、鈍ましい。
何も分かっていない。
そして、こういう思考の男性が
日本でも韓国でもきっと多いのだろう。
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小説というよりは1人の女性の成長記録を綴った本。その成長記録の全ての出来事の中で男女差別が取り上げられており、如何にして女性が生きてきたか知ることができる。
印象に残ったのは解説。女性として生きていると、不当な扱いを受けたとしてもそれが当たり前なんだ、そういうものだと当然の事のように考え、無意識に受け入れている事も多い。しかし一度立ち止まり、もう一度考え直す必要があると思った。そしてそれを声に出す事が大切で、行動しない限り何も変わらない事を教えてくれた。韓国に比べ日本はデモや集会などあまり行われず、行動する人が少ないように思う。
また、マイノリティーを攻撃するのはマジョリティー側の被害者意識によるものというのも共感できた。マジョリティーは、マイノリティーが不当に恵まれていると勘違いしているのである。そういった人間にはなりたくないと改めて思った。
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共感しかしなかった。もちろん日本の方が恵まれてる。韓国がこんなにえげつないとは思わなかった。でも日本も韓国も、あちらこちらで、時代時代で女の人がこの問題と戦っている(自分もしかり)ということは紛れも無い事実。そういう人たちが声をあげ、少しずつ改善はしているとは思うけど、でも韓国のこの問題は根が深すぎる。。。最後の医師の言葉でそれを強く感じた。できるだけ多くの人に読んで欲しい。
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名作はいつの時代に読んでも名作だけど、リアルタイムで読むことに大いに意味がある小説って確実にある。その作品がどんな時代の空気感の中で生まれたのかを体感するには、その作品と同じ時代を生きるしかないのだから。この小説は、書かれているエピソードのひとつひとつが「現実」過ぎて、文学を味わう時の喜びは少なく、良くも悪くも学校の教科書に載せられそう。それでも今まで感じていた違和感を、よくここまで言語化して作品にしてくれたな、という気持ち。ナオミ・オルダーマン『パワー』と同様、男女の感想がさぞかし違うことでしょう
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読むのが怖かったけど、引き込まれて一気に読み終えてしまった。すごくつらい、悲しい、でもなぜか闘志の湧く物語です。
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断片を寄せあつめたモザイクのようであり、「視聴者の証言をもとに再構成」した再現ドラマのようでもあった。訳者あとがきによるとこれは意図的なことのようで、作者は安易な感情移入を拒絶しているのかな、とわたしは思った。
あれこれの渦中にいる人の感情が「怒り」として的確にことばになっていて、読みながら違和感を覚えた。
お母さんとお姉さんが結構たくましく、女友達もすごくわかってる人だった。
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韓国文学は生活感が日本と似ていて読みやすく、想像しやすい。この本に関していえば、一昔前の日本というか、男女差別の厳しい現実が想像できる。今もなお、この日本にも残ってそうな事柄もあり、とても共感できるし、教訓としなければいけない部分も多いなと感じた。
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ツラくなるザラっとした読後感。
あまりにも日常的な体験が、とてもリアル。
「これは私だ」という、韓国の女性が
多いのも分かる気がする。
男が無邪気に悪意なく特権を
享受している構造は日本も同じなんだろうな…。
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2/15読了
固定観念を払しょくすることは個人、会社、社会にとって、とても時間のかかることなんだなと思った。
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生きづらさは人それぞれだし、それを当然だと思ってしまうと何も感じなくなってしまうけど、
当たり前ではないのでは?と思うことで変わっていくこともあるよね
と思いました。
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自分ではどうしようもない事項で差別を受けることの虚しさ、あるいは怒り、もしくは絶望というものがある。
努力ではどうしようもない場所で区切られて、劣等・優越を分けられるという場面は誰しもが大小多寡あれ経験していることだろう。
小学生の時に同じクラスだったワタナベくんという子はたいへんレッテル貼りの大好きな子で、小学5年生のある日「男は偉い!頭もすごく良い!」と言い張り始めた日があった。「何が偉いの?」と聞いても、「えらいものは偉い!」の一点張りで、全くわけがわからなかった。言っている本人もわけがわからないという顔をしていたので、訳もわからず世間に「男は偉い!」と言わされていたのだろう。
思えばあれが、自覚的に直接初めて、女という存在に対する差別に行き当たった出来事だったと思う。
中高を女子校で過ごし、ほぼほぼ女子しかいない大学の日文科を出て、大学院に3年通って、在学中に入籍したため、幸福なことにほとんど「良い人いないの?」「付き合ってる人は?」「結婚しないの?」攻撃に遭うことはなかった。代わりに就職でたいへん苦労した。大学の就職課で面接の練習をしても「特に問題はないですね」と大したアドバイスももらえない。
仲の良いと思っていた友人が、酒の席で「結婚なんてしてるやつ、新卒で取りたくない。産休欲しいとしか思えない」と言い捨てたことで大体の世間(という名の、私が採用を受けていたごくごく一部の企業)の自分に対する評価を知った。
どんなに会話が弾んでも、プレゼンがうまく行っても、よほど突出しなければ普通に就職することは叶わないのだと悟った。
「料理とかつくるの?家事大変だね」
「旦那さんも家事やってくれるんだ。えらいね」
結婚してから頻繁に言われるようになったのが上の二つのセリフである。正直、私は家事については必要が生じないとほとんどやらないので、むしろ家人の方が家のことはやっている。そんなの家それぞれだと思うのだが、他人はお構いなしに家事の実施状況というプライベートにズカズカと入り込んでくる。大半の場合私が「旦那もやってくれるので……」と申し訳なさそうに言うと「若いのに大変だね!旦那さんもえらいね〜」と続くのである。実際は、私は必要が生じない限り家事をやらないので、実施比率は3(私):7(家人)である。そんなことを見ず知らずの人にお伝えするのは体力の無駄なので、私は仕事もして家に帰れば家事をこなす奴としてその人の中に存在するわけである。
私は勝手に株が上がって万々歳だが、世間の認識がこんな現状になっていると知ったら家人はやり切れないだろうなと思う。
これはある種の男性に対する差別だと私は思う。ジェンダーが蔓延っている中で、役割から外れた部分は過度に主張しなければ無かったことになってしまう。だから「イクメン」や「家事をする夫」は過剰に取り沙汰されるのだろう。それに対して女性が「私たちも当たり前にやってるのに!」となる。まさにいたちごっこである。
また、枠内の行動を少しでも行っている場合には、それを匂わせるだけで枠内のことは全てきっちりやってることになってしまう。私の家事がいい例だと思う。
『キム・ジヨン』は一般的な83年生まれの女性が辿ってきた当たり前の人生をなぞる小説であり、無名の人物の伝記を淡々と読んでいくようなそんな物語である。
女性に対する潜在的な差別が空気のように描かれ、それに抗う者がキム・ジヨンの周りには時折現れるが、彼女自身は抗うことはせず、目の前の状況を飲み込んでいく。
こんな、彼女たちが目の前に出されて飲み込まざるを得なかった状況が陳列されていくことで、女性差別だけでなく男性差別(たとえば、物語の中で女性を差別する立場として登場せざるを得ないのは差別のひとつである)さえも浮き彫りにしていくものと思う。
認識が次の一歩への足がかりともなるだろう。
82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)
82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)
作者: チョ・ナムジュ,斎藤真理子
出版社/メーカー: 筑摩書房
発売日: 2018/12/07
メディア: 単行本(ソフトカバー)
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これは小説というよりも、朝鮮戦争後あたりからの、韓国人女性が置かれていた状況を如実に表したドキュメントであり、#Me tooムーブメントにも大きく影響した作品である。
今、社会の枠組みの中に収まっている人には今ひとつピンとこないかもしれないが、結婚、出産、育児と一つ一つ社会との関わりを手放し、枠組みから外れていってしまった人間には痛いほどの共感を与える本だと思う。
キム・ジヨンは元の精神状態に戻れるのだろうか。最後の医師の言葉が、一筋縄ではいかないこの問題の根の深さを語っているようだ。
ただ一つセクハラ発言という物に対して、本書とは関係ないが、先日少し疑問に感じた事がある。
それはTBSドラマ「凪のお暇」の番宣か何かの中だったと思うが、女性スタッフが俳優の高橋一生さんの衣装を、「あえて体のラインが出るスーツばかりにしている」と発言した事だ。それは、女性スタッフ達が求めているから…というような理由で、高橋一生さんも苦笑いしていたが、これが女優さんに対する発言だったら問題になるだろう。老若男女問わず、立場が変わればどういう受け止められ方をするのか?という事を人として常に心に留めなければならないと自戒を含めて感じた。2019.9.25
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女性が読めば「わたしの話だ」と感じると思う。わたしも女性なので、これはわたしの話だと思った。性別関係なく、みんなに読んでほしい。女性は世界で一番母数の大きなマイノリティと言われているけど、本当にそう。
少しずつ世界を変えたい。