投稿元:
レビューを見る
かつては炭鉱で栄えたが、すっかり寂れた北海道苫沢町。理髪店経営者・向田康彦の視点で、過疎の町のさまざまな騒動と人間模様を温かくユーモラスに描く連作集。
地方の過疎地域には未来がない。子供が少なく老人ばかりなので、話題がどうしても暗く湿っぽい。本書の舞台・苫沢町も先行き真っ暗状態だが、徐々に薄くも光明が射してきた。中盤の『中国からの花嫁』から一気に面白くなる。何にもないけど、だんだん良い町に思えてくるから不思議だ。
投稿元:
レビューを見る
かつては炭鉱で栄えたが、すっかり寂れ、高齢化ばかりが進む北海道苫沢町。理髪店を営む向田康彦は、札幌で働く息子の「会社を辞めて店を継ぐ」という言葉に戸惑うが…。(表題作)異国からやってきた花嫁に町民たちは興味津々だが、新郎はお披露目をしたがらなくて―。(「中国からの花嫁」)過疎の町のさまざまな騒動と人間模様を、温かくユーモラスに描く連作集。
投稿元:
レビューを見る
北海道の寂れた過疎の炭鉱町が舞台。
たそがれゆく町で、しんみりと余生を送る親たちと、夢を抱いて郷里に戻り、町おこしをしようと計画する息子たちが描かれます。
互いの意見が食い違い、なかなかスムーズに話が進みません。誰もが良かれと思って行動しているのに、周りにその気持ちが伝わらず、もどかしさを抱える人たち。
静かな中にも、住民たちの心理を追ったドキュメンタリーのような、身に迫る展開です。
最初から最後まで淡々と話が進み、特に大きなドラマはないのが、逆に現実的。
過疎化が問題かされる日本の田舎ではよくある話、よく聞く話ですが、それを当事者たちの立場に引き寄せて、人々の本音と建て前、愛情と反発などを内側から、眺めてみたような気分になる短編集です。
「空中ブランコ」や「イン・ザ・プール」の作者とは思えないほど静かな筆致に、驚きました。
小説ならではのダイナミックな展開を期待していましたが、大きな起承転結がなく、物足りなさを覚えたのが若干残念なところ。
かなりリアリティを意識したつくりになっています。
投稿元:
レビューを見る
かつて炭鉱で栄えていた北海道の過疎地が舞台。寂れていく地元をなんとか復興させたいと前向きに頑張る若者たち、流れに任せて日々を送る高齢者たち。閉ざされた田舎町では良くも悪くも住民たちは互いをよく知っている。プライバシーなんてあまり無くて、何かあればすぐ町中に話が広がってしまう。登場人物たちは誰かが困れば助け、誰かに腹が立てば遠慮無くぶつかり、誰かの幸せは一緒になって喜びます。
この本、私が読むべくして読む本だった。
両親はこの本に出てくるような過疎地では無く関東の小都市住まいだけど、私は飛行機で行く距離に住んでおりなかなか会えないので、親不孝をしているよなぁといつも申し訳無く思っている。隣近所さんが何かと気にかけて下さっているようでもう心から感謝してもしきれない気持ち。この本の登場人物たちのように、ずっと昔からその地に住んで互いに良く知っているからこそ助けたり助けられたりがあるのでしょう。そしてこの本には子供が都会に出て行った後の親の気持ちも書かれており、その箇所を読むのは正直ちょっと緊張したのですが、読んでみたら前向きなものだったので救われた気持ちがしました。
過疎化、高齢化に限らず、田舎の小さな町に住むのは絶対に嫌だってずっと思っていました。都会のドライな人間関係の暮らしが自分には合っていると今でも思う。だけど「向田理髪店」を読んで、こういう暮らしもいいものなのかもしれないと思いました。どこに住んでいても、自分の周囲の人たちに対しもっと思いやりを持ち接して行こうと思いました。
投稿元:
レビューを見る
奥田英朗さんの「ほっこり系」は大好きなんですがこの作品だけは、イマイチだったかな。
登場人物に味があるのが奥田さんの醍醐味なんですが、この作品からはあまり魅力的な人が出てこなかった。。
それが最後まで続くもんだから、なんか退屈な感じ。
投稿元:
レビューを見る
旅先の地元雑誌で書評をみて。
といっても、何が書いてあって、何に惹かれたのか全く覚えていない。
そのせいが、読み出してしばらくとても怖かった。
基本的にはホラーは好きでないので読まないが、ホラーと分かって読んでいれば怖くない。
ミステリーの殺人事件も怖くない。
というよりかは、追い詰められた状況が続き過ぎると誰か早く殺されてくれ、と願ったりもする。
連続殺人も刺殺死体も、怖くない。
それらは非日常だから。虚構だから。
それに対して、若者が街へ流れ出すような、
町おこしをやってもやっても成功しないような先細りの田舎の町、には現実感があった。
そして、その現実感の中で、かろうじてバランスをたもっているような、幸せとも言えないような「日常」が崩れてしまうのではないかという恐怖感だった。
何が悪いことが起こるのではないかと思うと、読み進むのが怖かった。
だが、実際には全くもってそれは自分の思い込みで、酷い話ではなかった。
映画のロケ地になるという一大事件も起きるが、
過疎の問題が解決した訳でも、町が活性化した訳でもないし、主人公の床屋には相変わらず客が来ない。
ドラマチックな展開は何もない。
でも、ほんの少しクスッと笑えて、ほんの少し心が温まる良い作品だった。
投稿元:
レビューを見る
北海道の苫沢町という、元は炭鉱で栄えたけれども今は過疎化が進んでいる小さな街を舞台にした連作短編集。小さな町でお互いみんなが知り合いであるが故に、何かあったときの助け合いや温かみもあれば、秘密がなくプライベートもなく、という田舎町特有の不自由さもあるさまが、軽やかに描かれていて、読んでいるだけでこの街がなんとなく好きになる。
第一話は、向田理髪店の息子が、札幌でのサラリーマン生活を早々に辞め、苫沢に戻って理髪店を継ぐ、と宣言するところから始まるお話。後を継ぐという気持ちは嬉しいものの、子供には都会で成功してもらいたいという親の葛藤がまざまざと。そんな親心を知ってか知らずか、苫沢の町おこしまで考える若い息子たち。このお話で、この街の様子がすごくイメージしやすくなった。どっちの気持ちもわかるけど、若者たち、頑張って欲しいな。
第二話以降も、苫沢で起きる出来事に、町人たちがあれこれ関わり出ていくところが、なんだか微笑ましかった。こういうことってあるんだろうな、みんなが助け合っていていいな、でも都会のクールさも捨てがたいんだろうな。
投稿元:
レビューを見る
題名が気になり買った一冊。
過疎地のちょっとした話だった。
まだ残る昔ながらの人との繋がりは、今の若者達には受け入れてられないんだろうなと感じた。
今までミステリーとかホラーとかの小説ばかり読んでいたから、こうゆうのんびりした小説は気分転換になり良い。
続きがあるならまた読んでみたい小説でした。
投稿元:
レビューを見る
連作ものだが、それぞれのストーリーが無理なくほのぼのとして大変読後感がよい。それぞれの立場にそれぞれの悩みや喜びがあって、それが集まってひとつの村が回っている。主人公は普通の人で、かつ少し客観的なところがよい。また読み返したくなるくらいに気にいった作品。
投稿元:
レビューを見る
こういう町は、結構あるんだろうなと思う。
私の母の実家も、北海道の田舎。
だから母も弟も妹も、みんな大人になったら町を出て行ったので、祖父母も康彦たちと同じような気持ちだったのかなあ。
私は子供のころほぼ毎夏行ってたけど、よく考えたら子供とその親、そして老人ばかりで「独身の若者」と呼べる人がいなかったもんなあ。
舞台が北海道ということもあって、つい祖父母と重ね合わせて読んでしまった。
投稿元:
レビューを見る
田舎の悪いところばかり書くんじゃなくて、良いところばかり書くんじゃなくて、いいところも、良いところも、人生ってそんなもんだよねーって感じなところも、書いてる短編集。
奥田英朗さんの小説は、読後感が良いのはなんでだろうなー。読んで良かったってなるものなー。
投稿元:
レビューを見る
北海道の過疎の町に起こる出来事。
でもそれらひとつひとつは、町民にとっては大事件。
小さい町での人間関係は、時に煩わしさを感じるけれど、助け合いの関係性にほっこりします。心温まる物語です。
投稿元:
レビューを見る
かつて、炭鉱で栄えた北海道の苫沢町。今では、すっかり寂れ高齢化ばかりが進む。そんな町で起こる様々な騒動と人間模様を温かくユーモラスに描く連作集。
投稿元:
レビューを見る
*かつては炭鉱で栄えたが、すっかり寂れ、高齢化ばかりが進む北海道苫沢町。理髪店を営む向田康彦は、札幌で働く息子の「会社を辞めて店を継ぐ」という言葉に戸惑うが…。(表題作)異国からやってきた花嫁に町民たちは興味津々だが、新郎はお披露目をしたがらなくて―。(「中国からの花嫁」)過疎の町のさまざまな騒動と人間模様を、温かくユーモラスに描く連作集*
過疎化の進んだ、一見未来も魅力もない片田舎に生きる人々の物語ですが、悲壮感や閉塞感はありません。
既に打開策を試し、その失敗や経験を踏まえたうえで、自分の子供たちには未来ある土地で自由に暮らして欲しいと願いつつ、淡々と過疎化を受け入れる主人公たち。小さな町ゆえの小さな諍いやお節介も、厄介なものではなく、あたたかいものとして描かれています。
特に心に響いたのは、「逃亡者」編。犯罪者の息子を出した家に対する、町民みんなの思い。‘‘小さな町だから、一人の悲しみでも、みんなに伝染するのである‘‘・・・小さな町だからこそのフレーズ、小さな町だからこそ出来るこれから。ほのかに明るいラストにもホッとさせられます。
投稿元:
レビューを見る
過疎地の話。
特に大きな事件があるわけでもないが、この作家さんの作品は読んでて心地よい。
田舎の距離感であったり誰でも知り合いで詮索好きで偏狭な感じが、本だからまだいいけど実際あったらヤダな。って感じだったけど、最後の和昌の言葉に、「ほお!」とちょっと感動!