投稿元:
レビューを見る
オスマン通史はなかなかない。
それぞれの時代を適切に区切りながら、各王の治世と、社会・世界構造の変化を織り交ぜて、記述している。
物語というよりは、教科書的な表現も多いが、所々のエピソードが上手く挟まり、飽きずに読めた。
投稿元:
レビューを見る
オスマン帝国600年の通史。わかりやすくまとまっている。オスマン帝国の通史はなんどか読んだ気もするのだが、日本語原書はこの他に50年前の1冊があるだけらしい。ほんと?オスマン帝国が安定した理由のひとつに王位継承が比較的スムーズで、有名な兄弟殺しの他に、奴隷を母として王子が産まれることにより、外戚の介入を防いだ、というのは初耳の気がする。なぜこれだけの大帝国で奴隷の母后が多かったのか、不思議に感じたが、格式よりも合理性だったのか。兄弟殺しも残虐ではあるが、マキャベリズムとしては正しい。封建国家としては最強だった理由がわかる一冊。
投稿元:
レビューを見る
オスマントルコという国は歴史上の古い、しかも縁遠い国というイメージがあった。東ローマ帝国を滅ぼし、更にウィーンなどの欧州を脅かした敵方というイメージもあった。それを相手方から見ることによって全く知らなかった世界を学んだ気がする。それも既に19世紀のうちに立憲民主主義を確立し、ケマルによるアタチュルク革命後の共和国に連続している部分もあるとは、再認識である!この国の起こりが、彼らそのものがトルコと呼んだことがなく、国の名前さえなかったことにもビックリ。そしてスルタンという言葉も実は確立していない!本の中では「オスマン帝国」「スルタン」と呼ぶことに最初に断りがあるのだ。そして名君が多く登場する輝かしい歴史の国だったのだ。それが逆に君主就任時に兄弟を皆殺しにするという超法規措置があったために、分裂・争いのない盤石の体制を築いたこと、また外戚の影響を避けるため、後任スルタンは奴隷の子供から選ばれた!ビックリの連続である。中国史などと違いすぎる!!そしてキリスト教戦士軍団がスルタンの下で友誼で結びついていた!!!現在のトルコがこのオスマンの栄光の歴史の誇りを取り戻そうとしていることは当然のことだろう。
投稿元:
レビューを見る
通史。読みやすいです。即位の兄弟殺し、イスラム以外にも寛容だった初期~中期、ヨーロッパへの遠征、支配体制などなど面白い。末期の過程は日本の近代と似ている印象。
投稿元:
レビューを見る
世界史によく出てくるけれど、今ひとつ分からなかったオスマン帝国。書店で本書を見かけて、気になって購入した。
オスマン帝国の成り立ちから終焉まで、一通り知ることができた。
投稿元:
レビューを見る
アジア・アフリカ・ヨーロッパを跨ぐ広大な版図を築き、600年の長きにわたってイスラムの盟主として君臨した大帝国の興亡を描く。
投稿元:
レビューを見る
最近はオスマントルコとは言わんとか、あとは塩野小説の敵役としてくらいしか知らんかったのでいろいろおもしろかった。約600年続いて親子兄弟甥っ子以上に離れた王位継承がないってすごいよね。兄弟殺ししかり鳥籠しかり現代から見ると人権的にどうよ、ってのはさておき王家の存続のためには優れてるし、重臣を奴隷から登用することで世襲で王家を脅かす存在を作らないってのがこれだけ長く機能したのもあまり他で聞かない気がするし。スレイマンの時に全盛期を迎えてから遺産を食い潰しながら腐っていったイメージしかなかったけど、もちろん腐って崩壊するのを食い止めようとした人々がいたわけで、特にナポレオン以降は塩野の範囲外やし読んだことなかったから特に興味深い。
投稿元:
レビューを見る
最新の研究成果も織り込まれた立派な学術書なのにドキドキワクワク興奮しながら読了。発売当時好評な論評が並び、賞を受賞したのもわかる充実した内容と文章の巧さ。初めは皇帝の治世を順に追って説明するだけかと思ったがさにあらず。オスマン王朝絵巻のようでいてその流れがのちのトルコへと変容していく要点がそこかしこに落とし込まれている。オスマントルコの政治文化・歴史といえば本邦には鈴木董先生という素晴らしい先達がいらっしゃっるが、令和の時代に有望な後継者が現れた。
ところでショックだったのは、スレイマン一世の妹ハティジェは大宰相イブラヒムとは結婚してなかったことが定説になっているということ。それだと『オスマン帝国外伝』の物語背景が根底から覆ってしまう。いやドラマだからそれでもいいんですけど(苦笑)。
投稿元:
レビューを見る
なぜオスマン帝国は長く、600年もの命脈を保ったのかを説明したのが本書。
目についたのは2点。
一つは、奴隷の活用。
一方は、権力分立。
奴隷の活用という点では、これほど徹底している帝国もあるまい。次代の母后から大宰相まで、余すところなく奴隷なのだから。確かにこれでは強大な外戚も発生すまい。また、強大な力を持った臣下も、奴隷という身分であれば処刑するのも容易であろう。ただひたすら主君のみが絶対であれば、それだけ安定する。しかし、それゆえ血の粛清があれほど激しいく、惨い。
権力分立については、一種の公有制で担保している。例えば、徴税権のみを保証し、土地の領有は許さない。一種のサラリーマンである。これなら豪族も生まれ難い。
投稿元:
レビューを見る
今までは塩野七生の描くキリスト教社会から見たイスラム社会としてしか認識していなかったオスマン帝国の実像を初めて知ることができた貴重なオスマン通史。どうもイスラムというと中世的で原理主義的に思ってしまうが、実のところはキリスト教社会も中世は極めて原理主義的かつ非人間的であるところがあり、むしろオスマン側のほうが他宗教に寛容でさえあったという。現在のイスラムのイメージとは大分違うとともに、たぶん日本がヨーロッパ的価値観に縛られているためにそのように感じるのだと思う。それが再認識できる非常に素晴らしい本。まあ、後継者争いを避けるために兄弟殺しをするなど今考えるとあり得ないようなことも起きていたが、それも中世という時代背景の下でのことであり、実際に日本の戦国時代においても兄弟殺しは一般的であったことを考えると仕方ないことなのだと思う。今のトルコとオスマン帝国の関係さえ知らなかったので、本当に勉強になった。
投稿元:
レビューを見る
複雑な歴史だった。
キリスト教圏ではない、イスラム教圏の入口として読むには、一本の道としての理解が出来る良本。
フランス史も複雑で、いつからが本当の国なのか、色んな書籍を読んでもし難いんですけど、それと同じく、中東の大国としてあるにも関わらず、統一国家という意味でなかなか理解がしづらく、頭の整理がいつも出来ない。
島国日本の様に、分かり易い国境が示しがたく、領土の拡張や奪還、または奪われ放棄しつつ国家の体を成しているから、という事だけは理解している。
あとは、自民族だけで成立しないので、多民族との共生が、物事や政治、統治の方法論が、時代で変化しているんだなと。
オスマン帝国があったがゆえに、結果、イスラム教が守られてきた事だけ、ぼんやりと覚えておく。
キリスト教と違う、宗教と国家との繋がり方になり、政教の試行錯誤があり、その中で血を出しながら、やはり進化をしている。
「柔かい専制」、18世紀がその到達点。
柔かくなる事は人間性の顕れで好ましい。
結果、その柔らかさが、帝国の命運を奪った。
政治と宗教が共存させる、民主化の違う可能性も見えかけてた。
やはり、国家は、難しい。。。
投稿元:
レビューを見る
本書の区分で言うところの「集権的帝国の次代」以外の知識はほぼ持ち合わせていなかったので、非常に興味深く読めた。特に近代化の時代は現在のトルコ共和国に通ずる点も多くあり示唆に富む内容だった。長い歴史が君主を軸に叙述され、権力構造がどのように変遷していくかもよく分かる良書。
投稿元:
レビューを見る
600年にわたって一つの王朝が続いたオスマン帝国――その継続の理由が本書を読めばわかるだろう。また、多くの君侯国の中からオスマン朝が覇者となった理由も――オスマン帝国の政治史がわかりやすくまとめられている。各時代のオスマン帝国の体制の変遷や諸国との関係についての叙述、さらには現代史への言及もある。どんなに短期間の在位のスルタンにも何かしら述べられている。系図ページは何度も見返すことになるだろう。コンパクトなオスマン帝国入門書。
投稿元:
レビューを見る
600年続いたオスマン帝国の栄枯盛衰が、わかりやすくまとめられている。
最近のトルコ共和国のエルドアン大統領の強権的な言動から、オスマン帝国回帰と言われるなどの報道を見聞きしてから、ほとんど知らないオスマン帝国の歴史を知りたかったので。
投稿元:
レビューを見る
13世紀末から20世紀まで長期にわたって存続したオスマン帝国の通史。
ヨーロッパ史とイスラム史を繋ぎ止める重要な立ち位置であったにも関わらず、今まであまり顧みられてこなかったこの国を非常にわかりやすくまとめ切った本書。
世界史を授業で学んだ限りでは当初は興隆を見せるも、近代には帝国主義とナショナリズムの流れについてこれなくなって遅れた国という認識に留まる。
しかし、600年以上続いた背景には変革と反動を繰り返しながら時代に順応していった歴史があり、
現代の問題を解くヒントを得ることができるという、
歴史を学ぶ意義を改めて思い出させてくれた。