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SFファンタジー小説だが、ライトノベルチックか。
物語的には少々消化不良だ。
最新テクノロジーがふんだんに盛り込まれている訳ではないし、AIブームの前からでもありそうな物語ではある。
話は3人の主要登場人物の視点で描かれる。(登場人物自体は他にもいる)
一人がAIロボ開発者の深山(女性)。
そしてそのAIロボの購入者である鏑木(男性)。
鏑木の大学の先輩でエリート医者の夙川(男性)。
深山と鏑木がAIロボを通じて恋愛関係になるのかと思いきや、結果そうではない。
夙川はエリートだが、すごいコンプレックス持ちで、幼馴染の親友である詫間(男性)のことを恋愛感情として見ている。
夙川は詫間とそっくりのAIロボを隠し持ち、自分を慰めている。
結局この小説の主人公は夙川か?それにしてはチープな同性への片思い物語だ。
色々と物語上の要素が足りない。
それぞれのキャラクターが、絡んでいないのだ。
特に深山というキャラクターが意図的に個性的に描かれているにも関わらず、実はストーリー上そんなに重要な役で無くなってしまっている。
結局は、鏑木もあんまり重要じゃない。
AIロボの購入者ではあるが、最後に取り付けたオチがあるだけで、展開は強引だ。
物語の核が、夙川と宅間の同性への恋心になってしまい、AIロボがいなくても成立する話になってしまった。
なんだか勿体ない話だ。
上手に物語を組み立てれば、伏線の貼り方次第で面白く出来たのにと思ってしまう。
鏑木とぴぷるの関係がそういう意味でのオチなのだが、結果的に効果的に描かれていない。
AIロボがディープラーニングで、人間とAIロボとの関係性を最適化しようとすればするほど、人間には「心」がある以上、溝が深まるばかり。
結果的にAIロボは「自分がいない方が、鏑木の満足度が上がる」という計算結果になってしまうために「自滅の道に進んでしまう」というオチ。
これは面白いし、未来でディープラーニングが進み過ぎると十分にあり得る話なのではないだろうか?
AIロボには心が無いはずなのに、「私と一緒にいると彼を不幸にしてしまう」というこじらせ恋愛女子のような行動を取ってしまうというのは、これはこれで面白いのではないか?
このオチを中心に、鏑木と深山の人間同士の恋愛を絡めていけば、ストーリーが面白くなったのにと思ってしまった。
そんな事を想像しながら、読んだ小説だった。
と言いつつ、これはこれで若者たちが軽く読めるものとしてはよいのではないだろうか?
(2020/4/30)