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今回はSFと言うよりも歴史小説という感じでした。
関羽をモデルにした華人のアメリカ入植の物語は面白かった。
新作が楽しみですね。
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翻訳によるところがあるのかもしれないが
物語全体にしっとりした質感・湿感がある気がする。
それはけっしてジメジメしたものではなく
現実の世界、原色にベールをかけて、
おとぎ話的に装飾し、こころを落ち着かせる潤い。
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今読むケン・リュウの本は少女時代に読んだスタージョンだったり、光瀬龍だったりを思い起こさせる。
単純に楽しいってのじゃない、楽しさっ(語彙不足
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相も変わらぬ珠玉の短編集。
個人的には「訴訟師と猿の王」がお気に入り。
日本視点の面白さでは「烏蘇里羆(ウスリーヒグマ)」が良い感じですね。
最後の「万味調和――軍神関羽のアメリカでの物語」の融和感もとても好き。
良き短編集です。
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彼の作品の不思議なところは「中国系アメリカ人」という日本とは全くかすりもしないバックグラウンドの持ち主にも関わらず、日本人の自分の心にめちゃくちゃ響いてくるところだと思う。
中国と日本には、西洋文化が入ってきたことにより元々持っていた文化が大きく変容してしまったという共通点があるけど、ケン・リュウはそこを考えさせるのが上手すぎる。
作者の集大成的な短編集。if設定の科学発展を遂げた100年前の世界が舞台になっていたり、個人的にケン・リュウもので一番好きな古き中国の物語が多めに収録されているのがポイント高い。
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短編のとれもが珠玉。特に表題作『草を結びて…』と『訴訟師と猿の王』。登場人物が自分の人生を自分で生きる為に、知恵と勇気と自分が決めた正しさに従って闘う姿に言葉を失う。中国にはいつ平和な時があったのだろうかと思う。学ぶ学ばずを問わず孔子の心を理解する者のほとんどは迫害を受け、論語はもちろん多くの学問を修めたであろう者が奸計を巡らせ民を搾取した。
本書を読み、また新しい中華文化や習慣、歴史の知識を得た。本書の中にある美しい文化が、永く残っていけば良いと思う。
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優しい物語を書くひとだ。
ケン・リュウの傑作短篇集第4弾は星雲賞受賞の「シミュラクラ」など計7篇収録。第1弾から読んできたものとしては、著者の優しさを再確認する一冊だったように思います。「紙の動物園」や「母の記憶に」といった家族愛をテーマとした作品群のひとつとして本書の「シミュラクラ」があげられるかと思いますが、一度離れてしまった心を再び結びつける巧みさには感心せざるを得ません。これ、たった数十ページで描いているんですよね。物語の起伏にうまくSF的ガジェットを活用しているのでしょうが、最後の一節だけでゴールを決めてしまう「シミュラクラ」はまさにセンスの固まりかと。
中国史(特に清成立の過渡期)を題材にした表題作やその姉妹作「訴訟師と猿の王」のほか、「万味調和――軍神関羽のアメリカでの物語」は中国系アメリカ人らしい作品。最近中国史に興味を抱きつつあることもあり、とても興味深く読み進めることができました。
これら3篇はSFとは言い難い作品ですが、「烏蘇里羆」の味のある近未来世界観(日本版スチームパンクというのでしょうか)であったり、飛行船が主流となったもうひとつの世界を描く「『輸送年報』より『長距離貨物輸送飛行船』」などはSFが与えてくれるワクワク感を味わえてとてもよかったです。どちらの世界観ももっと堪能してみたいなぁ。
ということで、いつもながら期待を裏切らないケン・リュウでした。次作も期待!
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「「輸送年報」より「長距離貨物輸送飛行船」」:気候変動対策としてジェット機よりも燃料効率がはるかにいいツェッペリン型飛行船が長距離輸送の要となった、並行宇宙の世界観。
「シミュラクラ」:ケン・リュウはこういう何気ない言葉の端に鋭利な刃物をひそませるのがうまい。ハッとする親は多いのではないか。
アンナ・ラリモア「ひょっとしたら、わが子を、絶対的な依存と自我の独立とのあいだのごく短い時期に留めていたいというのは、すべての親が夢見るものかもしれない。その時期、親は完璧で無謬の存在として見られている。それは愛情に偽装した支配と征服の夢だ。リア王が娘のコーディリアに抱いていた夢だ」
「訴訟師と猿の王」:「草を結びて環を銜えん」に引き続いて、満州族による揚州大虐殺の書き換えられた歴史がテーマ。
猿の王「おまえは今、記憶と言ったな。おまえが読んだあの本を書いた王秀楚(ワン・シュウチュウ)をどう思う?」
田皓里(ティエン・ハオリ)「わたしと同じ、普通の人間だ。賄賂を贈り、危険から身を隠して生き延びた」
猿「それでもあいつは見たものを記録した。あの10日間に死んだ男や女が百年後に思い出してもらえるように。あの本を書くのは勇敢な行いだった――考えてもみろ、いまだにあれを読んだだけで、その人間は満州族に追いかけられるんだ。王秀楚もかた英雄だったとおれは思うね」
猿「英雄なんてものはいないんだよ、田皓里。史可法(シ・クァファ)は勇敢で同時に臆病だった。有能で同時に愚かだった。王秀楚は侵略者に媚びて生き延びたが、同時に偉大な精神の持ち主だった。おれはいつも我儘で見栄っ張りだが、ときには我ながら驚くようなことをやってのける。おれたちはみんな、普通じゃない選択肢を突きつけられた普通の人間だ――いや、おれは普通の妖怪だけどな。そんなとき、英雄的な理想が、おれたちを化身にしたがることがあるのさ」
田「わたしはただの怯えた年よりだよ、猿公。どうしたらいいかわからない」
猿「わかってるとも。あとは受け入れるだけだ」
田「どうしてわたしなんだ。わたしがいやだと言ったら?」
猿「揚州の人たちは百年前に殺された、田皓里、それはどうしたって変えられない。だけど過去は記憶の形で生き続けるし、権力を握った連中はいつだって、過去を消して黙らせたい、幽霊を埋葬したいと思うようになる。おまえはもう過去について学んだんだから、何も知らない傍観者ではいられない。おまえが行動しなければ、皇帝と血滴子によるこの新たな暴力、この抹消行為に加担することになる。王秀楚と同じように、おまえも今や目撃者なんだ。あいつと同じように、どうするか選ばなくちゃいけない。死ぬときに自分の選択を後悔するかどうか、今判断しなくちゃいけない」
猿の王の励ましを受けられた田皓里はしあわせ者だ。正しい選択ができるように、わたしにも勇気を!
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表題作と、その姉妹編『訴訟師と猿の王』が読んでいて辛いし痛い、でも人の為す悪行をこんなにもまざまざと見せつけられて、何も感じずに通り過ぎることなど出来ない。
歴史と創作が巧みに結びついて映像的な印象を生み出し、「○○年、揚州大虐殺」という名称に集約されるこの事件を――残虐な行為を――私の脳裏に刻みつけた。
さえずる鳥たち、翡翠の指輪、羊の群れ、処刑の短剣・・・。
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新⭐︎ハヤカワSFシリーズ「母の記憶に」からの再読。どの話も読むたびに胸に沁み入るような感覚だが、特に初読では気づかなかった「長距離貨物輸送飛行船」の、何も起きなくともそこにある温かさが良かった。表題作「草を結びて環を銜えん」も素晴らしい。ケン・リュウの短編はたとえ凄惨な出来事や悲しい結末を迎えていても、先に続く光を示してくれるのが好きです。
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表題作が、辻村七子先生のおすすめということで、はじめて手に取りました。ただ、ただ、凄い……!一作目の烏蘇里羆を読了した時、とにかく凄いという感想しか浮かばず、ずっと「すげぇな〜すげぇよ〜」と、変なテンションになりました。読み慣れてない分、言い回しや表現が難しい箇所も多かったので、一作品ごとゆっくり読みすすめましたが、どの作品も強烈に印象的でした。表題作の「草を結びて環を銜えん」、「『輸送年報』より『長距離貨物輸送飛行船』」が特に気に入りました。
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結草銜環
背が微かに緑がかった、
翡翠の指輪を銜えた鶸。
読み終わった後に表紙の絵を見ると、
とてもやるせない気持ちになります…
魏顆結草
楊雀銜環
いずれも恩返しの故事成語ですが、揚州十日記(まさかの)に置くことによって報いというものを徹底的に否定する。雀に、どんなに冷血な化け物と思われようとそれでも、緑鶸の毅然たる姿勢の美しさ。
———
軽蔑されたひとりの女は、三十一名を救いました。
運命に逆らい、なしえることをおこなったのです。
———
真実はつねに、歌と物語のなかに生きてきた。
自由に、自由に、自由に。
———
人の世の理のようなものが透けて見える気がする。
日本オリジナル第二作品集その2。
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ケン・リュウ「草を結びて環を銜えん」読了。SF短篇集。同タイトルの緑鶸と雀のお話は中国の民族紛争に関連してとても切なく美しく思った。最後のマヒワの囀りがより一層感慨深かった。
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ケン・リュウ短編集4冊目。ファンタジーと呼ぶにはヘビーな作品。史実がベースになってる話もあって、カテゴライズしがたい作品集に思える。
「烏蘇里羆」 苫前町三毛別の事件が元ネタなのだろうか。妖怪(動物)が機械の体を手に入れるのは「良い狩りを」と同じ。
「草を結びて環を銜えん」「訴訟師と猿の王」 読んでる間、頭の中でロックがずっと鳴ってる感じ。昔からマルコムXとか感情移入しちゃうけど、平和な運命にあることを有り難く思ってた方がいいのだろうな…
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目次
・烏蘇里羆(ウスリーひぐま)
・『輸送年報』より「長距離貨物輸送飛行船」
・存在(プレゼンス)
・シミュラクラ
・草を結びて環を銜える
・訴訟師と猿の王
・万味調和――軍神関羽のアメリカでの物語
単行本『母の記憶に』を2分冊にしたときに、中国色濃い目になった方の一冊。
だから読みながら、今読んでるのSFだっけ?と、何度か立ち止まることになった。
『烏蘇里羆』というのは、エゾヒグマ、つまり北海道にいるヒグマのこと。
エゾヒグマは厳密に言うとヒグマの亜種で、ホッキョクグマに割と近い。(混血種が誕生するくらいには)
で、現在は北海道にしか生息していないエゾヒグマが、中国大陸で人喰い熊として繁殖しているのはなぜかという、10年前に書かれた作品なのになぜかタイムリーな、しかし機械の馬が熊との戦闘用に作られている世界の話。
これは、東アジアの文化というか死生観、自然観が色濃くて、日本人作家もこのくらい書いてくれないかなあと思いながら読んだ。
作者は三毛別羆事件を知っていたのだろうか。
『『輸送年報』より「長距離貨物輸送飛行船」』は好きなタイプの作品。
古き良きアメリカのSFって感じがするのはなんでだろう、と思ったけれど、そこはかとなく初期のスペース・ファンタジーの香りがする。
カーボンニュートラルの考えから、長距離貨物の輸送軸が飛行船となった世界の話。
飛行機にはかなわないが、陸路と海路を乗り継ぐよりは飛行船の方が最短距離を運行できるので、エネルギー負荷が低いのに早い、というのがその理由。
先日読んだドイツのミステリで、廃棄物発電所というのを知ったが、二酸化炭素を発しないエネルギーは探せばまだまだあるんじゃないだろうか。
なぜ日本は原発一択なのだろう。
そして表題作。
これが白眉と思います。
SFかどうかはさておいて。
満州族が明を侵略し、抵抗するなら揚州の住民を皆殺しにする、との命令が発せられた。
「明が負けるわけはない!」と住民を鼓舞する行政の長、情報を受け取りさっさと退却する軍人、右往左往する住民たちは次々と殺されていく同胞を尻目に、自らの命を守るために、または自らの尊厳を守るために行動する。
雀という少女の口から語られる緑鶸(みどりのまひわ)という遊女は、意地悪この上なく、人間以外の生き物にしか優しい目を向けない。
が、読者にはわかる。
緑鶸がどれほど命を張って雀を庇ってきたのか。
美貌のために纏足され、自分の足で歩くこともままならない遊女よりも、貧しくても自分の足で立つことのできる方が、よほど自由で幸せであるということを。
その100年後、満州族が建国した清国で、明の時代と変わることのない苦しい生活を送る庶民を、その達者な弁舌で時折り救うことのある田(テイエン)。
彼のもとに、100年前の揚州大虐殺を目の当たりにした人物の日記が現れ、禁書となっているその本を所持するどころか読むだけで死刑となる窮地を、切り抜けることができるか、というのがその次の『訴訟師と猿の王』
事実としては、何部かの写本が日本から発見されたんですって。
”長年にわたる事実の隠蔽――それは現在まである程度続いている――のせいで、揚州でなくなった犠牲者の本当の数は決してわからないかもしれない。”
なんだか南京大虐殺を彷彿させる歴史上の出来事。
中華人民共和国になる以前の中国人のイメージ、辮髪とか長い服の袖に両手を差し入れてお辞儀をするとかは、この清国(満州族)の風習。(サイボーグ006ね)
漢民族のものではないというのを知ったのは、大人になってからだった。