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妙子、鈴子、登紀子。五十年前にある出版社でであった三人。立場も環境も生い立ちも違うが、ある一瞬人生が交わった時期があった。72歳になる鈴子のもとに電話があった。イラストレータの早川朔が亡くなったという。そして登紀子に伝えてほしいと。斎場に一緒について行ってくれた孫の奈帆と一緒に登紀子と出会うことになる。その時には、イラストレータの早川朔(妙子)、フリーライターの登紀子、祖母の鈴子の人生を孫の奈帆が書き留めることとなるとは分からずに。女性がまだ社会で活躍する前の時代から時代を切り開いてきた妙子、登紀子。そしてその時代では当たり前に結婚して家に入った鈴子。三人の人生で戦後の時代を振り返ることができるが、時代を切り開いた者たちの、行き着いた人生に暗澹とする。
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戦後雑誌文化の勃興期に生きた対照的な3人の女性。
実在の人物もモデルに、男社会の中に自分で居場所を作っていく女性たちの物語がどこに決着するのだろうと思いながら読み進めた。
一番穏当な生き方をした女性の孫が、一番尖った生き方をした女性の想いを継ぐ。
時の流れと人のつながりの不思議を感じる。
「目の前にいる人の背後に長い時間の連なりを見るとき、女が仕事をし、生活をして生きてきた時代の重さを感じずにはいられなかった」
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超久しぶりに読む作者。最近の小説はどれもこれもミステリー系のものが多いが、本作は完全に大河小説だ、戦後の近代日本の青春時代とも言える昭和を生きた女性3人の生涯を描いたものだった。特に最近の出版不況に喘ぐ雑誌という分野に関わった女性、各々のどの人生が良かったのかは結果論でしかないが、それぞれの人生には悔いを残したかもしれないが、ちゃんとそれを引き継ぐ者もいるのだろう。さてこれから衰退の一途をたどるだろう日本に希望はあるのだろうか。
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とある出版社を通じて出会った文字書き、絵描き、お茶くみの3人の女性の半生。昭和後期を強く生きる姿が描かれる。男性には刺さらない、かも
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大河ドラマのように勢いのある物語。
日本の雑誌の進化の過程も描かれていてとても面白かった。
世の女の人は実は「守られたい」よりも「守りたい」欲求の方が強いのではと思ったり。
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初読み作家さん。
直木賞の候補にあがっており、あらすじをみて興味があったので読みました。
私の時代よりも10年から20年上の世代かな?
たしかに女の人が仕事をするには厳しい時代だったと思います。
側から見て憧れるようなカタカナ職業。
ここまでではなくとも、自分も一時期スケジュール帳が埋まってないと不安に感じる頃がありました。
事実は小説よりも奇なり。
多かれ少なかれ、誰もが小説のような人生を送っているのでは…とつくづく思えました。
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今から見たら 3人の選ぶ道は
極端すぎるような気がするけど
こういう女性たちの努力があってこそ
今の私たちが 物言える場が
増えたのは確かだと しみじみ思った
いばらの道を切り開いてくれた功績は大きい
ここからは 道を広く
多方向に伸ばしていく時代なんですね
黎明期を懐古できる 大河小説でした
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ライター、イラストレーター、専業主婦、
それぞれの女の生きざまにドップリのめり込んだ。
一見きらびやかな職業の裏側は
なんと凄まじい女性ならではの戦いがあるのか
後半は鳥肌がとまらなかった。
奈帆と一緒に登紀子が語る
彼女たちの過去を体験し
その末路の切なさ、潔さに涙した。
これからの人生を歩んでいく
奈帆のラストに猛然と拍手を送りたい。
がんばれーー!!
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女性は結婚後仕事を辞め専業主婦になるのが当たり前だった時代。新しく生まれた雑誌の下に集った3人の女性たちの仕事・結婚・子供、そしてそれぞれの3世代(祖母・親/子供・孫)との関係を描く。盛り込み過ぎなんじゃあ……と思いながら1/3を過ぎるあたりまではなかなか物語に入り込めなかったが、方向性がわかってからは俄然面白くなった。本作のモデルとなった人達や雑誌はなんとなく知っているが、さすがに詳しくはない。なんだか最近、実在の人物をモデルとしたフィクションを立て続けに読んでいる気がする。
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数年後に振り返ったとき、本作が窪さんのターニングポイントだったと言われているかもしれません。
『じっと手を見る』と同じ作者が描いたとは思えない重厚な一冊でした。いや『じっと手を見る』も駄作というわけじゃなかったんですけど、あちらは狭い世界でトラウマを抱えて内向きに生きる人たちのお話でしたから、やっぱり本作のように、一昔前を舞台にしつつもどこか前向きな物語のほうが満足度は高いですね。しかもこれまでの窪作品では必ずといっていいほど描かれていた性描写がほとんどないという。
かなりの意欲作だと思います。出だしから相当気合が入っているのが読んでいて伝わってきました。
物語はイラストライターの妙子、フリーライターの登紀子、雑誌編集部の雑務担当から後に専業主婦となる鈴子の3人の女性の一代記が描かれています。
いや、一代記というよりは戦記といったほうがしっくりくるかもしれません。
彼女たちが出会ったのは1960年代ですから、ちょうどフェミニズムとかウーマンリブとか言われ始めた頃ですよね。主人公のの3人がベトナム反戦デモで騒然とする夜の新宿に繰り出して、思いの丈をぶちまけるシーンに象徴されるように、男性絶対優位の社会の中でもがき苦しみながら、彼女たち自身にとっての「トリニティ」を求め続ける様子が、時に喜びと、時に苦みとともに、確かな筆致で描かれていたのが印象的でした。
ところで読み始めてすぐ、ちょっと前に候補作となった伊吹有喜さんの『彼方の友へ』を思い出しました。
舞台が雑誌の編集部だったり、女性の一代記だったりとかの共通点は多いですが、本作のほうが重厚さ、登場人物の深みという点でより優れているように感じました。
名前はあえて伏せますが、実在した超大物に対する筆致も刺激的で面白かったです。もしかすると怒り出す人がいるかもしれませんけど。
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登紀子の母みつ子がショパンの「雨だれ」を弾くくだりが印象に残りました。
ジョルジュ・サンドについて語るみつ子の表情が目に浮かびます。
「ここではないどこか遠くを…」
「ここにはいない誰かを…」
自分の人生を捧げられるような男性との出会い、みつ子のように働いて男性を支え続ける生き方…結局、男側に器がないといけない
そして、才能と恋は不可欠なもので、ふたつの才能が二人をかたく結びつける…
男性も女性も同じ…自分の人生を捧げられるか
全編を通して語られていることを感じました。
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読み応えのある作品でした。
“高度経済成長を裏で支えていたのは、鈴子のような生活を支える女たちだ。援護射撃のように男を支え、彼女たちもまた、登紀子や早川朔と同じように、時代と闘っていたはずだ。この部屋に来る前は、不景気の今に生まれた自分はなんて不幸なのだと考えていた。けれど、それを生まれた時代のせいだけにしていたら、自分も、自分のいる場所も変わらない”
共感。
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出版社で出会った三人の女性の約50年間の物語です。三人の絆を深めた事件など物語と共に進む時代背景や雑誌編集部という舞台、ファッションやアートの世界も興味深いです。華やかさに隠れた努力や葛藤も。あれ?と実在する人物を感じられるのも更に楽しめます。
https://opac.shodai.ac.jp/opac/volume/538241?current=1&q=%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%8B%E3%83%86%E3%82%A3&total=3&trans_url=%2Fopac%2Fsearch%3Fcount%3D20%26defaultpage%3D1%26defaulttarget%3Dlocal%26order%3Drecommended_d%26q%3D%25E3%2583%2588%25E3%2583%25AA%25E3%2583%258B%25E3%2583%2586%25E3%2582%25A3
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同じ出版社で出会った
3人の女性の3世代に渡る物語。
フリーの栄枯盛衰。
長編だが読みやすく
朝ドラみたいだなと思った。
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高度成長期時代の女性3人が出版社に勤め、それぞれの人生を晩年まで丁寧に書かれている一冊。フリーライター、イラストレーター、事務員の3人は性格も生い立ちも収入も全然違うのに、何故か仲が良かった。仲が良いと言うのか同士と言うのか。男性社会の中、女性が男性並みに頑張って働く事が窮屈だった時代。現代では夫婦共働きが当たり前の時代ですが、その礎を築いてくれたのではないでしょうか。恋に仕事に結婚に子育て。全てを上手く手に入れる事が出来なかった女性達の生き方に時代を感じました。もしも、この女性たちが今の時代に生きていたら、どんな人生を送っていたのかな、と。そんな事をふと思ってしまいました。