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タイトル通りの本. 想像以上に読みやすく満足
筆者はロンドンを拠点に活動をしているジャーナリスト.内容は中立的で放射”脳”の人の愚かさも指摘している.個人の見解ではなく取材した内容に基づいて各地の状況などをうまくまとめている印象.福島についても日本人のフィルターを外した見方はある意味客観性を与えるものになっていると思う.
最初に結論をかくと,核や各被災地の当時や現状,そこにいる人々や環境を知ることができ,知的好奇心満たされるいい本だった.
知らない地名がたくさん。自分はチェルノブイリ、スリーマイル島、福島、東海村ぐらいしか知らなかった
こんなに色々なところでとんでもない回数・規模で核実験していたし事故も起こっていたのは知らなかった.
冷戦,キューバ危機.この辺りの緊張感は当時すごかったんだろう.
チェルノブイリはいまだに高度に汚染された状態ではあるもののそこで暮らしを営む人もいるらしい。
災害地ツアーもやっているらしい.
また,人が立ち入らなくなった地域は自然の動植物が栄えているらしい。自然との共生というのは簡単だけど動植物は核よりも人間がいないほうが栄えられるらしい。
(放射能の影響を受けているかどうかはわからない。しかし、人間と違って子孫を生んで50年も60年も生き延びようなんてことしないから仮に影響を受けていても命のサイクルは回っているんじゃなかろうか .まあ何より,人間がいないことがいいんだろう)
福島が顕著だけど人体に対する核災害の影響は身体的なものよりも精神的なものが大きいことがわかる.
一般人はもはや何を信じていいかわからず「危ないから逃げろ」という無難な意思決定をひたすらしている
専門家や政府機関が発信する情報を吟味することもなくただネガティブに騒ぐことしかできなくなった哀れな群衆が一番怖いな.
「住民は科学者のいうことを受け入れようとしません.彼らにとって科学者は原発の味方なのです」
(そういえば,原子力工学を専攻し原発関係の仕事に就いた友人も同じことを言っていた.当時の私は半分信じつつ,半分メディアに踊らされたんだな)
今流行っているコロナウイルスも同じことが起きている.
そのた,メモ
・女性の水着の「ビキニ」は核兵器実験場のビキニ環礁が由来。
・水爆と原爆はやっていることが逆。しかし水爆を発火させるために原爆が使われる
・ラスベガスで(核実験による )、キノコ雲を見ることがファッショナブルな流行だと言う時代があったらしい
・高速増殖炉ってプルトニウムの消費量を上回るそれの生産量を持つ原子炉だったんだ(無限じゃん )
・ソ連、結構めちゃくちゃ。全体主義の社会では個人の核汚染や生活は知らんぷりで強引なことをする。この無茶苦茶なソ連のシステムの限界(全体主義)をチェルノブイリの事故が象徴しているらしい.
・福島事故二年後の子供の甲状腺癌の増加の調査によって「想定の30倍も甲状腺癌が発見された」と報道された件は検査をすることでそれくらいの数字は出るだろうというもので放射線の影響と断定できるデータでは���いらしい.
(そもそも事故から2年では顔が発症するのに十分な時間ではないらしい,今後の経過観察のためのスクリーニングとのこと)
・放射線(アルファ線,β線,γ線)のうち「シーベルト」という単位で取り扱うのは「アルファ線」
・核の問題は施設止めるだけではなく,施設を解体し放射性物質や土地の除染をどうするかなど課題は山盛り.イギリスには発電所としては使わないけど22世紀まで解体しない原子炉があるとのこと. 原子力発電って限られた利益と予測不能で無限にも見える将来の負債を持つ性質がある.負のブラックスワンだ
壊れたテープレコーダーのように核の危険をセンセーショナルに訴える放射”脳”の人はこういうの読まないんだろうなあ.
(突然故郷を破壊され,生活の基盤全てをひっくり返された現地の人たちが疑心暗鬼になるのも無理はないとは思いつつ,放射”脳”には個人的にも否定的.)