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◎概要
本書はタイトルにあるようにオフィスラブ、つまり職場恋愛について、日本の現代小説に描かれるその模様を糸口に労働団体の職員でもある著者が時に現実の法制度や統計を参照しつつ、時に自身の経験とともに日本の職場における恋愛についての連載記事をまとめたものだ。
◎感想
本書は労働団体職員である筆者の立場からかかわりの深い、弱い立場の労働者を支えるための資料やデータが多用されている。本書がオフィスラブというテーマを扱うため、作品の筆者に女性が多いこともあるだろうが、主に女性労働者の視点が多い。
一方で筆者は男性であり、その語りは本書の最終章で触れられるが、職場での主に男性が振るう権力性に触れた部分として以下の指摘が興味深かった。第3章「絶対安全不倫小説」での東野圭吾著「夜明けの街で」における、職場における不倫の「言えなさ」については、「オフィスラブで、かつ不倫の場合、言えなさは頂点に達する。当事者にとっては職場(公)で人に言えないだけでなく、家庭(私)でも隠し、嘘をつかなければならない。その関係性には存在の足場もない。『公』と『私』という二つの丘の裂け目、暗い暗い谷底での恋愛になる」(本書37頁)というようになる。しかし、両者が対等ではないこと(男性が正社員で女性が派遣社員)や男性側にとって都合のいい物語であることを指摘している。
また、筆者自身の語りとしての第12章「オフィスラブと『私』の物語」では、筆者が最初に入社したテレビ業界における先輩男性たちと話していて感じたという「損している」という感覚の話は、男性が振るう権力性の動機として興味深い。「当時の先輩・上司だったテレビ業界の男たちは~話していても魅力的な人が多かった~ただ、成功者でマジョリティである彼らと話していると、根っこのどこかに『損している』という感覚があるように感じた。『損している』と感じているから、それを取り返そうとして、過剰に仕事に依存したり、とっかえひっかえ若い子に手を出したりする。そうして自分の家族との距離をさらに広げ、『損している』という感覚を深めていく~彼らは傍からは強者のように見えるが、どこか取り返しのつかない虚しさを抱えている。それは、仕事とジェンダーと社会との関りから生じる構造的な虚無感であり、『損している』感覚だと思った」(本書187頁)。この部分は筆者がその後、自分の人生に対して選択を迫られ勉強するきっかけになった事だったという。
タイトルのポップさのわりに見えてくる日本の職場の特性やその描かれ方が時代とともに変わっていく有様など、今を考える上でも重要な指摘や気付きがある本だった。
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二ヶ月以上、1日も休むことなく働いていると、休日の過ごし方が分からなくなる。久々の休みは嬉しさよりも戸惑いのほうが大きかった。
私はその働き方を「合宿状態」と呼んでいた。スタッフは、寝食をともにしつつ寝食を忘れて仕事をするので、四六時中一緒にいる。すると公私もへったくれもない関係になる。(中略)私は最初の就職でオフィスラブの魔窟のようなところに飛び込んできたわけである。(p.185)
女性社員にすぐ手を出すことで知られる、自分の父親くらいの歳のプロデューサーが、あるとき私にこんな話をした。
「おれはこんなに家族のために頑張って働いてきたのに、家族は分かってくれなかった」。その言葉を聞いたときに、やっぱりそうなんだ、と思った。彼らは傍からは強者のように見えるが、どこか取り返しのつかない虚しさを抱えている。それは、仕事とジェンダーと社会との関わりから生じる構造的な虚無感であり、「損している」感覚だと思った。私は、本当にこういう人生を送りたいのだろうか?(p.187)
人生には埋めるべき時間が多すぎる。何かをするよりも、何もせずに一生を終えるほうがはるかに難しい。私たちは望むと望まざるとにかかわらず、膨大な人生の時間を細切れの用事や習慣で埋めなければならない。その大変な作業に汲々としている。(p.198)
人生とは、誰もが途方に暮れる巨大なジグソーパズルのようなものではないか。「仕事」はそれをガツンと一気に埋めてくれる、唯一にして最大のピースだ。そのいっぺんさえ心地よく納得のいく形にすることができれば、他の小さなピースを必死になって集め続けなくても大丈夫。だから多くの人にとって「仕事」は特別で、大切なのかもしれない。そう思った。(p.190)
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日本人の多くが直接的・間接的に経験しているであろう職場恋愛 a.k.a.オフィスラブを研究した一冊。各章でまず小説が導入に用意されているので入りやすく、そこから恋愛というより労働の観点からの堅い話に移行していく流れもスムーズ。何より日本の労働に関する分析それ自体がめちゃくちゃ興味深い。日本は諸外国と比較してもオフィスラブが多いそうである。なぜ?と思った方はぜひ本書を手に。
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思っていた本と少し違ったけど、小説の紹介を通して昔のことが少し知れる本。
BGが英語圏で売春婦を意味するのではと噂が広まり、東京オリンピックを機にOLになる。
結婚したときは退職する念書
女性のみを30か35で定年とする就業規則(1967あたり)
福岡セクハラ訴訟(1989)
1997年改正の際にセクハラについて努力義務
2006年に措置義務へ強化
セクハラと権力 最初良くても結果アウト
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思っていたものとは少し違っていた。ある小説を題材に、その章ごとにオフィスラブについて見ていくという形だった。それぞれの本が読んでみたくなる。時代としても、ウーマンリブが叫ばれ、腰掛けで勤める女性も多い中、そうじゃない女性が増えてきた頃の話が多かったのも、オフィスラブとは、のひとつなのだと思う。
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テレビ局勤務→労組の人。『東京ラブストーリー』論をチェックのために。ちょっとちがうんではないかと思う。
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究極の公私混同…ほんとそうよな。職場内で結婚する人恋愛する人がこれだけ普通にいてこれだけ普通に受け入れられてるの、よく考えたら変だしなんならちょっと気持ち悪い(自分のことは棚に上げる)。職場の仲間として、から個人的に親しい人間としての関係に踏み出す一歩というか、その越境行為をする人の勇気ってすごいよな…などと本の内容とはあまり関係ない感想。
内容はオフィスラブの出てくる小説評論みたいな感じです。