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実践顧客起点マーケティング たった一人の分析から事業は成長する みんなのレビュー
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2021/03/02 12:51
投稿元:
既存顧客の深耕をする機会が増えてきたので
既存顧客向けのマーケティングはどのように行っていくのか情報収集をする目的で、本書を書店で手に取った。
ボリュームとしては、2~3時間で読める長さになっている。
本書を読む前は、現代のマーケティングといえばデジタルマーケティングのイメージだったので
デジタルマーケティングに関する話が書かれているのかと思っていたが、本書にはオンラインでもオフラインでも使用できるマーケティングの基本的な考え方やケーススタディーの記載があり、すぐに実践できるような手軽なものも多数あった。
本書では、顧客を5段階(ロイヤル/一般/離反/認知・未購買/未認知)に分け、客層ごとにN1分析(簡易的なヒアリング調査)を行う事で
その客層はどういった製品を求めているのかを確認し、
製品の制作や顧客へ伝える製品のメリットについて検討することが必要と書かれていた。
顧客ピラミッド以外にも、様々な分析手法が書かれており、かなり情報が得られた。
私はBtoBの営業をしている立場だが、
本書の「N1分析」に基づき、顧客を詳細に分析して、
それをヒントにして、新しい製品のアイデアや顧客にとってのメリットを創出し、提案したいと思うようになったので営業職の方には特にオススメの一冊だ。
2021/03/27 17:55
投稿元:
マーケティングのお勉強。森岡毅以来の衝撃。めちゃめちゃ面白かった。
序章 顧客起点マーケティングの全体像
■顧客ピラミッド
①顧客ピラミッド―誰でもできる簡単な調査で顧客を5つのセグメントに分解
②セグメント分析―行動データと心理データから各セグメントの基本的な顧客特性を分析
③N1分析―セグメントごとの「一人の顧客(N=1)」にインタビューして、認知や購買のきっかけと深層心理を分析
④アイデア創出―N1分析を元に、その顧客の行動と心理状態を変える「アイデア」を考案
⑤アイデア検証―「アイデア」をコンセプトに変換し、定量的調査でポテンシャルを評価して実践し、顧客ピラミッドの動きを確認
筆者が参加してきたアドテクノロジーやデジタルマーケティングのセミナーで語られる内容も、新しいデジタル技術や手法を実行したら効果が上がった、ABテストで費用対効果が良くなった、といった発表が大半であり、そのほとんどが、ブランド全体から見れば限定的な影響に過ぎない部分最適です。
第1章 マーケティングの「アイデア」とN1の意味
本書における「アイデア」を端的に定義すると、「独自性」と「便益」の四象限で表すことができます。結論を先に言うと、独自性と便益を兼ね備えた「アイデア」があるかどうかが、マーケティング上で最も重要な要素です。
独自性とは、他にはない特有の個性であり、唯一無二とも言い替えられる、既視感のない特徴です。英語では、"Only-one Uniqueness" とも言えます。筆者はさらに、"Never"の要素が揃っていることと定義しています。見たことのない、聞いたことのない、触ったことのない、嗅いだことのない、経験したことのないという、五感で感知したことがない個性です。そうしたものに、人は注目します。つまり独自性の有無は、注目に値するかどうかで確認できます。
一方で、便益とは、顧客にとって都合がよく利益のあることを意味します。ベネフィットやメリットとも表されますが、それを利用することで得られる有形、無形の価値であり、「便利、得、有利、快、楽」などがあります。便益は、その商品やサービスが買うに値するか、時間を使うに値するかの判断を左右します。
この組み合わせで四象限を描くと、図の上に位置する、独自性と便益を兼ね備えたものを「アイデア」と呼ぶことができます。他の象限を考えると、その意味合いが明確になります。
他の象限から、一つずつ見ていきます。まず右下の、独自性がなく便益があるものは、いわゆる「コモディティ」です。コモディティとは、代替性がある商品やサービスで、市場においてその価値は競合と同等として扱われます。マーケティング的に言えば、差別化されていない商品やサービ スのことです。
次に左上の、独自性はあるが便益がないものを考えてみると、買ったり時間を費やしたりする価値がない特徴を備えている、人目を引くためだけの「ギミック(仕掛け)」です。それ自体に価値が
ないので、詐欺とも言えるかもしれません。非常に独創的な特徴を、商品そのものや��ッケージやテレビCMなどで提案しても、それに相応しい便益を顧客に提供しないなら、一過性のエンターテインメントに過ぎないでしょう。
最後に左下の、独自性がなく便益もないものは何でしょうか?それは、各種のリソースを無駄遣いしている、ただの「資源破壊」です。開発にかかる時間や費用、コミュニケーションコスト、そのすべてが無駄になってしまっています。
この四象限で、独自性と便益の両方がなければ、新しい価値提案とはならず、「アイデア」では ないと考えています。
独自性を持たせることと似たような意味の言葉として、マーケティングで多用される「差別化」 があります。マイケル・E・ポーターが著書『競争の戦略』(ダイヤモンド社)で使用した言葉で、本は独自性を意図して提唱されていますが、一般的には、競合と同じ便益において「~がより高い、強い、優しい、うるおう、清潔に......」などの比較優位性の意味だと誤解されています。独自性がなく、比較優位性のみであれば、この四象限のコモディティに近い状態で戦っていることになりますし、ポーターが提唱した元々の差別化の意味とも異なります。
本書で言う独自性は、あくまで唯一無二な、Only-one Uniquenessを意味します。独自性が弱いと、コモディティ競争に陥ってしまうのです。もちろん、コモディティ競争もマーケティングの対象ですが、圧倒的な成長を達成するには、商品やサービスの誕生時から、常に「アイデア」を生み出し、提供し続けなければなりません。
稀代のマーケターとも言われたスティーブ・ジョブズが、このような発言を残しています。「美しい女性を口説こうと思ったとき、ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、君は15本贈るかい? そう思った時点で君の負けだ。ライバルが何をしようと関係ない。その女性が本当に何を望んでいるのかを、見極めることが重要なんだ」。
"When you want to have a date with a girl, are you going to send her 15 roses if you know that your rival is sending her 10 roses? If you would think so, you will be defeated on that moment. Whatever your rival does, is not what matters. What does that girl really want?" (『人生を変えるスティーブ・ジョブズスピーチ』国際文化研究室[編]、ゴマブックス)
■「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」
ここからは、「アイデア」は独自性と便益を兼ね備えたものだということを前提に、さらに深堀 りしていきます。マーケティング業務上、「アイデア」には、大きく分けて次の2つがあります。
①商品やサービスそのものとなる「プロダクトアイデア」
②商品やサービスを対象顧客に認知してもらうための手段である「コミュニケーションアイテア」
それぞれに、独自性と便益の四象限を適用することができますが、この2つには①が主体で②は従属要素であるという明確な主従があります。簡単に言うと、「プロダクトアイデア」の独自性がやや弱くても、便益があれば「コミュニケーションアイデア」で補強して売上の向上やブランド育成が可能ですが、商品やサービスそのものに便益がなかったら、「コミュニケーションアイデア」だけで中長期的な売上を獲得することは不可能です。…
①プロダクトアイデア
対象顧客に対して、商品やサービスそのものに独自の機能や特徴があり、かつ具体的な便益があることです。…
…
最も理想的なのは、…独自性そのものが便益であることです。…
次に理想的なのは、確固たる独自性が便益を支えている場合です。…
もちろん、このような「プロダクトアイデア」を創出するのは簡単ではありませんが、独自性と便益を両立する「アイデア」を創出することは、マーケティング責務の一つだと思います。
一方で、「プロダクトアイデア」を伴って世の中に登場し、早々に成功を収める商品やサービスは、例外なく追随する競合商品がすぐに登場し、その独自性がコモディティ化されていきます。「肌ラボ」やスマートニュースに、現在いくつの競合があるかを考えると、自明です。
このコモディティ化競争に勝つために、便益と繋がる独自性を維持すべく「プロダクトアイデア」自体をアップグレードしていくのもマーケティングの仕事ですが、同時に必要になってくるのが、2つ目の「コミュニケーションアイデア」です。
②コミュニケーションアイデア
これは、「プログクトアイデア」を対象顧客に伝え、購買行動を起こしてもらうためのコミュニ ケーション自体の「アイデア」を意味します。コミュニケーションも、独自性と便益との組み合わ せで成り立っています。
コミュニケーションの独自性とは、広告やリアルイベント、キャンペーンの仕組みなどにおける クリエイティブの独自性を指します。理解しやすい例として広告を取り上げると、そこで使用され る言葉、ビジュアル、映像、ドラマ、ストーリー、タレントなどに既視感のない独自性があるかど うか、ということです。前項で「独自性とは注目に値すること」と述べましたが、広告のクリエイ ティブに独自性がないと、振り向いてもらえません。
一方、コミュニケーションの便益とは、広告を受け止める対象顧客が具体的な便益を受け取れる
ことを意味します。広告に接触すること自体が楽しい、面白い、心地良いといったプラスの要素を もたらすか、ということです。コミュニケーション自体に独自性があり、またそれに接すると便益 が得られること、この2つの条件を満たすのが、「コミュニケーションアイデア」です。
…強い「コミュニケーションアイデア」の開発も簡単ではありません。…
広告代理店に依頼する場合も、その難しさは変わりません。そもそも「プロダクトアイデア」が弱い商品に対して、何とか良いコミュニケーションを考案してくださいと広告代理店に丸投げしていては、売上の伸長に繋がりようもありません。
■マーケティングの成功に必要な3要素
1.プロダクトアイデア
2.コミュニケーションアイデア
3.早期の認知形成
■絞り込むとニッチ化する」の誤り
一人の顧客に注目することを懸念する方は少なくありません。ほとんどの人が、「ニッチ過ぎて市場が狭い」「そんなリスクは負えない」と、絞り込むことを躊躇します。ですが、私たちの生活 を作ってきた様々な商品やサービスのほとんどは「特定の誰か一人を喜ばせること、幸福にすること・便利になってもらうこと」が起点になっています。その特定の誰かが、それを作った本人そのも��だったりします。「自分が欲しいものを作った」というエピソードは、商品開発の舞台裏の記事などでよく目にする話です。
実際、筆者がスマートニュースと並行して行っているコンサルティング事業などで、N1起点の考え方を紹介すると、特にオーナー会社の経営者の方々を中心に多くの共感をいただきます。例外なく、いずれも「自分が欲しいものをワガママに作ってきたら、会社が大きくなった」といった経緯でここまできた方々です。
逆説的ですが、徹底的にN1に絞り込むから強い独自性と便益=「プロダクトアイデア」を生み出せるのであって、絞り込まないから平均的で最大公約数的な提案や企画しか打てずに、鳴かず飛ばずの結果になるのです。一人に注目するからこそ、他の人にも響く可能性の高い、強い「アイデアの手がかりが得られます。
【第1章のまとめ】
①マーケティング上の「アイデア」は、独自性と便益の組み合わせ
②「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」は異なる
③「プロダクトアイデア」の早期認知形成が強いブランドを創る
第2章 顧客ピラミッドで基本的なマーケティング戦略を構築する
実際のマーケットには、過去に買ったことはあるが今は疎遠になっている離反顧客、また、ブランドは認知しているが未購買の顧客、認知すらしていない顧客が多く存在し、それぞれに異なるチャンスがあり、それぞれ戦略が必要です。しかし、現状の購買データのRFM分析だけでは、このチャンスが視界に入らず、現在の顧客にプッシュ型の販促活動を続けてしまうのです。
本来は、どのような商品やサービスであっても、まずはそのブランドを認知し、何らかの心理的な変化があって初めて行動(使用、購買)に移ります。「ゼロからブランド認知をどう作るか?」あるいは「どのような心理的変化を起こすのか?」が、マーケティング対象です。その打ち手は、既存顧客に焦点を当てたRFM分析では出てきません。
■N1起点の分析とは
…
理解したいことは、「いつ、どのようなきっかけで、ブランドを知ったのか/買ったのか/ロイヤル顧客化したのか」です。そのきっかけとなったカテゴリー体験や、商品やサービスの経験、ブランドメッセージとの出会い、何らかの特定の情報認知などが、「アイデア」を創出する大きなヒントになるのです。
例を挙げると、2015-6年のロクシタンでは、ブランド認知がありながらも未購買というセグメントが大きく、その層に最初の購買をしてもらって顧客化するマーケティング戦略が求められました。N1分析を繰り返す中で得られた、自分向け購買ではない他人向けの「ギフト」購買需要が、多くの顧客の初回購買機会になり得ると発見し、「コミュニケーションアイデア」として「誰にも喜ばれるギフト」という点を打ち出して、大きく一般顧客層の数と購買を伸ばしました。明確に「ギフト」と言い切ることが独自性であり、誰もが喜ぶ、つまり贈る側からすると「外しがあいこと」が初回購買への強い便益になりました。
注意すべきは、昔の話が曖昧で、最初に使い始めたきっかけや理由と、今現在そのブランドを愛用しているロイヤル化の理由が混在しがちなことです。
��例えばシャンプーなら、上位5位くらいまでのブランドのヘビーユーザーに「なぜ買い続けているか」と聞くと、半数以上が「髪がしっとりさらさら」と答えます。しかし、これを真剣に受けてそのまま広告で訴求しても、まったく売れません。むしろ「髪がクリスタルのように輝く」とか「朝、寝癖がない髪」のように、便益と繋がる独自性のある提案をしないと初回購買は起こりません。ロイヤル化した理由(使い続けている理由)とトライアル理由は、多くの場合で異なっているのですが、混同しがちなので気をつけたいです。
「アイデア」の手がかりは、これまでに聞いたことや見たことのない、特殊だったり非常識だと思えるような使用目的や使用方法や場面、商品に関連する個人的な経験や心理状態にあります。ここから独自性を抽出し、そこで得られる便益を明示することで「アイデア」となるのです。
ロイヤル顧客から、想像していなかったような特殊なきっかけや事実を見つけられたら、それを具体的な便益との組み合わせで「アイデア」化し、一般顧客やほかのセグメントに拡大して再現するとこで、セグメント全体の上位への移行を促せる可能性が高いです。
■顧客ピラミッドで考える、戦略の選択肢
①ロイヤル顧客のスーパーロイヤル化
②一般顧客のロイヤル化
③離反顧客の復帰
④認知・未購買顧客の顧客化
⑤未認知顧客の顧客化
【第2章のまとめ】
①顧客ピラミッドを作成し、セグメントを特定した上でN1を抽出する
②行動データと心理データから顧客化、ロイヤル顧客化の理由を見つける
③セグメントごとに異なる戦略と具体的な5W1Hのマーケティングを立案
第3章 9セグマップ分析で販売促進とブランディングを両立する
■9セグマップ
①積極 ロイヤル顧客 - 大量に購入(使用)し、かつ、ロイヤルティも高く、顧客として失うリスクは低い層。
②消極 ロイヤル顧客 - 大量に購入(使用)しているが、ロイヤルティは低く、顧客として失うリスクは高い層。
③積極 一般顧客 - 購入量は少ないがロイヤルティが高く、積極的ロイヤル顧客化する可能性が高い層。大量に購入していない理由としては、競合ブランドのロイヤル顧客である、販売網のリーチや店舗内露出が少なく、手に入りにくい、その商品の便益には満足しているがロイヤルティに結びつくような、また、価格を合理的だと感じられるような独自性を理解していない、認知していない、など。その理由を見つけ出し自由を見つけ出し、解決策を提案できれば、①に移行する可能性は高い。
④消極 一般顧客 - 購入量は少なくロイヤルティも低く、離脱の可能性が高い一過性の顧客層。ほとんどの商品で顧客数が多いのは、この層。
⑤積極 離反顧客 - ロイヤルティが高いが、何らかの理由で購入しなくなった層。競合ブランドや他のカテゴリーの代替品にスイッチした場合、また転居などで物理的に販売網のリーチから離れてしまった場合や、家族構成の変化や出産・子育てのようなライフスタイル変化などを機に発生。再度、顧客化することは比較的簡単。
⑥消極 離反顧客 - 競合ブランドや他のカテゴリーの代替品にスイッチした場合、また��要自体がなくなったなど、現在購入しておらずロイヤルティも低い層。
⑦積極 認知・未購買顧客 - 独自性とその便益の理解が薄い、また購入のきっかけがないために顧客化していない層。または、販売網リーチに入っていない、購入場面の認知がないなど。
⑧消極 認知・未購買顧客 - 独自性と便益の理解が薄い、また、購入する強い理由ときっかけがない顧客層。
⑨未認知顧客 - 商品名の認知もなく、購入までのハードルが最も高い層。ほとんどの商品やサービスにとって最大のセグメントであり、イノベーター理論で言うレイトマジョリティ、ラガードが大部分を占めるが、中長期の安定的成長を目指す上で開拓すべき層。
■消極ロイヤル顧客のリスク
より一般的な商材の例として、大手携帯キャリアのブランディングを考えてみます。第1章で、ソフトバンクの素晴らしい「コミュニケーションアイデア」と「プロダクトアイデア」の活用を紹介しましたが、現在は携帯キャリア市場自体がコモディティかしたカテゴリーとなっています。各社ともに端末販売の複数年縛りの販売を行っていますが、複数年間の継続使用を前提にした価格の安さは、購入の強い動機にはなるものの、ロイヤルティは生み出しません。
これは他のキャリアへの移動を一定期間防止する策にはなりますが、差別化されていないスーパーが、お客様の家との距離を競うようなものです。短期的には、有効な販売促進策であることに疑いはないですが、本質的な独自性はなく、ロイヤルティ形成がないリスクを抱えています。
販売促進でしかないプロモーション施策を繰り返せば、消極ロイヤル顧客が増えますが、その消極性を補う参入障壁は低くなります。他のブランドの参入を防ぎ、消極ロイヤル顧客を守り続けられるなら良いですが、そうでないなら、短期間に消極ロイヤル顧客を失いビジネスを損なうリスクは高くなります。格安スマホのMVNOがシェアを伸ばしている理由は、大手キャリアが消極ロイヤル顧客について参入障壁の高さを維持できない問題を突いていることにあります。
逆に、大手キャリアが基本料金を大きく値下げすれば、安さというMVNOの便益が消えるため、そのマーケット自体が消滅し、短期での利益率が下がっても寡占は守れます。大量の顧客を保持して、中長期で他の収益方法を考えつけば、この戦略は有効です。
まだキャズム手前の、認知も顧客数も少ないブランドの場合、まず定着させるべき「プロダクトアイデア」を毀損するような貨幣的価値訴求の施策は避けるべきです。その上で、提案する商品が独自性を伴った便益(プロダクトアイデア)を提供できる限りは、キャズムを超えるまで、その独自性の伴う便益の提供だけを目的にした販売促進に集中することが良策だと考えます。
【第3章のまとめ】
①9セグマップ分析で、販促とブランディングを同時に可視化する
②ブランディングは計測可能であり、投資対象として科学的に議論すべき
③顧客はダイナミックに競合商品や代替品を併用し、セグメントを移動し続ける
第5章 デジタル時代の顧客分析の重要性
アプリのビジネスの特徴は、組織の多くがエンジニアで構成され、ユーザー���行動データがリアルタイムで可視化されていることです。当然、プロダクトの改善と進化はリアルタイムで行われます。「旧リアルワールド」からきた筆者にとって、それは驚くべき透明性とスピードであり、同時になぜデジタルビジネスが短期間で巨大化するのかが理解できました。デジタルのマーケティングへの応用に大きな可能性を感じるとともに、旧来のビジネスがデジタルを取り込まないリスクが、いかに致命的であるかを強く認識しています。
すべてのビジネスは、商品やサービス=「プロダクトアイデア」の独自化を突き詰めなければなりません。商品開発自体をマーケティング責務として取り込んで、「プロダクトアイデア」の開発時点から圧倒的な独自性と便益との連動を作り、「コミュニケーションアイデア」の開発も同時に 行うべきです。「コミュニケーションアイデア」を並行して考えることで、「プロダクトアイデア」自体に、世に問うべき独自性があるのか、明確な便益が本当にあるのかを問い直すことが可能になります。独自性の弱い「プロダクトアイデア」をそのままに、「コミュニケーションアイデア」にすべての責任を負わせる、旧型のコミュニケーション偏重マーケティングは避けるべきです。
課題は、劇的に拡大したデジタルメディアと情報量の中で、いかに自社の情報を際立たせ、最初の認知獲得に到達し、購買意志の喚起に繋ぐことができるかです。首尾良くブランド認知から購買喚起までたどり着いたとしても、日々接する情報が継続的に膨大なので、せっかく勝ち取った興味の相対的な価値はあっという間に下がります。秋山さんが指摘されていたクリエイティブ、本書における「コミュニケーションアイデア」の忘却曲線が、さらに短くなっているということです。
以前は情報入手経路や情報量が限られていたため、「アイデア」がマスメディアを通して伝わば商品やサービスが売れ、それなりにビジネスが成り立っていました。それを、大雑把に「マスマーケティング」と呼んでおり、振り返れば楽な時代だったとも言えますが、今は当時のノウハウが生きない時代に突入しているのです。
今後はますます、「プロダクトアイデア」に圧倒的な独自性があるかどうかが成功を左右してい きます。顧客理解を起点とし、独自性を追求した「プロダクトアイデア」の開発と、伝えるための「コミュニケーションアイデア」の開発、そして認知獲得から購買行動に繋げるまでの統合的なマーケティング設計が重要です。そしてその実行には、開発や広報・宣伝、営業などの部門を超えて組織横断で連携した、タイムラグのない顧客起点マーケティングを実行していかねばなりません。そのためにも、顧客ピラミッドや9セグマップで自社ブランドと競合状況を顧客起点で分析していただきたいです。
【第5章のまとめ】
①テクノロジーの進化に囚われるのではなく、顧客の行動と心理をみる
②デジタルが「旧ワールド」ビジネスを再定義し創造的に破壊する
③代替性のない圧倒的な「プロダクトアイデア」構築が最重要な時代に
実は、本書も具体的なN1を設定して書きました。1997年にP&Gでブランドマネージャー3年目を迎えた、29歳の筆者自身です。20代に学んできたマーケティング理論と量的データ分析を徹底的に追求して戦略を構築し、市場導入した日本初の新ブランドが、わずか半年で鳴かず飛ばずとなり、それまでに経験したことのない大きな挫折を感じていました。何度もデータとロジックを再検証しましたが決定的なミスは見つからず、結果、打開策も見つけることができず、ブランドを諦めることになってしまいました。そこまで一緒に頑張ってくれた部下や仲間に申し訳ない気持ちでいっぱいで、マーケターとしてのキャリアも終わったと諦めましたが、ありがたいことに、最後のチャンスとして次に担当させてもらったヘアケアブランドを短期間で伸張させることができ、なんとかその後のキャリアに繋ぐことができました。
これが最後、と腹を括って取り組んだヘアケアブランドでは、調査やデータでのロジックの組み立てを行いませんでした。まずは、筆者自身がユーザーとして小売店を回り、商品棚を触り、様々な商品を購入し、使用し、自分が面白いと思うことを追求しました。ユーザーをよく知るヘアスタイリストさんと直接話をして、スタイリスト研修会にまで顔を出したりして、具体的な「誰か」から強い反応があることだけを頼りに「アイデア」を考え、そこからマーケティング戦略を逆算し、量的調査で確認するという逆のアプローチを実践したのです。
その理由は、結果的に失敗してしまったブランドを担当していた際に、「頭で考えるのではなく心で感じることを頼りにしなさい」「ユーザーを対象物として見てはいけない、その気持ちに共感し”自分ごと化”しないといけない」という先輩からのアドバイスを思い出したからでした。当時は、その意味がわからなかったのです。データ的にも論理的にも正しいのだから、このようなアナログなアドバイスをもらっても困る、とまで思っていました。その意味の深さを当時理解できていれば、大きく結果は変わったと思います。
…
どれだけ世界が進化しデジタル化が進んでも、人の行動を左右するのはその人の心の動きです。データと論理だけでは顧客の心は理解できません。一人ひとりの顧客の心に耳を傾け、理解し、共感する姿勢を貫く限り、マーケティングは必ず結果に繋がります。マーケティングは、いつの世にも新しい価値を創っていくことができる素晴らしい仕事だと信じています。
2021/04/01 09:12
投稿元:
最近マーケティングの必要性をとても感じており、
積読していた本書を読んでみた。
顧客起点をベースとしたマーケティングの内容のため、
すごく身近で分かりやすかった。
著者がP&G、ロクシタン、スマートニュースで
実践していたフレームワークを実績や事例とともに
紹介してくれている。
とても勉強になる本だが、
もう少し簡潔に書いてある方が読みやすいと思った。
下記、本書のポイントだと思う内容。
・Consumer is Boss
・実在する一人のお客様に会って、ブランドとの初めての出会いからこれまでの経験に丁寧に耳を傾ければ、購買行動とその行動を左右する深層心理の関係が有機的に繋がる
①顧客ピラミッド
ロイヤル顧客
一般顧客
離反顧客
認知・未購入顧客
未認知顧客
②9セグマップ
積極ロイヤル顧客
消極ロイヤル顧客
積極一般顧客
消極一般顧客
積極離反顧客
消極離反顧客
積極認知・未購入顧客
消極認知・未購入顧客
未認知顧客
③N1分析
④アイデア創出
⑤アイデア検証
・四象限で定義するアイデア
独自性ある 便益ある アイデア
→アイデアをコミュニケーションでストレートに伝える
独自性ない 便益ある コモディティ
→コミュニケーションアイデアで独自性を増幅し、便益の魅力を高めてコモディティ化を回避する
独自性ある 便益ない ギミック
独自性ない 便益ない 資源破壊
→コミュニケーションアイデアをいかに駆使しても、一過性の売上や顧客獲得に終始する
・マーケティングの成功に必要な3要素
プロダクトアイデア
コミュニケーションアイデア
早期の認知形成
・購買行動に直結している理由とは、その顧客が購入しているブランドが自分にとって特別な便益をもたらしてくれると心理的に認識するに至ったらきっかけ
・RFM分析
Recency 直近でいつ購買したか
Frequency 購買頻度
Monetary 購買金額
現在の顧客状態を知るには有効
ロイヤル顧客と一般顧客に思考も施策も集中しがち
・行動データ
最適なタイミングで最適なマーケティング提案を行うことで、売上や利益に貢献する
・心理データ
心理面の理由が理解できないままでは再現性がない
❶ブランドの認知
❷ブランド選好度
❸属性イメージ
❹メディア接触
❺広告の認知経路
・実在しない顧客のジャーニーやペルソナは無効
・コンセプトとは、「独自性と便益(アイデア)」+「価格と商品・サービス情報」
・オーバーラップ分析
顧客の重なりを可視化
どのように使い分けているのか(行動)
なぜ使い分けているのか(心理)
各ブランドをどう認識しているのか
・ラフな目安としては対象マーケ���トで50%以上のブランド認知を作らなければ、マジョリティ層までたどり着くことができず、不安定な状態が続く
・破壊的イノベーション
・CMは評価されているが、ブランドへの購買意向を高めることに寄与していない
・パラレルワールドからゼロフリクションワールドへ
以上
2021/04/18 22:47
投稿元:
ロクシタンの未認知顧客
→最初のタッチポイントがギフト向けであり、その際にサンプルを渡すという仕立てで顧客化。
(N=1)✖️10
ロイヤル化した理由とトライアル理由は異なる。
明確な便益訴求によるプロダクトアイデアの強化。
→追加購買へのインセンティブ提供や会員制によるポイントは貨幣価値のバリュー提供で中長期でのプロダクトアイデアを毀損。
顧客ゼクメントを5つ
→現状の購買の有無、購買頻度、認知の有無。
Amazonはコンビニやスーパーへの消極ロイヤル顧客(プロダクトアイデアへのロイヤリティがなく、近いからという物理的な制限でのロイヤリティのみ)を奪い、同様にエアビーはホテルだけでなく賃貸不動産から奪ってくかもしれない。
次回購買意欲という9セグマップ分析。
販促活動における値引きなどの貨幣的価値提供→ロイヤリティを下げるリスクある。
選好度と次回購買の意欲は違う。
コミュニケーションアイデアがあってもプロダクトアイデアがないと便益がないので持続性がない
イメージとしてのブランディングが効果的なのは、ロイヤル顧客の存在自体が購入のきっかけになる顧客層が多く存在している時。
AARRRモデル
2021/04/25 15:54
投稿元:
・便益の有無、独自性の有無の4象限
便益〇、独自性〇:アイデア
便益〇、独自性×:コモディティ
便益×、独自性〇:ギミック
便益×、独自性×:資源破壊
・アップルは「プロダクトアイデア」=独自性と便益が強いから、「コミュニケーションアイデア」でひねる必要がなかった
・「20-80の法則」について注視したいのは、単に売り上げの多くをロイヤル顧客がもたらしているだけでなく、利益で見るとさらに上位集中が起きていることが多いことです。この点を加味しないとマーケティング投資を正しく実行できません
・セグメントごとに費用を按分し、各セグメントにかけている費用を正しく把握する
・データ分析の代表的5質問
1) ブランドの認知
2) ブランドの選好度
3) 属性イメージ(形容詞や修飾語や擬人的表現でどのように認識しているか、どのような機能イメージや便益属性を感じているか)
4) メディア接触(通常のメディアの接触習慣や信頼度)
5) 広告の認知経路(どういったメディアを通じてブランドを認知し、ブランドイメージを形成したのか)
・まず決めるべきは、そのプランを通じてどんな「プロダクトアイデア」や「コミュニケーションアイデア」をターゲット顧客に伝えて体験していただくかということ。目標は、その「アイデア(=独自性+便益)」の理解と実感を通じて、このブランドには代替物がないと確信していただきm中長期での継続購買確率を上げることです。プラン実行後に顧客にどのような心理変化を起こすかを見据え、その結果として購買行動を向上させることを考える必要があります
・ロイヤル顧客のスーパーロイヤル化:追加購入へのインセンティブ提供、会員制度によるポイントプログラムでの継続購買促進がありますが、これらは実質的に貨幣価値のバリュー提案であり、中長期では「プロダクトアイデア」を毀損します。目指したいのは「プロダクトアイデア」を強化し、「継続使用でいい効果がある」「こうした理由があるから、競合ブランドではなくこのブランドがよい」「家族と友人と共用すると喜ばれる」など、明確な便益訴求をプランに組み込んで、ブランド需要自体を作り上げることです
・自社ブランドの顧客セグメント分解をする際には、同様に競合も分析する。顧客の重なりを分析することで、「なぜ」「どのように」使い分けているのか、各ブランドをどう認識しているのか、を認識しやすくなる
・高頻度購買層の中には、高いブランド選好に裏付けられている「積極ロイヤル顧客」と、ブランド選好が弱い「消極ロイヤル顧客(ただ近い、ただ安いから高頻度で購入している)」が混在しています。Amazonは物理的な店舗網を持つ小売業者の消極ロイヤル顧客を奪っている
・9セグマップ:横軸 認知&購買頻度、縦軸 次回購入意向(ブランド選好)
・プロダクトアイデアのイメージ属性と購買以降の相関分析を行い、どのイメージ属性が購買意向を左右するのかを見極めて、打ち出すべきブランドイメージ指標を選択したい
・スマートニュースの事例:競合の離脱理由をベースに自社の商品の方向性を定める。競合Aの離脱理由「情報が多すぎて探しにくい」に陥ってはいけない
・スマートニュースの「ワールドニュース」はダウンロードのきっかけにはなるが使わなくなる方も多かった。しかしその多くが自分に合った他のチャンネルを登録したりしながら、利用を継続していた。必要だったのは、初使用喚起につながる独自性と便益を組み合わせた新しい「プロダクトアイデア」
・パラレルワールドからゼロフリクションワールドへ。ゼロフリクションに向かう顧客に価値のあるプロダクトアイデアを創出する
・AARRRモデル:Acquisition→Activation→Retention→Revenue
Retention→Referral→Acquisition
Revenue→Re invest→Acquisition
・頭で考えるのではなく、心で感じることを頼りにしなさい
・ユーザを対象物として見てはいけない、気持ちに共感し、自分ごと化しないといけない
2021/06/29 16:04
投稿元:
9segやN1分析などのフレームワークはマーケティングチーム全体での共通認識を作るのに非常に役にたちました。
ただし、THE MODELと一緒だと思いますが、紹介されたフレームワークをそのまま無理やり自社マーケティングに当て込むのではなく、オレたちの9segはどういったものなのかは冷静に考えてマーケティングに活かす必要があると思いました。
2021/07/12 23:03
投稿元:
備忘録
序章:顧客起点マーケティングの全体像
・顧客ピラミッド(5セグマップ)
未認知顧客(認知なし)→認知・未購買顧客(認知あり/購買経験なし)→離反顧客(認知あり/購買経験あり/現在購買なし)→一般顧客(認知あり/購買頻度・中〜低)→ロイヤル顧客(認知あり/購買頻度・高)
・マーケはロジックが弱く説得性に欠けても、人を惹きつける何かがあると感じられる場合大きな成功につながる。
1章:マーケティングのアイディアとN1の意味
アイデアを端的に定義すると独自性と便益の4象限で表すことができる。
アイデアがあるかどうかはマーケティング上で最も重要な要素
独自性があり便益があるものがアイデア
独自性があり便益がないものがギミック
独自性がなく便益があるものがコモディティ
独自性がなく便益がないものが資源破壊
・差別化という言葉は一般的に、競合と同じ便益において〜がより高い、強い、優しい、うるおう、清潔に‥などの比較優位の意味だと誤解される。
比較優位性のみだとコモディティで戦っていることになる。
あくまで唯一無二なを独自性と指す。
・プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデア。それぞれに独自性と便益を生み出す。
また、マーケティング成功においては上記の2アイデアと早期の認知形成が重要。
2章:顧客ピラミッドで基本的なマーケティング戦略を構築する。
前述の顧客ピラミッドは3つの質問で調査できる。
1.そのブランドを知っているか(認知)
2.これまで買ったことがあるか(購買)
3.どれくらいの頻度で買っているか
・実在しない顧客のジャーニーやペルソナは無効
多くのカスタマージャーニーは想像で平均的に作られている。
本当にお客様の心を捉えるのは具体的な名前をお持ちのN1起点での分析。
・顧客ピラミッドで考える戦略の選択肢は5つ
1.ロイヤル顧客のスーパーロイヤル化
2.一般顧客のロイヤル化
3.離反顧客の復帰(一般顧客化)
4.認知・未購買顧客の顧客化
5.未認知顧客の顧客化
・BtoB事業での活用
現在の取引顧客、過去の取引顧客、将来的に可能性のある取引顧客で売上や利益、担当者等をファイル化。
これらを8年の単位で、
取引の継続性(3年以上を起点)を基準にロイヤルと一般に分けて顧客ピラミッドを作成。
それぞれの顧客の行動(顧客の担当者、商談、コンペ、取引額)、その行動に至った理由(こちらからの商談内容、提案、入札価格、担当者)でセグメントごとに分析すると成功パターンに繋がっている特定の営業担当がわかり、クライアントコミュニケーションの頻度と内容の特徴が浮かび上がった。
3章:9セグマップ分析で販売促進とブランディングを両立する。
ロイヤル顧客にも、積極ロイヤル顧客と消極ロイヤル顧客で分かれている。主にブランド選好の強度でわかれる。(近いから買うは消極ロイヤル)
・9セグマップは顧客ピラミッドを横にして、ブランドの選好軸を加える。
5章:デジタル時代の���客分析の重要性
アプリのビジネスでよく用いられるAARRR(アー)モデル(ユーザー獲得、商品使用とユーザー活動の活性化、継続使用、他者への紹介や推奨、収益化)の5段階にわけてリアルタイムデータで可視化分析する。
2021/07/17 12:06
投稿元:
一人の個人のマーケティングが大切という話。
その人が顧客としてどの層にいるのかを明らかにした上で対応を考える。
自分がやりたいことをするということがビジネスにつながるということに近いのかと思った。
フリクションをゼロにするのがデジタルの世界。
2021/07/24 13:21
投稿元:
マーケティング初心者向けの内容でした。
半分は著者の自慢話でしたが、フレームワークの具体的な使い方を実用的に書いていた部分もあり、よかったです。
9セグマップも、初心者向けには、まずこのくらいかなと思います。
実際のマーケティングは9セグメント作ったとしても、より細かく見なければならない部分があったり、逆に場合により見なくても良いセグメントもあったりしますが、まずはこのくらいのレベル感で人に説明するとわかりやすいのかなと思いました。
2021/03/27 17:53
投稿元:
マーケティングのお勉強。森岡毅以来の衝撃。めちゃめちゃ面白かった。
序章 顧客起点マーケティングの全体像
■顧客ピラミッド
?顧客ピラミッド―誰でもできる簡単な調査で顧客を5つのセグメントに分解
?セグメント分析―行動データと心理データから各セグメントの基本的な顧客特性を分析
?N1分析―セグメントごとの「一人の顧客(N=1)」にインタビューして、認知や購買のきっかけと深層心理を分析
?アイデア創出―N1分析を元に、その顧客の行動と心理状態を変える「アイデア」を考案
?アイデア検証―「アイデア」をコンセプトに変換し、定量的調査でポテンシャルを評価して実践し、顧客ピラミッドの動きを確認
筆者が参加してきたアドテクノロジーやデジタルマーケティングのセミナーで語られる内容も、新しいデジタル技術や手法を実行したら効果が上がった、ABテストで費用対効果が良くなった、といった発表が大半であり、そのほとんどが、ブランド全体から見れば限定的な影響に過ぎない部分最適です。
第1章 マーケティングの「アイデア」とN1の意味
本書における「アイデア」を端的に定義すると、「独自性」と「便益」の四象限で表すことができます。結論を先に言うと、独自性と便益を兼ね備えた「アイデア」があるかどうかが、マーケティング上で最も重要な要素です。
独自性とは、他にはない特有の個性であり、唯一無二とも言い替えられる、既視感のない特徴です。英語では、"Only-one Uniqueness" とも言えます。筆者はさらに、"Never"の要素が揃っていることと定義しています。見たことのない、聞いたことのない、触ったことのない、嗅いだことのない、経験したことのないという、五感で感知したことがない個性です。そうしたものに、人は注目します。つまり独自性の有無は、注目に値するかどうかで確認できます。
一方で、便益とは、顧客にとって都合がよく利益のあることを意味します。ベネフィットやメリットとも表されますが、それを利用することで得られる有形、無形の価値であり、「便利、得、有利、快、楽」などがあります。便益は、その商品やサービスが買うに値するか、時間を使うに値するかの判断を左右します。
この組み合わせで四象限を描くと、図の上に位置する、独自性と便益を兼ね備えたものを「アイデア」と呼ぶことができます。他の象限を考えると、その意味合いが明確になります。
他の象限から、一つずつ見ていきます。まず右下の、独自性がなく便益があるものは、いわゆる「コモディティ」です。コモディティとは、代替性がある商品やサービスで、市場においてその価値は競合と同等として扱われます。マーケティング的に言えば、差別化されていない商品やサービ スのことです。
次に左上の、独自性はあるが便益がないものを考えてみると、買ったり時間を費やしたりする価値がない特徴を備えている、人目を引くためだけの「ギミック(仕掛け)」です。それ自体に価値が
ないので、詐欺とも言えるかもしれません。非常に独創的な特徴を、商品そのものやパッケ��ジやテレビCMなどで提案しても、それに相応しい便益を顧客に提供しないなら、一過性のエンターテインメントに過ぎないでしょう。
最後に左下の、独自性がなく便益もないものは何でしょうか?それは、各種のリソースを無駄遣いしている、ただの「資源破壊」です。開発にかかる時間や費用、コミュニケーションコスト、そのすべてが無駄になってしまっています。
この四象限で、独自性と便益の両方がなければ、新しい価値提案とはならず、「アイデア」では ないと考えています。
独自性を持たせることと似たような意味の言葉として、マーケティングで多用される「差別化」 があります。マイケル・E・ポーターが著書『競争の戦略』(ダイヤモンド社)で使用した言葉で、本は独自性を意図して提唱されていますが、一般的には、競合と同じ便益において「〜がより高い、強い、優しい、うるおう、清潔に......」などの比較優位性の意味だと誤解されています。独自性がなく、比較優位性のみであれば、この四象限のコモディティに近い状態で戦っていることになりますし、ポーターが提唱した元々の差別化の意味とも異なります。
本書で言う独自性は、あくまで唯一無二な、Only-one Uniquenessを意味します。独自性が弱いと、コモディティ競争に陥ってしまうのです。もちろん、コモディティ競争もマーケティングの対象ですが、圧倒的な成長を達成するには、商品やサービスの誕生時から、常に「アイデア」を生み出し、提供し続けなければなりません。
稀代のマーケターとも言われたスティーブ・ジョブズが、このような発言を残しています。「美しい女性を口説こうと思ったとき、ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、君は15本贈るかい? そう思った時点で君の負けだ。ライバルが何をしようと関係ない。その女性が本当に何を望んでいるのかを、見極めることが重要なんだ」。
"When you want to have a date with a girl, are you going to send her 15 roses if you know that your rival is sending her 10 roses? If you would think so, you will be defeated on that moment. Whatever your rival does, is not what matters. What does that girl really want?" (『人生を変えるスティーブ・ジョブズスピーチ』国際文化研究室[編]、ゴマブックス)
■「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」
ここからは、「アイデア」は独自性と便益を兼ね備えたものだということを前提に、さらに深堀 りしていきます。マーケティング業務上、「アイデア」には、大きく分けて次の2つがあります。
?商品やサービスそのものとなる「プロダクトアイデア」
?商品やサービスを対象顧客に認知してもらうための手段である「コミュニケーションアイテア」
それぞれに、独自性と便益の四象限を適用することができますが、この2つには?が主体で?は従属要素であるという明確な主従があります。簡単に言うと、「プロダクトアイデア」の独自性がやや弱くても、便益があれば「コミュニケーションアイデア」で補強して売上の向上やブランド育成が可能ですが、商品やサービスそのものに便益がなかったら、「コミュニケーションアイデア」だけで中長期的な売上を獲得することは不可能です。…
?プロダクトアイデア
対象顧客に対して、商品やサービスそのものに独自の機能や特徴���あり、かつ具体的な便益があることです。…
…
最も理想的なのは、…独自性そのものが便益であることです。…
次に理想的なのは、確固たる独自性が便益を支えている場合です。…
もちろん、このような「プロダクトアイデア」を創出するのは簡単ではありませんが、独自性と便益を両立する「アイデア」を創出することは、マーケティング責務の一つだと思います。
一方で、「プロダクトアイデア」を伴って世の中に登場し、早々に成功を収める商品やサービスは、例外なく追随する競合商品がすぐに登場し、その独自性がコモディティ化されていきます。「肌ラボ」やスマートニュースに、現在いくつの競合があるかを考えると、自明です。
このコモディティ化競争に勝つために、便益と繋がる独自性を維持すべく「プロダクトアイデア」自体をアップグレードしていくのもマーケティングの仕事ですが、同時に必要になってくるのが、2つ目の「コミュニケーションアイデア」です。
?コミュニケーションアイデア
これは、「プログクトアイデア」を対象顧客に伝え、購買行動を起こしてもらうためのコミュニ ケーション自体の「アイデア」を意味します。コミュニケーションも、独自性と便益との組み合わ せで成り立っています。
コミュニケーションの独自性とは、広告やリアルイベント、キャンペーンの仕組みなどにおける クリエイティブの独自性を指します。理解しやすい例として広告を取り上げると、そこで使用され る言葉、ビジュアル、映像、ドラマ、ストーリー、タレントなどに既視感のない独自性があるかど うか、ということです。前項で「独自性とは注目に値すること」と述べましたが、広告のクリエイ ティブに独自性がないと、振り向いてもらえません。
一方、コミュニケーションの便益とは、広告を受け止める対象顧客が具体的な便益を受け取れる
ことを意味します。広告に接触すること自体が楽しい、面白い、心地良いといったプラスの要素を もたらすか、ということです。コミュニケーション自体に独自性があり、またそれに接すると便益 が得られること、この2つの条件を満たすのが、「コミュニケーションアイデア」です。
…強い「コミュニケーションアイデア」の開発も簡単ではありません。…
広告代理店に依頼する場合も、その難しさは変わりません。そもそも「プロダクトアイデア」が弱い商品に対して、何とか良いコミュニケーションを考案してくださいと広告代理店に丸投げしていては、売上の伸長に繋がりようもありません。
■マーケティングの成功に必要な3要素
1.プロダクトアイデア
2.コミュニケーションアイデア
3.早期の認知形成
■絞り込むとニッチ化する」の誤り
一人の顧客に注目することを懸念する方は少なくありません。ほとんどの人が、「ニッチ過ぎて市場が狭い」「そんなリスクは負えない」と、絞り込むことを躊躇します。ですが、私たちの生活 を作ってきた様々な商品やサービスのほとんどは「特定の誰か一人を喜ばせること、幸福にすること・便利になってもらうこと」が起点になっています。その特定の誰かが、それを作った本人そのものだったりしま��。「自分が欲しいものを作った」というエピソードは、商品開発の舞台裏の記事などでよく目にする話です。
実際、筆者がスマートニュースと並行して行っているコンサルティング事業などで、N1起点の考え方を紹介すると、特にオーナー会社の経営者の方々を中心に多くの共感をいただきます。例外なく、いずれも「自分が欲しいものをワガママに作ってきたら、会社が大きくなった」といった経緯でここまできた方々です。
逆説的ですが、徹底的にN1に絞り込むから強い独自性と便益=「プロダクトアイデア」を生み出せるのであって、絞り込まないから平均的で最大公約数的な提案や企画しか打てずに、鳴かず飛ばずの結果になるのです。一人に注目するからこそ、他の人にも響く可能性の高い、強い「アイデアの手がかりが得られます。
【第1章のまとめ】
?マーケティング上の「アイデア」は、独自性と便益の組み合わせ
?「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」は異なる
?「プロダクトアイデア」の早期認知形成が強いブランドを創る
第2章 顧客ピラミッドで基本的なマーケティング戦略を構築する
実際のマーケットには、過去に買ったことはあるが今は疎遠になっている離反顧客、また、ブランドは認知しているが未購買の顧客、認知すらしていない顧客が多く存在し、それぞれに異なるチャンスがあり、それぞれ戦略が必要です。しかし、現状の購買データのRFM分析だけでは、このチャンスが視界に入らず、現在の顧客にプッシュ型の販促活動を続けてしまうのです。
本来は、どのような商品やサービスであっても、まずはそのブランドを認知し、何らかの心理的な変化があって初めて行動(使用、購買)に移ります。「ゼロからブランド認知をどう作るか?」あるいは「どのような心理的変化を起こすのか?」が、マーケティング対象です。その打ち手は、既存顧客に焦点を当てたRFM分析では出てきません。
■N1起点の分析とは
…
理解したいことは、「いつ、どのようなきっかけで、ブランドを知ったのか/買ったのか/ロイヤル顧客化したのか」です。そのきっかけとなったカテゴリー体験や、商品やサービスの経験、ブランドメッセージとの出会い、何らかの特定の情報認知などが、「アイデア」を創出する大きなヒントになるのです。
例を挙げると、2015-6年のロクシタンでは、ブランド認知がありながらも未購買というセグメントが大きく、その層に最初の購買をしてもらって顧客化するマーケティング戦略が求められました。N1分析を繰り返す中で得られた、自分向け購買ではない他人向けの「ギフト」購買需要が、多くの顧客の初回購買機会になり得ると発見し、「コミュニケーションアイデア」として「誰にも喜ばれるギフト」という点を打ち出して、大きく一般顧客層の数と購買を伸ばしました。明確に「ギフト」と言い切ることが独自性であり、誰もが喜ぶ、つまり贈る側からすると「外しがあいこと」が初回購買への強い便益になりました。
注意すべきは、昔の話が曖昧で、最初に使い始めたきっかけや理由と、今現在そのブランドを愛用しているロイヤル化の理由が混在しがちなことです。
例えばシャンプー��ら、上位5位くらいまでのブランドのヘビーユーザーに「なぜ買い続けているか」と聞くと、半数以上が「髪がしっとりさらさら」と答えます。しかし、これを真剣に受けてそのまま広告で訴求しても、まったく売れません。むしろ「髪がクリスタルのように輝く」とか「朝、寝癖がない髪」のように、便益と繋がる独自性のある提案をしないと初回購買は起こりません。ロイヤル化した理由(使い続けている理由)とトライアル理由は、多くの場合で異なっているのですが、混同しがちなので気をつけたいです。
「アイデア」の手がかりは、これまでに聞いたことや見たことのない、特殊だったり非常識だと思えるような使用目的や使用方法や場面、商品に関連する個人的な経験や心理状態にあります。ここから独自性を抽出し、そこで得られる便益を明示することで「アイデア」となるのです。
ロイヤル顧客から、想像していなかったような特殊なきっかけや事実を見つけられたら、それを具体的な便益との組み合わせで「アイデア」化し、一般顧客やほかのセグメントに拡大して再現するとこで、セグメント全体の上位への移行を促せる可能性が高いです。
■顧客ピラミッドで考える、戦略の選択肢
?ロイヤル顧客のスーパーロイヤル化
?一般顧客のロイヤル化
?離反顧客の復帰
?認知・未購買顧客の顧客化
?未認知顧客の顧客化
【第2章のまとめ】
?顧客ピラミッドを作成し、セグメントを特定した上でN1を抽出する
?行動データと心理データから顧客化、ロイヤル顧客化の理由を見つける
?セグメントごとに異なる戦略と具体的な5W1Hのマーケティングを立案
第3章 9セグマップ分析で販売促進とブランディングを両立する
■9セグマップ
?積極 ロイヤル顧客 - 大量に購入(使用)し、かつ、ロイヤルティも高く、顧客として失うリスクは低い層。
?消極 ロイヤル顧客 - 大量に購入(使用)しているが、ロイヤルティは低く、顧客として失うリスクは高い層。
?積極 一般顧客 - 購入量は少ないがロイヤルティが高く、積極的ロイヤル顧客化する可能性が高い層。大量に購入していない理由としては、競合ブランドのロイヤル顧客である、販売網のリーチや店舗内露出が少なく、手に入りにくい、その商品の便益には満足しているがロイヤルティに結びつくような、また、価格を合理的だと感じられるような独自性を理解していない、認知していない、など。その理由を見つけ出し自由を見つけ出し、解決策を提案できれば、?に移行する可能性は高い。
?消極 一般顧客 - 購入量は少なくロイヤルティも低く、離脱の可能性が高い一過性の顧客層。ほとんどの商品で顧客数が多いのは、この層。
?積極 離反顧客 - ロイヤルティが高いが、何らかの理由で購入しなくなった層。競合ブランドや他のカテゴリーの代替品にスイッチした場合、また転居などで物理的に販売網のリーチから離れてしまった場合や、家族構成の変化や出産・子育てのようなライフスタイル変化などを機に発生。再度、顧客化することは比較的簡単。
?消極 離反顧客 - 競合ブランドや他のカテゴリーの代替品にスイッチした場合、また需要自体がなくなったなど、現在購入して��らずロイヤルティも低い層。
?積極 認知・未購買顧客 - 独自性とその便益の理解が薄い、また購入のきっかけがないために顧客化していない層。または、販売網リーチに入っていない、購入場面の認知がないなど。
?消極 認知・未購買顧客 - 独自性と便益の理解が薄い、また、購入する強い理由ときっかけがない顧客層。
?未認知顧客 - 商品名の認知もなく、購入までのハードルが最も高い層。ほとんどの商品やサービスにとって最大のセグメントであり、イノベーター理論で言うレイトマジョリティ、ラガードが大部分を占めるが、中長期の安定的成長を目指す上で開拓すべき層。
■消極ロイヤル顧客のリスク
より一般的な商材の例として、大手携帯キャリアのブランディングを考えてみます。第1章で、ソフトバンクの素晴らしい「コミュニケーションアイデア」と「プロダクトアイデア」の活用を紹介しましたが、現在は携帯キャリア市場自体がコモディティかしたカテゴリーとなっています。各社ともに端末販売の複数年縛りの販売を行っていますが、複数年間の継続使用を前提にした価格の安さは、購入の強い動機にはなるものの、ロイヤルティは生み出しません。
これは他のキャリアへの移動を一定期間防止する策にはなりますが、差別化されていないスーパーが、お客様の家との距離を競うようなものです。短期的には、有効な販売促進策であることに疑いはないですが、本質的な独自性はなく、ロイヤルティ形成がないリスクを抱えています。
販売促進でしかないプロモーション施策を繰り返せば、消極ロイヤル顧客が増えますが、その消極性を補う参入障壁は低くなります。他のブランドの参入を防ぎ、消極ロイヤル顧客を守り続けられるなら良いですが、そうでないなら、短期間に消極ロイヤル顧客を失いビジネスを損なうリスクは高くなります。格安スマホのMVNOがシェアを伸ばしている理由は、大手キャリアが消極ロイヤル顧客について参入障壁の高さを維持できない問題を突いていることにあります。
逆に、大手キャリアが基本料金を大きく値下げすれば、安さというMVNOの便益が消えるため、そのマーケット自体が消滅し、短期での利益率が下がっても寡占は守れます。大量の顧客を保持して、中長期で他の収益方法を考えつけば、この戦略は有効です。
まだキャズム手前の、認知も顧客数も少ないブランドの場合、まず定着させるべき「プロダクトアイデア」を毀損するような貨幣的価値訴求の施策は避けるべきです。その上で、提案する商品が独自性を伴った便益(プロダクトアイデア)を提供できる限りは、キャズムを超えるまで、その独自性の伴う便益の提供だけを目的にした販売促進に集中することが良策だと考えます。
【第3章のまとめ】
?9セグマップ分析で、販促とブランディングを同時に可視化する
?ブランディングは計測可能であり、投資対象として科学的に議論すべき
?顧客はダイナミックに競合商品や代替品を併用し、セグメントを移動し続ける
第5章 デジタル時代の顧客分析の重要性
アプリのビジネスの特徴は、組織の多くがエンジニアで構成され、ユーザーの行動データがリアルタイムで可視化されているこ���です。当然、プロダクトの改善と進化はリアルタイムで行われます。「旧リアルワールド」からきた筆者にとって、それは驚くべき透明性とスピードであり、同時になぜデジタルビジネスが短期間で巨大化するのかが理解できました。デジタルのマーケティングへの応用に大きな可能性を感じるとともに、旧来のビジネスがデジタルを取り込まないリスクが、いかに致命的であるかを強く認識しています。
すべてのビジネスは、商品やサービス=「プロダクトアイデア」の独自化を突き詰めなければなりません。商品開発自体をマーケティング責務として取り込んで、「プロダクトアイデア」の開発時点から圧倒的な独自性と便益との連動を作り、「コミュニケーションアイデア」の開発も同時に 行うべきです。「コミュニケーションアイデア」を並行して考えることで、「プロダクトアイデア」自体に、世に問うべき独自性があるのか、明確な便益が本当にあるのかを問い直すことが可能になります。独自性の弱い「プロダクトアイデア」をそのままに、「コミュニケーションアイデア」にすべての責任を負わせる、旧型のコミュニケーション偏重マーケティングは避けるべきです。
課題は、劇的に拡大したデジタルメディアと情報量の中で、いかに自社の情報を際立たせ、最初の認知獲得に到達し、購買意志の喚起に繋ぐことができるかです。首尾良くブランド認知から購買喚起までたどり着いたとしても、日々接する情報が継続的に膨大なので、せっかく勝ち取った興味の相対的な価値はあっという間に下がります。秋山さんが指摘されていたクリエイティブ、本書における「コミュニケーションアイデア」の忘却曲線が、さらに短くなっているということです。
以前は情報入手経路や情報量が限られていたため、「アイデア」がマスメディアを通して伝わば商品やサービスが売れ、それなりにビジネスが成り立っていました。それを、大雑把に「マスマーケティング」と呼んでおり、振り返れば楽な時代だったとも言えますが、今は当時のノウハウが生きない時代に突入しているのです。
今後はますます、「プロダクトアイデア」に圧倒的な独自性があるかどうかが成功を左右してい きます。顧客理解を起点とし、独自性を追求した「プロダクトアイデア」の開発と、伝えるための「コミュニケーションアイデア」の開発、そして認知獲得から購買行動に繋げるまでの統合的なマーケティング設計が重要です。そしてその実行には、開発や広報・宣伝、営業などの部門を超えて組織横断で連携した、タイムラグのない顧客起点マーケティングを実行していかねばなりません。そのためにも、顧客ピラミッドや9セグマップで自社ブランドと競合状況を顧客起点で分析していただきたいです。
【第5章のまとめ】
?テクノロジーの進化に囚われるのではなく、顧客の行動と心理をみる
?デジタルが「旧ワールド」ビジネスを再定義し創造的に破壊する
?代替性のない圧倒的な「プロダクトアイデア」構築が最重要な時代に
実は、本書も具体的なN1を設定して書きました。1997年にP&Gでブランドマネージャー3年目を迎えた、29歳の筆者自身です。20代に学んできたマーケティング理論と量的データ分析を徹底的に追求して戦略を構築し、市場導入した日本初の新ブランドが、わずか半年で鳴かず飛ばずとなり、それまでに経験したことのない大きな挫折を感じていました。何度もデータとロジックを再検証しましたが決定的なミスは見つからず、結果、打開策も見つけることができず、ブランドを諦めることになってしまいました。そこまで一緒に頑張ってくれた部下や仲間に申し訳ない気持ちでいっぱいで、マーケターとしてのキャリアも終わったと諦めましたが、ありがたいことに、最後のチャンスとして次に担当させてもらったヘアケアブランドを短期間で伸張させることができ、なんとかその後のキャリアに繋ぐことができました。
これが最後、と腹を括って取り組んだヘアケアブランドでは、調査やデータでのロジックの組み立てを行いませんでした。まずは、筆者自身がユーザーとして小売店を回り、商品棚を触り、様々な商品を購入し、使用し、自分が面白いと思うことを追求しました。ユーザーをよく知るヘアスタイリストさんと直接話をして、スタイリスト研修会にまで顔を出したりして、具体的な「誰か」から強い反応があることだけを頼りに「アイデア」を考え、そこからマーケティング戦略を逆算し、量的調査で確認するという逆のアプローチを実践したのです。
その理由は、結果的に失敗してしまったブランドを担当していた際に、「頭で考えるのではなく心で感じることを頼りにしなさい」「ユーザーを対象物として見てはいけない、その気持ちに共感し”自分ごと化”しないといけない」という先輩からのアドバイスを思い出したからでした。当時は、その意味がわからなかったのです。データ的にも論理的にも正しいのだから、このようなアナログなアドバイスをもらっても困る、とまで思っていました。その意味の深さを当時理解できていれば、大きく結果は変わったと思います。
…
どれだけ世界が進化しデジタル化が進んでも、人の行動を左右するのはその人の心の動きです。データと論理だけでは顧客の心は理解できません。一人ひとりの顧客の心に耳を傾け、理解し、共感する姿勢を貫く限り、マーケティングは必ず結果に繋がります。マーケティングは、いつの世にも新しい価値を創っていくことができる素晴らしい仕事だと信じています。
2021/09/03 23:41
投稿元:
ブランド力を計測する手法として明解。同分野で手法を解説するものがあまり見当たらないので、初心者としてありがたい。
ただ、実践による検証が個人にとどまっているため、本当にフレームワークとして使えるかは疑問が残る。著者だから有益な洞察を得られているように思える。実際に導入してみたが、有意な結果を導き出すのが難しく、次のアクションに繋げるのも難しい。
アンケート型リサーチのひとつのように見えるが、実際はそこからインタビュー分析を介してはじめて戦略が導かれる。この本にはその辺りは具体的には書かれていない。
第4章のケーススタディは、その具体的な実践例として興味深かった。
2021/09/19 23:29
投稿元:
不特定多数に向き合いすぎたプロダクト戦略、マーケ戦略よりも一人のUXをよくすることが成功につながる。誰を見てるかわからなくなることはよくあるので、誰を幸せにしたいかちゃんと考えるべし(意訳)
最近興味あって調べてるリサーチに結構つながる考え方だなと思った。KPIから落としていった数字だけじゃなく、わかりやすく誰を幸せにするかは大事
メモ
・本社の誰が決定権を持つかとかじゃなく、顧客が誰なのか、が大事
・どのセグメントのN1顧客を深堀りし、何を知りたいのかを設定する。具体的なN1を設定するからこそ具体的なアイデアにつながる。アイデアは手順を踏むことでつながる。
・女性口説くときにライバルがバラを10本送ったら、あなたは15本送るかい?女性を見なかったらあなたの負けだ。byスティーブ・ジョブズ
・コミュニケーションアイディアとプロダクトアイデアどちらのことを話しているかちゃんと意識する。プロダクトアイデアが強かった場合、コミュニケーションアイデアで尖ったことをやる必要はない。ひねりすぎて伝わらなくなることだってある。
2021/10/05 09:16
投稿元:
マーケティングについて学ぶことが出来た気になっているが、マーケティングとは程遠い仕事をしているので、役に立つかと言われれば…
いずれにせよ、顧客情報無くして成り立たないよなーとは感じた一冊だった。