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2部構成になっていて、1部が山口さんによる現象学の解説、2部が野中さんによる知識創造経営の話。で、2人の対談が3つという構成になっている。
現象学は何を言っているのか皆目分からない感じで、入門書も含めて、これまでできるだけ近寄らないようにしていた。
そういうなか、組織開発の哲学的基礎にはフッサールがいるという話しを「組織開発の探究」で読んで、経営との関係で現象学が解説してあるこの本はいいかもと思って読むことにした。
「直観」は、「直感」じゃないわけね。
推論などに寄らない「直接的な認知・経験」みたいな話。
つまり、インスピレーションで経営しようという話ではなく、先入観のない直接的な経験を共感しあうような経営をしようという話。
現象学というと、なんか、独我論的な印象を持っていて、個人における主観的経験がまずは重視された上で、間主観性、相互主観みたいなところに、少しづつたどりついていくという印象を持っていたが、ここでの説明では、相互主観性の話が中心というか、まず共通感覚があるので、主観が存在するみたいな説明になっていて、驚いた。
現象学はよくわかってないので、この理解がどこまでフッサールの議論に忠実なのかは分からない訳だが、フッサールだけではなく、メルロ・ポンティ、オートポイエーシスのヴァレラ、脳科学のレビットなどの議論なども組み合わせて説明されるので説得力はある。
後半は、いくつかの新しい事例紹介などはあるものの、「いつもの」野中節という感じ。
とはいえ、現象学という哲学的な考えと組み合わせることで、SECIモデルの意味がより深くなった感じはする。
あと、脇道の議論だが、ブーバーの「我と汝」の「汝」というのは、ドイツ語では、親しみを込めた二人称の訳であるというのは驚いた。
ブーバーの「我と汝」関係って、仲良い友達が、「おれ=お前」関係で共感しながら話しているみたいなことを言っていたのかな?(そういう風には受け取れなかったのだが。。。。もしそうだとすると、私は全くブーバーの議論を理解してなかったということになる)
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野中郁次郎 meets フッサールの現象学。両者に関心を持つ人にはお勧め。読んでいる時間の知的充足感が半端ない。
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2019年8月21日図書館から借り出し。
第1部は山口一郎氏による現象学の概説。何がどこまで正しい説明かはよくわからないが、フッサールを少々かじっただけの身には、そういうことだったのかと思わせるところが多々ある。難しいことを難しく説明する人は、実はよくわかっておらず、本当にわかっている人は実にわかりやすく説明するのはビジネスの場でもよくけいけんするところで、ちょっとフッサールを読み直してみようかという気になる。
第2部は、ちょうど今日から私の履歴書の連載が始まった野中郁次郎氏による「現象学的経営学」なるものの説明になる。ここでの率直な印象は、従来から主張してきたことの裏付けとしてフッサールの現象学をもってきたかなというところ。日本的経営を強く主張する野中氏の論は、形を変えた「日本すごい!」の連呼のようにも見えて、前半の面白さが吹き飛んだ。なお、「暗黙知」はポランニーを源泉とするとしているが野中氏はかなり異なった脈絡で使用しているとされている。ポランニーの原著の翻訳もあるので確かめてみたい。
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とてつもなく重厚でタフな読み物であったが、最後の最後の「対談」部分だけでも非常に今の時代に響く概念だなぁと思いました。 あとは自分が大事にしている価値観の話もあったり、自分がお世話になっている「マエカワ」さんの話もあったりした。
好みもあるとは思うが、第一章は哲学の関連の話で、慣れていないと読むのすら大変なので、速読することがおススメ(一つ一つ深く読み解いていくと、まったく進めないため)
後半は知識創造の野中先生の部分であって、暗黙知から形式知化の話、SECIモデルなどのベースがあってから読めば、すごく読みやすい。
さらに最後の対談のところは日本的な「集合的なひらめき」の話が出てきて、あぁ、読んでよかった、と思った。
(最後の対話のところで「集合本質直観」の悪い部分として『失敗の本質』も出てきました。)
最後の対話から抜粋
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そもそもみなの思いが言葉として表明される対話の文化が形成されているかどうか、ということが、当たり前に思えても外すことができない、重要なポイントではないでしょうか。
ワイガヤ(ホンダ)もコンパ(京セラ)も、すべてを語りつくしたあとの無心のなかで、ハッと出てくる直観ですが、それはありとあらゆる知的コンバットをへたうえでのことですね。
企業というのは時間的な制約があるので、ある意味では積極的にハードルの高い仕事を意図的にさせながら、無心ぎりぎりのところまで社員を向かわせる。それが最初はやらされる感覚であっても、プロ同士がまっとうに向き合って議論を続けると、形式知を経た無心にまでたどり着くことができる。ただのブレインストーミングでは、そこまでなかなか到達できません。
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あと、この本は、いくつかの本の前提知識があってから読んだほうが読みやすいです。 僕の例は下記
■1.14歳からの哲学入門
https://booklog.jp/users/244ohashi/archives/1/4576151142
■2.知的創造企業
https://www.amazon.co.jp/%E7%9F%A5%E8%AD%98%E5%89%B5%E9%80%A0%E4%BC%81%E6%A5%AD-%E9%87%8E%E4%B8%AD-%E9%83%81%E6%AC%A1%E9%83%8E/dp/4492520813
■3.直観と論理をつなぐ思考法
https://booklog.jp/users/244ohashi/archives/1/4478102856
■4.失敗の本質
https://booklog.jp/users/244ohashi/archives/1/4478021554
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仕事の現場でここ数年感じていた会社の将来の閉塞感が、「数学化による生活世界の危機」と表現されていて、まさに生きることの意味と価値を、会社の一人一人がそれぞれが見直そうとしていたところ。
会社の中で変人、ガキ、宗教っぽいと囁かれながらも、自分の夢を語ってきた自分の過去を意味付けながら歩んできた方向性は、確かなゴールに続いている事を再認識した。
・二項動態:①相反の補完、②両極の幅、③フラクタルな形態、④銅的均衡
・フロシネス:①善い目的、②ありのままの直観、③タイムリーな場、④本質の物語、⑤実現する政治力、⑥実践知の組織化
・本質直観:①類似性、②潜む同一性、③自由変更と本質
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p61 〜時代や国の違いを超えて妥当する普遍的な性質を意味する「本質」〜
#本質というメルヘン
p63 広がりがゼロの色を計測することはできないからです。#それをそもそも色とは呼ばない。「本質」を擁護するための詭弁では?
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三宅陽一郎氏の『人工知能のための哲学塾』を読み現象学に興味を持ち、国内における現象学の第一人者である山口一郎氏と、日本を代表する経営学者である野中郁次郎氏との共著である本書を購入。
本書は第1部で山口氏による現象学、第2部で野中氏の代表理論であるSECIモデルを中心とした経営学が解説される2部構成である。
一見関連性のない哲学(特に現象学)と経営学を、1冊の本でどのように結びつけて述べられるのか期待と不安を抱きながら読み始めたが、冒頭、中盤(第1部と第2部の間)および終盤に山口氏と野中氏との対談が挿入されていることで、哲学を専門に学んだことのない自分のような読者にとっても理解が助けられた。
現象学は「現象学的還元」「判断停止(エポケー)」「志向性」「明証性」「生活世界」「ノエシス/ノエマ」「本質直観」「相互主観性」等々、フッサールによって定義づけられた理解し難い用語が多いが、本書において山口氏は、身近な事例を平易な言葉を用いて解説し、現象学の難解な専門用語を可能な限り厳選した上で論考を展開しているため読み手を飽きさせない。
また野中氏のパートでは、第1部における現象学の内容を受ける形でSECIモデルと現象学の関係性に言及しつつ、実際の企業の事例を紹介しながらSECIモデルを主観と客観の循環として説明しているところが興味深い。
実存主義の流れから生み出された現象学と、実学と言われる経営学が、本書のサブタイトルに使われている"共感の哲学"という言葉で結び付けられるということは、経営学を専門として研究している身としては非常に示唆に富むものであった。
現象学特有の「直観(直感ではない)」や近年の経営学で取り上げられる「動態経営論」といった、本書のタイトルで用いられている言葉をより深く理解するにはそれぞれの分野の専門書を読む必要があるが、経営学に新たな視座を設けてくれる本書は、巷間溢れているビジネス系書籍にはない刺激を読者にもたらすであろう。
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SECIモデルはを初めて知った。
共同化(Socialization):暗黙知を獲得
表出化(Externalization):暗黙知を集団の形式知に変換
連結化(Combination):集団レベルの形式知を体系化
内面化(Internalization);組織レベルの形式知を実践し、新たな暗黙知を生み出す。
「ワイガヤ」「コンパ」における知識創造は、「我ー汝関係」が暗黙知の直観として与えられるという。これは大学生等の部活動などにおける高揚した一体感とも共通すると思う。
アリストテレスのフロネシストは、①「善い」目的を作る能力、②ありのままの現実を直観する能力、③場をタイムリーにつくる能力、④直観の本質を語る能力、⑤物語を実現する政治力、⑥実践知(実践的賢慮)を組織化する能力だという。これはまさにリーダーに要求される資質だ。
現象論の主観的共感を経営論につなげる回り道感はぬぐえないかな…。
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本質(それがそうあるためには欠かすことのできない性質であり、時代や国の違いを超えて妥当する普遍的な性質)直観(それが絶対に間違いなく意識に明白に与えられていること)、一人称―二人称関係による事例収集、意識の0.5秒遅延説、ミラーニューロン(相手の行動の意図、感情の動きを正確に写し取る鏡のような脳神経細胞群)と共感能力、故意・過失といった自由と責任に関わる「意味と価値」を含む物事・人間の行動の本質に到達する、自由変更(共感の生じる条件を考える、思考実験(色と空間、音と持続、運動感覚と視覚像の連合(感覚素材と潜在的志向性が相互に呼び覚まし合う相互覚起)))
現象学的還元(ありのままの経験にたち戻る、先入観、知的判断の停止と知的能力をカッコに入れ使用しない)、時間・空間の意味と価値、受動的/能動的志向性(何かに向けられる抽象的性質)
受動的/能動的綜合(志向性による意味付け、価値付けをそのつど新たに作り上げる)、随意/不随意運動、感覚が知覚に先行、感覚間の対化(対になる連合(感覚系と知覚系の連結))
過去把持(過ぎ去るものが維持される志向性)の交差志向性と延長志向性(客観化(外化))により、時間内容が時間形式に先立つ、潜在的/顕在的志向性、未来予持(直前の未来を先取りし予測)
様々な概念を平易、具体的で丁寧に分かりやすく伝えようとしています。
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現象学の解説がとても楽しめた。価値や意味は人にしかわからない、それを人はどう掴んでいるのか。確かに共感からスタートするように思う。仕事の現場もそうだよな。一緒に過ごして、議論して共感することで新しいものが生まれる感覚はある。
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読み始めてしばらくして、自分が何を読んでいたんだっけ?と、とまどった。たしか経営に関する本を読み始めたはずなのに、なにやら物事を考える底の部分というか、ひどく小難しい話を読んでいることに気がついたからだ。哲学、それも現象学という難解な話だった。その部分について理解できたとはいえないが、ただ難しいからといって、そこで止める気にはならず、読み続けられたわけだから、なにか惹きつけられるところは会ったのだと思う。
読む中で、やがてさまざまなエピソードにつながっていき、そのあたりからはわりと素直に楽しく読めたな。ホンダジェットが開発されたエピソードは面白かった。富士フィルムがフィルムというメインとなる領域の縮小に対して、どのように生き残りをはかったか、というあたりも面白かった。
そうした現実寄りのエピソードを読んでいくうちに、冒頭の難しい現象学が、企業経営という人間集団が動いていく背景にある物語であったり、思考にとって、重要な役割を担っていることが感じられた。
一回読んだだけで、理解できたとはいえない。もう少し理解したいと思える本だった。いずれまた、読み返そう。