投稿元:
レビューを見る
ふるさとって呼んでもいいですか
~6歳で「移民」になった私の物語
ナディ著
2019年6月14日発行
大月書店
イラン人少女の著者は、1991年に来日した。本人6歳、両親と、5歳と1歳の弟のあわせて5人。理由は親の出稼ぎで、周囲の反対を押し切って父親だけでなく、一家でやってきた。
事前に、日本はバブル経済で人手不足と彼らは聞き、日本での雇い先の社長には日本語が話せる男性1人でビザもある、と伝わっていた。しかし、来日するとバブルははじけ、仕事がないことを知る。雇い主となるはずだった社長も日本語が話せずビザもない彼らを追い返したが、毎日頼みに来る熱意に押されて父親と母親を雇うことにする。
ナディは家に残され、不法滞在がバレないように注意しながら、毎日、弟たちの面倒をみつつ時間を過ごす。イランではテレビでおしんや水戸黄門、みなしごハッチの吹き替え版を見て、日本ではハチまでペルシャ語を話すんだと思い、日本行きをとても楽しみにしていたのだが、言葉もまったく分からず、生活習慣もなにもかも違う。周囲の子供たちからは差別され、いじめられるが、それでも段々と仲良くなって友達もできていく。
狭いアパートに、やがてテレビが来る。それで日本語を覚え、半年ほどで日常会話が出来るようになる。10歳で小学校へ。不法滞在でも学校へ行ける。難敵は漢字。辞書を引き、友達に教えてもらいながら、なんとか“解読“していく。算数の九九は何かの呪文に聞こえた。それでも、一生懸命努力し、日本に馴染もうと頑張って、徐々に成績も上位になり、高校受験に成功し、大学へも行けた。
両親はずっと時給700円のまま、ボーナス期は5000円の上乗せ。大卒のナディはエンジニアとして日本の老舗企業に就職して、両親を喜ばせ、結婚して2児の母となっている。
イラン時代、最初は裕福だったが、そのうちに借金を抱えるようになり、日本へ。その日本でも苦労の連続。健康保険がないので、足を捻挫しても初診ぐらいしか医者にかかれない。3度繰り返し、あまりにひどいので医者に行くと骨折していることがわかる。あるいは、膝の靱帯断裂が判明した時も。それでも医療費が高いから連続でかかれない。
しかし、苦労しながらも滞在11年で在留特別許可を得た。これで健康保険にも入れる。アルバイトも就職も、正々堂々とできる。彼女は日本に感謝し、日本が大好きになり、恩返しもしたいと思っている。イランに里帰りした時、周囲にイラン人ばかりがいるのを一瞬不思議に感じるほど、すでにアイデンティティが日本人的になっていたことに気づく。自らをイラン系日本人と称し始める。でも、移民に対してもっとこうしたらいいのにという考えももっている。そのあたりも最後に率直に語っている。
少女の感性や物事への対処など、とても素直で真面目で交換がもてる。ナディに会って話がしたいと思える、とてもいい本だった。
(以下、メモ)
・ナディの父親は日本での職探しに、まず代々木公園へ。当時は代々木公園と上野公園は「日本のテヘラン」と呼ばれるほどイラン人が集まっていた。しかし���そこで待っていた職とは、麻薬や偽造テレカの取引だった。彼はやはり予定の工場で雇ってもらうことにした。
・ナディは幼いながら、アパートで人に会ったらとりあえず、ニコっと笑って、ぺこりとお辞儀することを繰り返した。この「ニコッ」「ペコリ」で、最初はなんとか乗り切っていけた。
・縁に模様があってとても綺麗な食器が路上に捨ててあったので、拾ってきたら、出前の器だと教えられて慌てて返しに
・イランでは自転車を人から見えないように家の中に隠すが、日本では外に置くので捨ててあると思って乗って帰ってしまった
・年末、家族でアメ横に。人混みで迷子になって泣き出すと、ナディと呼ぶ声。イランにいるおじさん(父の兄)ともう一人知らない人だった。こっちだと言われてついていくと、両親がいた。おじさんが連れてきてくれたと言うと、おじさんはすでに人混みに紛れていなかった。数日後、イランに電話をするとその2人が事故で死んでいることが判明した。死んだ人が助けてくれたというような記述は一切ないが(イスラム教徒なのでそういう考えはないのかも)、日本でよく言われるような不思議な現象があるものだと思わされる
・漢和辞典と国語辞典を引きながら、学校からのプリントや両親の確定申告所などを解読
・体育の時間、ブルマの替わりにジャージー、スクール水着の替わりにサーファー用の水着を着用。日本人の同級生から「カッケー」。
投稿元:
レビューを見る
6歳のとき家族でイランから日本に移り住んだナディ。
在留資格がないため、ふとしたときに強制送還におびえる暮らし。
生まれ育ったイランと日本の文化や宗教、考え方の違いに驚く毎日。
日本人なのか外国人なのかイラン人なのかアイデンティティに揺れる。
ニュースの向こうのメディアが作った移民の姿ではなく、隣に住む友人としての姿を。
※少しだけ気になったのは、自然科学的な進化の記述。
「ヒトの祖先はサル」ではなく、「ヒトとサルの祖先は同じ」
記述部分のテーマとは違いますが。
投稿元:
レビューを見る
★館長の本棚★ 秋山図書館長推薦図書
【所在・貸出状況を見る】
https://sistlb.sist.ac.jp/opac/volume/242509
投稿元:
レビューを見る
私には
西アフリカのブルキナファソという国産まれの
無二の親友がいる
彼のおかげで
マリ、セネガル、コートジボワール
ウガンダetc
の 知り合いがずいぶんできました
そして
彼らは 日本に暮らし
日本で家族ができている
彼らの子供たちは
日本で生まれ
日本で育っている
ので日本人の行動様式には
精通している
ただ
子供たちは
その見た目が
東洋人ではないので
それはそれは
さまざまな体験を
している
プラスのことを耳にすることは
少なく
(この日本という国では)
マイナスのことはよく入っていくる
そんなときに
つくづく 日本は
「国際化」とは
ほど遠いところにあるなぁ
と 思い知らされる
そういう状況を抱える
この国(日本)で
この一冊が出版される
ことは
大きな意味がある
作家の星野智幸さんが
帯にかいていらっしゃるけれど
「私たちの社会は今、
こんな豊かさを手にしているのです!」
という 言葉が
読んだ後に しんみり 伝わってくる
投稿元:
レビューを見る
2022年4冊目。
読みやすくておもしろくて勉強になって、2022年序盤ですが、早くも今年No.1の作品に出会えた心地です。
移民や難民の受け入れ、そしてその後の生活について、諸々困難があることは理解していたつもりでしたが、ほんのごく一部しか見えていなかったんだと思いました。
イランからの移民である筆者が、幼い頃感じたことや出会った事象を丁寧に描いていて、すごく説得力があります。
日本社会が抱える問題も、逆にその良さも、浮き彫りになります。また、ひとりの少女が様々な葛藤を経て成長していく、力強さに励まされます。
日本をふるさとと呼んでくれて、ありがとうと言いたいです。
この本に出会えたおかげで、わたしの中で、内なる国際化が進みました。
誰もが安心して暮らせる社会にするためには、法律や制度の改変や整備はもちろん、わたしたち自身の意識をアップグレードしていくことが必須ですね。
投稿元:
レビューを見る
たくさんの人に届くように、ルビつきの平易な文で書かれたエッセイ。
著者は6歳で日本にきたイラン人。
自分の経験を通して日本で「外国人」が置かれている状況をわかりやすく伝えている。
本自体は明るく優しく礼儀正しく日本人にも伝わるように書かれている。
それが辛い。良い子すぎて、過剰適応しなければ生きられない環境が透けて見える。
常に感謝を口にして努力を重ね日本への好意と忠誠を誓い、害はないです役に立ちますと言い続けてる。
最後に少し人権は誰にでもあるというところにたどりつくけどそれでもまだ足りない。
過渡期のマイノリティがやりがちなことではあるけれど、これを読んだ子供がここまで良い子でいなきゃいけないんだとか、こうできない人はひどい扱いを受けても仕方ないと思ってしまわないように願う。
1991に来日した子供が、中里恒子 「まりあんぬ物語」の二つの大戦の間に生きた人と同じ苦悩を抱えているのが悲しい。
日本の人種マジョリティとして、こんなふうに思わせていることを恥ずかしく思う。
投稿元:
レビューを見る
特に、小学校高学年から高校生にお薦め!
この本は、イランで生まれ、日本で育った著者の実話が書かれている。小学生の時のエピソードが多く、子どもたちも共感しやすい。ナディさんが、どんなことに困っていたか、どんな不安と闘ってきたか、どれほど努力してきたか。
この本が、自分の周りにいる外国にルーツを持つ人たちに興味を持つきっかけになればいいなと思う。
日本で暮らす外国人の数は年々増加している。
日本人にも良い人や悪い人、真面目な人や調子の良い人など、いろんな人がいるように、外国人にもいろんな人がいる。
外国人ではなく、一人の人間として、「○○さん」として知り合うことが大切だ。
人として受け入れる、理解しようとする姿勢が必要だと思う。
投稿元:
レビューを見る
移民問題が単純な話ではないことは理解している。制度を悪用する人がいることも分かる。でも、ここでしか暮らせない人はいる、と思うと、もう少し、人権に配慮した制度に変えられないものかと、もどかしい気持ちになる。
今回もまた、日本人って、なに?と考えてしまった。
投稿元:
レビューを見る
6歳でイランから出稼ぎに家族とついてきた女の子の話。
移民という存在は知っていたが、ニュースの中だけで、身近にいたことがなかったので、移民の生活や生きづらさが分かりやすい文章で書かれていて親しみが持てた。
この女性は能力も高く、努力もして、周りの人も親切で…といいことが重なっていたので、日本に溶け込めて日本がふるさとと言ってくれているが、一歩間違えれば学校も行けず引きこもって、勉強も落ちこぼれるし、日本に溶け込めずという移民の人はうじゃうじゃいるよな~と想像できる。
また宗教上の問題で肌を露出できないのでブルマは履けないとか給食の豚肉を食べられないということに対しても、多様な文化があることを理解して、「本人が主張すればいいじゃん」というだけでなく、先回りして認める国でありたいな。
私も日本人であるのと同時にいろいろな個性がある(やせていたり、運動が苦手だったり…)そういうものが混ざって私という人間が形成されているように移民の人も生まれた国が違うという個性として扱えばいいんだなと思った。
投稿元:
レビューを見る
趣味で通っている講座でCEFRの複言語・複文化主義について書く課題が出て、在日の外国人ルーツ定住者の実体験を日本語で読むことができるので手に取りました。
筆者の体験は1990年代、2000年代と、少し前の日々なのですが、根本的な状況は変わっていないように思いました。今後、より現在に近い体験を言語化、日本語化して出版したものにも出会いたいし、そもそも、不十分で不平等な環境が変わっていく助けもできると良いのですが。
投稿元:
レビューを見る
ナディさん、ありがとう。
このような声を聞かせてくれて。
読み終わってそんな気持ちでした。
生活の中での実感があふれていて、リアルな気持ちに触れた思いです。
多様性を認めよう、多様化に対応しようと言われる昨今ですが、当事者の現状、何より内面を知ることが必要と改めて思いました。
頭が柔らかい児童期に読んでほしい1冊です。
投稿元:
レビューを見る
母が、読んでみてとおすすめしてくれた本。
二年ぐらい前で記憶は薄れているけれど、とても大きな発見をした。私は国籍も日本、普通に日本に住まうことが出来る。でも、外国の人はビザというものがあって、それが切れれば強制送還されてしまうのだと知った。ナディさんは運良く日本に残ることができた一人。でも現実は、ほとんどの人が、故郷に戻されている。戻りたくないと思っている人は日本にそのまま住めるようにして欲しいと思った。それが叶わないのなら私が叶えたい。胸が痛くなる現実を突きつけられた本だった。
投稿元:
レビューを見る
完読いたしました
上っ面ではなかなかわからない、「ビザのない外国人」とはでした。
日本人で生まれ、育ったことに本当に感謝しなければいけません。
子どもは世界中のどこで生まれても守られる存在であるべきだ
ほんとうにそう思います。これからの日本はどうなっていくのでしょうか?
わが身はいいけれど、これからの世代の方たちのことを思うばかりです。
また、これからの少子高齢化の日本にて、海外の方との付き合い方をしっかり考えないといけないなと思わされるし、
6歳までとはいえ、イランで生まれた方がここまで日本のことをかいていることに本当に学ばされます。
投稿元:
レビューを見る
6歳でイランから日本にやってきたナディさん。
言葉の壁、文化の違い、そして法の壁にぶちあたりながらも、大学まで進学、現在は都内の企業で働く、それまでの半生を自らの言葉で綴った書。
ナディさん、文章がうまい、読みやすい。
日本で暮らす外国人の思いや、この国の問題点がよくわかる。一人でも多くの人に読んで欲しいと思う。
あらためて、この国の入管行政はなんと人を不幸にするものなのか、と思う。変えていきましょう。