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第161回直木賞受賞作
竹本座の座付き作者として操浄瑠璃の「妹背山婦女庭訓」や「本朝廿四孝」などを生んだ近松半二の生涯。
語り口調でポンポンと調子良く進む展開はまるで連続ドラマを見ているよう。
文楽は人形遣い・太夫・三味線の三位一体であるため、歌舞伎のように役者の個性やアドリブが効かないため、歌舞伎に押されていってしまったんだろう。
実際の文楽を見ると、逆に話の中身がより入ってくるようで、両方から見ると面白いのだけれど…。
半二の生涯としては楽しめたが、もう少し人形浄瑠璃に踏み込んでも良かったのではないか。
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江戸時代の浄瑠璃作者、近松半二の一生を描いた作品です。
近松半二って誰?近松門左衛門の名前だけなら知ってるけど・・・
浄瑠璃も歌舞伎もちゃんと見たことないんだよなあ・・・
題名の「妹背山婦女庭訓」なんて読みにくいし、なんだか難しそう・・・
・・・という、私のようなずぼらな人間でもちゃんと楽しめました。時代小説が苦手だったり、浄瑠璃や歌舞伎の知識に乏しくてもたぶん大丈夫です。
大坂で生まれた主人公・穂積成章は、浄瑠璃狂いの父親の影響で自身も浄瑠璃の魅力に取りつかれます。ある日、近松門左衛門の硯を父親から貰ったことをきっかけに、自身の上の名を「近松」、下の名を「半分が二つで一人前」という意味から「半二」と名乗ることを決め、その硯とともに浄瑠璃の作者としての道を歩み始めます。
何といっても半二の生き生きとしたキャラクターがすごく良かったです。
こういうのを浪花節っていうんですかね?
めちゃくちゃ破天荒だとか、型破りだとかいうわけではなく、市井の人々と同じような雰囲気をまとっているのに、どこか読者をわくわくさせるような魅力を感じます。物語の後半、時代の流れで歌舞伎の勢いに押され、浄瑠璃は徐々に人気を失っていくのですが、それに懸命に抗う半二の姿にも胸を打たれます。
議論を呼びそうな最終章「三千世界」で登場する新たな語り手も、物語のアクセントとして位置付けるのであれば十分ありだと思いました。ただ、「妹背山婦女庭訓」の中身が断片的にしか描かれていないので、これが大いに評判を呼んだという部分がいまひとつ実感しにくかったところが個人的には少し気になりました。
ところで本書、ソフトカバーですが製本はかなり凝っていて、帯も含めて手触りや紙の質感、見開き部分などで細かな工夫がなされています。
改めて紙の本っていいなあと思いました。
電子書籍よりも紙で、できれば文庫化を待たずに単行本で読んでいただきたいですね。
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(2019/07/14に書いたレビューですが、続編を読んだので、わかりやすくするために本棚の場所を変えました)
青山文平さんは能を素材にした『跳ぶ男』、吉田修平さんは歌舞伎を題材に『国宝』を書いている。本作は人形浄瑠璃の世界が描かれていた。大きく違うのは、2作が演じ手を主人公にしてあるのに対し、本作は主に書き手側からの視点に立っているという点だろうか。戯作者・近松半二が出世作『妹背山婦女庭訓』を創作するまでの経緯や苦労が語られている。小気味よい関西弁に引っ張られながら読み進める。
人形浄瑠璃”文楽”は知っていたが、江戸の頃は操浄瑠璃と呼ばれ歌舞伎と人気を分かち合っていたらしい。現代の文楽の衰退からはとても想像できない。
半二は、江戸時代に芝居小屋が立ち並ぶ大坂・道頓堀で大阪の儒学者・穂積以貫の次男として生まれた。浄瑠璃好きの父に手をひかれ芝居小屋へ通い出す内に、無類の浄瑠璃好きとなる。浄瑠璃作家と云えば近松門左衛門、その門左衛門の硯を半二は父・以貫からもらい戯作者の道へ進んだ。
恥ずかしいことに、半二の代表作となる『妹背山婦女庭訓』は今まで知らなかった。(『庭訓』は親が家庭で子に授ける教訓や家庭教育)。弟弟子に先を越され、人形遣いからは何度も書き直しをさせられ、それでも書かずにはおられなかった半二の苦悩は切ない。作家仲間たちの中には虚に食われて筆を折る者も居た。文楽人形を操る人の研鑚、興行座の経営などがライバル視する歌舞伎と相乗しあう。
近松門左衛門が提唱している「虚実皮膜」。虚と実の世界を行きつ戻りつしながら作品を書き上げること。半二は「観客を翻弄したかったんや。のほほんと座っている観客にまことの妖かしを見してやりたかったんや。この世は妖かしや、この世こそが妖かしやないか。こっちとあっちは別個やない。こっちもあっちや。虚実の渦や」と、語っていた。
タイトルの”渦”はこのことだろう。
『妹背山婦女庭訓』4段を書く半二にはお三輪が乗り移っていた。本文中にあるお三輪の独白の様な詞章に女子が感情移入してしまうのは間違いない。
読後にいつも唖然となる。自分が生まれた国の文化や歴史をあまりにもにも知らなさすぎー。大島さんに半二を取り上げてもらい、文楽の世界を垣間見れたことに感謝したい。
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大島真寿美さん好きなので直木賞受賞うれしい
個人的にあまり時代小説が好きじゃないのですが、それでも読みやすかったです。
序盤からぐいぐい引き寄せてくれる。
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近松門左衛門の硯が、きっかけとなり、芝居小屋に入り浸る事になる近松半二。
歌舞伎、操人形浄瑠璃。
一つの作品が出来上がるまでの情熱。
それは一つの渦となり、世界を尚も広げてゆく。
まさに傑作。
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直木賞を受賞したと聞いて図書館で予約し借りて読んだ。
浄瑠璃は見たこともないが、好きな関西弁でテンポも良く読めた。
印象に残った文章
⒈ 仮に来世があったとしてもや、と半二がいう。それは今生のつづきやない。
⒉ わしらの拵えるもんは、みんなこっちから出てくるのや。このごっつい道頓堀いう渦ん中から
⒊ まるでわしそのものが、この浄瑠璃になってしもたかのようやないか。
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直木賞おめでとうございます。
で、早速手にしたこの本、こういうきっかけがなければ読む機会は無かったのかも。
とは言え、読みはじめたらサラサラ進む。耳元で語られているかのごとく、すっと入ってくる。
人形浄瑠璃の艶やかさが手に取るごとく。
しかも、ストーリーも登場人物もメリハリあって楽しめた。大島さんの本は本当に久しぶりだったけど、これからはまた読んでみたい作家さんのひとりになりました。
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お恥ずかしながら、古典芸能は詳しくなく、
中学生の頃に、芸術を学ぶ課外授業があって、狂言を見た記憶があるのだけど、人形浄瑠璃に至っては、TVの映像で見かけた(一作品通しで見たのですらなく)だけ。
そんな不勉強の私が読んで楽しめるものかな、と不安に思いつつ、時代物は好きなので、直木賞だし、レビュー評価も高いみたいだし、程度の感じで読み始めた。
けれど、気が付くとテンポの良い関西弁の語りに引き込まれ、半二のいる道頓堀に、自分がいるかのような錯覚に陥って、どんどん読み進めてしまう。関東人のくせに、頭の中には、一丁前に関西弁(もどき?)のテンポや抑揚で、半二達の会話が流れ込んでくる。
そうしているうちに、自分まで道頓堀の渦に飲み込まれていくかのような不思議な感覚になる。
半二や正三が、自分の生み出したお三輪や高砂屋平左衛門がどこかからやってきたんじゃいかと思ったり、どこかで生きているんじゃないかと思ったり、虚実混濁していき、今いる自分の世界こそ、誰かが拵えた狂言の世界なんじゃないかと思ったりしていくが、
この本に引き込まれていく私まで、ふと半二や正三のいる道頓堀の世界に自分が今生きている、そっちが本当で、本を読んでる外側から眺めてる自分が虚の世界にいるんじゃないか。そんな渦に巻き込まれていくような感覚になった。
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近松半二の生涯を覗き見る。人生は芝居の如く、締めの一文の洒落が効いてる。時代物なのに、途中ファンタジーになって、カタカナ語出てきた時は、ちょっと興醒めした。それでも、魅力的な作品だった。
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主人公の半二が副題の妹背山女庭訓を産み出す章に引き込まれた。道頓堀の操浄瑠璃の世界、全てが渦になって混沌として、それぞれが影響しあって、何かを産み出す者あれば、飲まれて消える者もあり。本物の何かを掴むには、産み出すには、そこにどっぷり浸るしかない。
読後に調べてみると、近松半二も父の穂積以貫も、妹背山女庭訓も実在するらしい。数年前に、その妹背山女庭訓の公演もあったらしい。
前半は我慢の時というか、華やかな成果もない主人公だったが、妹背山女庭訓から、天才的な立作者となり、今度は芸を極めるとは、浄瑠璃を絶やさず盛り上げるには、という命題を背負い苦しむ姿が描かれる。
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快活なストーリーテラーのおかげで劇場で物語を見ているような気分になる。が、同じような語り口でだらだらと語られる感は否めない。また、「渦」に飲み込まれることで脚本家として大成を果たすということが幾度も書かれる終盤は胃もたれした。
近松門左衛門と聞けば「人形浄瑠璃」や「曽根崎心中」といった言葉が浮かぶ人も多いでしょう。本作の主人公は近松門左衛門ではなく、その硯を持つ近松半二という人形浄瑠璃の脚本家です。半二の目線で描かれる京都や奈良、大阪の町並みや芝居小屋は活気に溢れていて、読んでいるこちらも物語世界にどっぷりとつかることができます。また、人が演じる歌舞伎が広まっていき、人形で演じる人形浄瑠璃が衰退していくなか、人形だからこそ表現できる生身の人間よりもより人間らしく、生々しい虚構世界を作り出すことに人生をかけた男の生き様を楽しめる作品です。
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孤高の芸術の世界は、常人から逸脱しなければ到達出来ないような気がする。人形浄瑠璃が自分から縁遠く、日常から、離れ過ぎていて、想像とつかない。ただ、時代を超えても狂気は変わらない。
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流れるような関西弁の文体に飲み込まれるかのように読みました。
浄瑠璃や歌舞伎などの世界の根底に流れているものに、魅入られ渦に巻き込まれていく人々の生き様を感じたような気がします。タイトルの「渦」の意味にも納得しました。
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良い。
テンポが良い。上手い文章。独特。力のある作家。江戸時代なのに、古さを感じない、現代にいるみたい。サバサバとした登場人物。
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直木賞受賞作なので読んでみたのですが、非常に退屈でした。文章ではいいなと思うフレーズはありましたが、内容や展開は私には全く刺さらず、でした。
勿論優劣はないのですが、これが受賞でマハさんが落選には全く同意できません。