紙の本
心地良い虚無感に包まれる
2020/08/30 23:16
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
サーバ管理の本業の傍らで仮想通貨をかじることになる主人公と、小説家志望の同僚ニムロッドの掛け合いを中心とした中篇。虚無から価値を産み出す仮想通貨を扱ったストーリーが、登場人物のどこか人生に対して投げやりな雰囲気と相まって、現代的な虚無感を表現している。
ストーリーの合間に挟まる、飛行機開発史における役に立たなかった機体の話も良い。人は何のためにこんな飛行機を造ったのか、誰も止めることはできなかったのか。仮想通貨にしろIT土方にしろ、というより今の社会で、何のために何かを生産しているのか、人はなぜ…みたいな心地良い虚無に包まれる一冊
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村上春樹感と芥川賞感。
不安定な精神性を難解に、かつ社会風潮と混ぜ合わせ表現する。
仮想通貨自体は重要なテーマではなく、「価値がある」とは「価値がある」と記銘されることにより成り立つその性質が、バベルの塔的な古代からの人間の欲望の現代版で、その先には、「価値のない」駄目な飛行機への欲望が生じる。一方で、駄目な飛行機にも仮想通貨の採掘にも限りがあり、その先には…と、構造をもう少し深掘りして、田久保紀子の堕胎との関係も含めて考えたい気持ちになる。
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第160回芥川賞
いい意味でとても現代を描いていた。
仮想通貨をテーマの軸にITやらロックに文学に。つめこんでいい感じによくわからない作品に仕上がっていた。だけどリズムがいいから読みやすい。わたしは好き。
『ダメな飛行機コレクション』(NAVERまとめ)をググったのはわたしだけではないはず。。。
とにかくちょうどよかった。不気味さや、わからなさが、いい具合でわたしは好きでした。
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芥川賞受賞作ということで手に取りました。
ビットコインとPCのサーバーを守る主人公の中本哲史、
小説家志望だった同僚の荷室仁、
過去のトラウマを持ったキャリアウーマンの恋人の田久保紀子の間で繰り広げられる物語。
仮想通貨やIT関係のことがそれ程詳しくないので
頻繁に専門用語が出てくるので内容を理解するのに大変でした。
ビットコイン、ITの仕事も目の前で見えるものでないので、
リアリティーが無いので更に無機質に思えてしまいます。
主人公の無意識に涙が出ているのというのが
よく出てきますが、これはこのような無機質の中にいるから
感情が上手く表に出せない心の叫びだと思えてしまいました。
唯一恋人とのやり取りがリアリティーを持っていましたが、
それもどこか淡々としていて掴み所がなく、
その後の行方が分からないのが気になりました。
仮想通貨、ITなどが中心になるということは
現代社会の象徴というものであるので、
それを上手く表現されているのかとも思います。
この無機質なものが今の時代でもあり、
この先にあるものはバベルの塔のようになるのか、
だめになった飛行機のようになってしまうのかを
問われているのかと思いました。
あまり登場人物の心情が伝わらなく、
心に響くようなものが無かったのが少し残念です。
読解力が乏しいのもあり、
やはり純文学は難しく奥深いものだと
痛感させられた作品でした。
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芥川賞受賞作品って、自分の好みで好きか嫌いかが出ると思うんです。
「ニムロッド」。私は大好きになりました。
本の帯には仮想通貨小説と書かれていて、私自身、あまり仮想通貨の知識は薄いものだったんですが、でもだからこそ興味深く感じました。
僕の"日常"とニムロッドこと荷室さんの書いた小説の空想世界が行き来する感じ。自分がまさにその空間上にいるような気になりました。本当の世界はどっちなんだろう、そんな気分になりました。
あ、そうそう。ダメな飛行機コレクションと荷室さんの解説も興味をそそられました。荷室さんはただ単に"ダメな飛行機"の解説をしてたんじゃなくて、ヒトに対しても問うてる感じ。なんだか考え方も私と似ていて、親近感が湧きました。
読了しても尚考えていた、
Q1田久保紀子と荷室さんはどこに?
Q2僕の涙は結局なんだった?
Q3山岡くんは最初の登場で最後だった?
Q4バベルの塔の主=ニムロッド=人間の王 ?
Q1 2人とも死んだのか?田久保紀子は東方洋上に去った?荷室さんは飛び降り?
Q2 この涙の意味は本当になんだったんだろう…
Q3 最初に出てきた山岡くん。その後の登場はなかったように思う…がもしかしてどこかでひっそりと出てきていた?でなければ、なぜあまり関わりがない登場人物に名をつけたのか。同僚からのメールではダメだったのか?
Q4 ニムロッドは、バベルの塔では塔を壊し、荷室さんの書いた小説の中では塔をつくっている…。どんな意図だったたんだろうか…自分のものでないと気がすまなかっただけ?
まだまだ読み足りないようなので、今度は図書館で借りるのではなく、買ってみたいと思います。
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いまの社会を生きる寂しさがずっともったり流れてるような気がした。
仕組みが高度化して、もはや社会だとか仕事だとかが個人の手に抱えきれなくなった現代の、心の隙間のグレーなところが浮き彫りにされている感じ。こういうところをしみじみ感じられるのが小説よなあ。小説いいなあ。
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IT版村上春樹、新世紀エヴァンゲリオン、satoshi satoshi satoshi...
なるほど、芥川賞。この説明しきらないような感じ。時間を置いて再読したくなる。
ビットコインという社会現象が文学として確実に切り取られて、そして賞を取ったということに時代の区切りを感じた。
夢への挫折とか、遺伝子検査での発覚したDNA異常とか、究極的には1人で抱えていくしかない苦しみは途方もなく辛い。
だからこそ、彼らの目には、この主人公が魅力的に写るんだろうな。
ニムロッドと田久保紀子が、互いの影を瞬時に理解する場面は一生忘れられない。
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ビットコインを切り口にして、人間を人間たらしめるものは何かを問う。
たとえ失敗すれども、無用の長物と言われようとも、何かを追い求める姿こそ、
人が人である理由なのでしょう。
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この人の言葉の使い方とても好き。
ただ
ビットコイン小説ってのは何か違う気がする…
あと
最後、わかりません。。涙
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人間は意味がないと生きられないのか。ただ「ある」だけではダメなのか。
「個」としての存在意義と「種」としての合理性・生産性のあいだで揺さぶられがちな現代社会で生きる意味、生きる実感を繰り返し問いかけられる。
理屈だけじゃ生きられないし、願いは叶いすぎても叶わなくてもつらくなるし、やっぱり生きるって「業」なんだなと思った。
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正直理解が難しかったところは多い。
ビットコイン採掘に関わることになった主人公。ビットコインによって積み上げられる価値と、バベルの塔をなぞらえニムロッドの虚無感みたいなのを感じた。
仮想通貨、だめだった飛行機コレクション、出生前診断。進化の前には挑戦があり、それで多様性が生まれるのに、やる前からすべてわかっていたら誰もやらないんじゃないだろうか。
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まさに今風な「仮想通貨」を扱った小説。
ざっくり「仮想通貨」の仕組みも?解ったね。
システム保守管理(サーバー)の仕事をしていた主人公は
ある日社長から、「仮想通過」を掘り出す任務を与えられる。
「採掘課」と名づけられその課の課長(課員=0)となった主人公は、日々「仮想通貨」の採掘を行なう。
小説家志望の元同僚の二村(通称=ニムロッド、今は名古屋支店に勤務)とのLINEのやりとりが、随所に挟まれた2元的な構成。
でも、このやりとりいらなかった気がする?
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現代の空気感が感じられる作品であるのでそれはそれで楽しめた。芥川賞と言う事で期待していたが、期待し過ぎた。
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第160回芥川賞受賞作。
こちらも出張の飛行機の中にて読了。
サーバー保守業者が始めたビットコイン採掘。それをアサインされた新任課長と心を病んで異動した先輩、そして中絶をして心に傷を持つガールフレンドとの交流を通し、人間の生きる意味を問う。
中本が主人公であるものの、作者は小説を書くニムロッドに色んなものを投影しているんだろうな。
三者三様だけど、それぞれ共感できるところあり。この不思議ちゃん感が芥川賞だな。
ビットコインを題材にしたけれど、後の時代で理解されるかどうか。
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「今年の芥川賞は、仮想通貨がテーマ」ー。
そんな売り文句から手にとってみたわけだが
仮想通貨の本質を哲学的に捉えたアウトライン、
そして激情はなくどこか諦念のようなものを抱えた登場人物により一気に本書の世界観に引き込まれた。
SlackやNaverまとめ、Wikipediaなど現代的な舞台装置が世界観への没入に一役買っている。