投稿元:
レビューを見る
短編集。
セーター。家族。人形。ひょうたん。マンホール。
パン屋。商店街。
『本の雑誌』2019.4にて。
なんか妙で、どれも少し怖い。
『せとのママの誕生日』が好きかな。
好きって思うのもまた違う気がするけど、この気持ちはなんだろう。
投稿元:
レビューを見る
どの短編にも自分の価値観だったり自分だけのルールであったり、人から見れば変な人に映りそうなことが描かれているけれど、その独自のものを持っているということ、違和感や居心地の悪さすらも受け入れて生きていくこと。そうしたものを持っている人は強い。どこに行き着くのかわからない展開と思いがけない結末。思い込みや見えるものだけに支配されているということ、そういうものの外側にある自由。落ち着かなかったり、不安な気持ちにさせられたりハッとしたりと様々な価値観に出逢える作品集。
投稿元:
レビューを見る
本と雑談ラジオの課題本で読んだ。食べ物がいちいちあまりおいしそうじゃなくて、住んでいる場所などもさっぱり魅力的ではないのだけど、一般的な生活とはそういうものだと改めて思う。登場人物が、もし自分にバイトの採用で決定権があったらあまり採用したくないタイプばかりで、そんな雰囲気の中何か物騒なことが起こりそうな不穏な雰囲気があって、ところどころに濃厚に死の匂いが漂っていてハラハラする。決定的な事が起こらないまま終わってくれると安心するのだが、物語の後ではきっと起こっている感じがする。
投稿元:
レビューを見る
一見ありきたりの日常のようでありながら、どこか違和感があり、それが徐々に膨らんでいく作品六編からなる短編集。
子守りを頼まれた独身女性や元チアリーダー、保育士、パン屋の娘など、物語の中心にいるのはみな不器用で少しずれた感覚の持ち主ばかり。小さな違和感が次第に大きくなって、しまいにはかなり困った方向へと転がっていってしまう。
でも、ホラーやイヤミスと違うのは、怖いほどの状態に陥っているにもかかわらず淡々としていて、どこか滑稽ですらあること。これがわずかな光明となってぎりぎりとところでバランスを保ち、後味の悪さを軽減しているのだろう。
まだ作品数は少ないけれど、今後も読みたい作家のひとりだ。
投稿元:
レビューを見る
タイトルと表紙から、父娘のほっこりした「いい話」を予感していたが、これまでの著作同様、不穏な気配はどの話にも流れている。正常と異常をギリギリの際で行ったり来たりする、この著者独特の雰囲気が健在であることに、ほっとする。
「白いセーター」「ひょうたんの精」そしてタイトルの「父と私の桜尾通り商店街」が特に良かった。“ウリキンウワバ”が実在するのには驚いた。
投稿元:
レビューを見る
短編集6編
いわゆるちょっと変な人をずれたままの感性で現実に置いた様なお話.「白いセーター」が良かった.
投稿元:
レビューを見る
芥川賞受賞作「星の子」もあまり印象に残らなかったが、本作も短編6編で、それほどドラマティックな作品ではなかったが、それなりに感じるところはあった。いずれも世間の底辺で生活する小市民を描いており、これが格差社会が生み出した日本の姿なのかなあと嘆息する。しかし驕るなかれセレブたちよ、世間に不満が充満すると昨今のような無差別殺人が発生するのだ、治安の良かった日本がいつまで続くことやら。
投稿元:
レビューを見る
思い込みが激しくて、何かの拍子に軌道を逸脱してしまう女たちの6つの物語。
最初の物語を読み始めたとたんに気持ちがざらつく。
「不器用な私たち」とかいうレベルじゃない。空気を読めない生きづらい私たちどころじゃなくて、平穏な社会生活から完全にはみ出すレベルのこだわり具合、ある瞬間に社会生活の均衡を保っていた針が振り切ってしまう姿はただ恐ろしさしか感じない。
辛うじて受け入れられたのは「ひょうたんの精」のなるみ先輩だけかな・・・
投稿元:
レビューを見る
なぜだろう、この少し風変わりな6つの短編が
私にはとても懐かしく感じられてしまうのは。
私もその昔、預かった子どもに怪我をさせたことを隠したり
よその家にあった人形をこっそり持ち帰ったり・・・
なんてことをしでかしたことは一度だってないのに
気持ちはまるでデジャヴなのだ。
この物語の登場人物たちはみな、少しずるかったり人を利用したり嘘をついたりする、
実にアクの強い人々だ。
そんな人間臭さがもしかしたら
今の世の中から急速に姿を消そうとしているのでないか。
でないと、今感じている猛烈な懐かしさの正体が
説明つかないんだもの。
投稿元:
レビューを見る
普通に見えて、どこか歪んでいる。
普通に見えて、どこか欠けている。
不思議でクセになる世界。
心地いい。
投稿元:
レビューを見る
世の中の「ちょっとズレている人」を生き生きと描く。今村夏子節がドンドコ鳴り響く6つの短編集です。
今回の作品は、読み進めていけばいくほど、思い切り変人っぷりを発揮していく主人公たちが生かされています。
変わり者で不器用、一生懸命になればなるほど、さらに変人の沼に溺れて孤独になっていく主人公たちの物語。
その中でもお気に入りが3編。
4.若い頃、スナックのママに育てられ、認められ、クビにされた私たち。今日はママの誕生日。本人眠りの中、思い出話に花が咲く。
ママのハラスメントに、読みながらおへそや乳首がヒリヒリしました。
5.道路工事の若いあんちゃんに恋をしたのは、学童保育のみっこ先生。みっこ先生、一途で空気読めない、とんちんかんな人。
6.商店街の住民たちから長年疎外されているパン屋。年老いた店主が店をたたもうとしたある日、娘がおかしなやる気を出す。
今村夏子作品、これで読破しました。
その中でも私が特に好きなのは、こちらあみ子、星の子、あひる です。
投稿元:
レビューを見る
女性が主人公の短編集。どの作品の主人公も世間の真ん中では受け入れてもらいにくい人生を送っている。それでもなんとか自分の世界で「うまくやっていく」方法を探しているように感じた。必死というのではないが、ささやかな努力とでもいうのだろうか。
ストーリーはごく日常茶飯事を描きながら、主人公たちの生きずらさを表現している。
今までにない不思議な雰囲気と読後感を持った。
投稿元:
レビューを見る
六編からなる短編集。収録されている「ひょうたんの精」「モグラハウスの扉」などは、作者のユニークな感性が編み出した作品といえる。「父と私の桜尾通り商店街」は不器用な生き方しかできない親子の物語。
どの作品も特別に面白いわけではないが、最後まで読まされてしまう。
投稿元:
レビューを見る
芥川賞受賞ときいて過去作品をチェキ.スッキリしない,割り切れない話のとじかたがトレードマーク.通勤読書には少々ツライ.
投稿元:
レビューを見る
どの短篇も秀作です。
分かりやすい文体で、読めない結末。
その先の展開は読者次第。
収録作品
・白いセーター
・ルルちゃん
・ひょうたんの精
・せとのママの誕生日
・モグラハウスの扉(書き下ろし)
・父と私の桜尾通り商店街