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なかなか低山の特集をする書籍のない中、日本各地の低山とその地域にまつわる歴史や信仰との関係を綴ってくれており、最後まで興味が尽きることがなかった。
日本に御嶽山という名前が多くある由来など、今後日本で登山をしていく上で自分が興味を持ち始めている「由来」の部分に触れることが出来て満足。
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個々の山の情報を載せたガイドブックではありません。低山登山にフォーカスしたエッセイという印象。山の奥深さを感じられる素晴らしい一冊。
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日本文化を学びたくて華道やってて、池坊の教授陣の趣味がほぼ全員山歩きなんだけど、山には日本文化の真髄があるのではないかと思った。神道は自然崇拝だし。だから山系の本を読みまくりたい。
大内征
低山トラベラー/山旅文筆家。大人の学び場・自由大学では「東京・日帰り登山ライフ」を主宰し、東京ローカルの面白さを低山歩きを通して伝えている。手書き地図推進委員会では自治体や企業とタッグを組み、目に見えない地元のウワサやエピソード、そこの暮らす個人の思い出を可視化する手書き地図の魅力を講演やワークショップで伝道するなど、トークイベント登壇や教養講座の講師、地域活性の領域で幅広く活動中
国土の7割が山地だというこの国に暮らすぼくらハイカーにとって、低山は日本を楽しむ最高のフィールドだと思うのだ。特に、世界有数の大都会・東京は、その西側の3分の2が丘陵と山地になっている。発達した公共交通網のおかげもあって、日本屈指の登山フィールドだとさえ思っている。
自然で遊ぶ〝楽しさ〟と知的なことを追い求める〝面白さ〟とが一対となって味わえる登山は、たとえば地理や歴史が好きな人にとってワクワクしない理由はない。このことに気づいたとき、とてつもなく大きな雷が脳天に落ちてきたような衝撃が走った。
そんなわけで、ぼくは「低山歩き×歴史探訪」といったテーマで日本各地の低山を歩くようになり、もう10年以上も経つ。低い山にはズバリ〝営みの濃さ〟がある。高い山にだってもちろん歴史はあるけれど、低い山には暮らしの形跡だったり、合戦や信仰の余韻のようなものが高山よりも色濃く残っていて、その点で断然面白いのだ。
伊豆を愛してやまなかった川端康成がこんな表現をしている。 伊豆は詩の国であると、世の人はいう。 伊豆は日本歴史の縮図であると、或る歴史家はいう。 伊豆は南国の模型であると、そこで私はつけ加えていう。 たしかに伊豆は風光明媚で、どこか異国のような雰囲気が漂う。 もともと伊豆は南の国からやってきた異国情緒溢れる〝島〟だった。ざっと1000万年前~60万年前のこと、本州から遠く離れた海の底で噴火を繰り返す火山で、自ら吐き出した溶岩で陸地をつくり続けては、少しずつすこしずつ北上してきた。やがてその火山島は本州に衝突して日本の一部になる……これが伊豆半島誕生のいきさつである。
自然の中を歩くという行為、絶えず変化する風景の中に身を置くという行為には、もしかしたら思考の垢を洗い落としてくれる効果もあるのかと期待する。風の力や水の流れで穢れを祓ってくれる神さまを祓戸大神と言うけれど、まさにそういうことなのだろう。
歴史や文化を辿る山歩きをすることによって、故郷のことを学ぶ機会になる──登山が、地域を学ぶうえで最良の手段になるということを、ぼくはいまあらためて感じている。それにしても天下は広い。世の中まだまだ知らないことだらけだ。だから登山を通して、もっともっと知りたいと思う。
御岳山の隣に聳える日の出山は「夜明けのトレイル」を楽しみたい。宿坊を起点にするとかなり楽にチャレンジすることができる。まだ未明の中で���坊を発ち、日の出山までヘッデンの明かりを頼りに小1時間、真っ暗闇の山道を歩くのだ。世界有数の大都会・東京でこんな探検時間を過ごせるなんてワクワクする。山頂に到着したら防寒具にくるまって、のんびりそのときを待つ。こういうとき、魔法瓶に入れてきた白湯があれば身体が温まり最高だ。
ぼくが思い描く誕生日登山の恩恵は、まさにこういうイメージ。特になんの信仰があるわけではないけれど、思いを持って山に入り、自然の中でなにかを感じとって町に戻って来ると、新しい自分に生まれ変わっているような気分になれる。身も心も軽やかになるのだ。だから山には、いつも受け止めてくれてありがとうと、感謝の気持ちを持っている。
人を見た目で判断することが失礼なように、山だって見た目で判断すると痛い目にあうと思うのだ。 低山の活動をしていると、高い山は危険だけど低い山なら気軽で安全ですもんねーとよく言われる。登山をする人かそうでないかによっても違うけれど、実際はそんなことはない。標高が低ければ初心者でも楽に登れて危険が少ない、という先入観は、意外と根強くあるようだ。
雪月花とは、日本の美の極みや景物などを、自然の美しさに準えて愛でるときに用いる言葉で、たとえば「雪の天橋立」、「月の松島」、「花の宮島」といったように表現する。それが「御嶽」と呼ばれる神坐す山嶽にもあると知って、ぼくは俄然興味がわいた。
ぼくも登山にのめり込む前は、旅先でそういうことをたくさんやっていました。個人的に最も思い出深い旅先トレッキングは、世界史を勉強していたときに知ったスペインはバルセロナ郊外のモンセラートを訪ねたこと。山梨の瑞牆山に似た無数の奇岩群が特徴の岩山で、その中につくられた大聖堂と強運の黒いマリア像「ラ・モレネータ」に会いに行ったのです。FCバルセロナのユニフォームを着て登ったのも、今となってはよい思い出。 健康・景観・見聞という3つのKを追い求めて、山に遊ぶ楽しさと旅に学ぶ面白さたるや。登山をしながら教養も身につくという健康的で知的な「3Kトレッキング」は、今後の登山の在り方のヒントになっていく気がしています(もちろん、基本装備や安全対策は前提ですが)。